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追放鑑定士は、真の力で才能の原石だけを拾って最強パーティーを作る  作者: しぃ
第1章 追放鑑定士と新たな仲間たち
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第4話 少女剣士と初ダンジョン

 親父の武具屋から離れ、俺とリリアは冒険者ギルドまでやってきた。


「はぁ……」


 ギルドの建物を見ると、自然と溜め息が漏れ出た。


 ガルドたちに遭遇しないといいが……。

 いや、下層に向かうアイツらは、ダンジョンに入る前の準備期間が長いはずだし、今日は居ないだろう。


 意を決して、ギルドの扉を開いて中に入る。

 ロビーには人がそれなりに居たが、ぱっと見その中にガルドたちが居るようには見えなかった。


「ふぅ……」


 緊張の糸が解けた気がする。


 ロビーを移動し、とあるカウンターの前に行く。

 カウンターはいくつかあるが、俺が普段から利用するカウンターは一つだ。

 ちなみに、ギルドのカウンターは女性職員が担当する所に行列ができたりする……。


 今はカウンターに並んでいる人がそんなに居ないので、目的のカウンターには誰も並んでいなかった。


「おはようございます……って、レイ?」

「よっ、アリア」


 茶髪の若い女性職員。

 俺の幼馴染であるアリアだ。

 俺が冒険者になったのと同時期にギルド職員に就職したため、俺がカウンターを利用する時はいつもお世話になっている。


「……レイ、その子、どうしたの?」

「買った。このリリアの冒険者登録をしてほしい」

「か、買った……? 奴隷って事?」

「そういう事だ」


 親父と同じく、アリアも俺が奴隷を購入した事に驚いているらしい。


 アリアは驚きつつも、手続きを進めてくれた。

 手続きといっても、簡素なものだ。名前やジョブ――俺の場合は鑑定士、リリアの場合は剣士――、種族、年齢を書けばそれでいい。


「14歳ねぇ……まだ若いじゃん……」

「いや、俺とお前が働き始めたのも同じ歳だろ」

「そうだけどさ……」


 自分は14歳でギルド職員になったくせに、人が14歳で冒険者になるのは気に食わないらしい。


 とはいえ、ギルド職員である以上、冒険者登録をしたい者に登録作業をするのは義務なので、なんだかんだ言いつつ、冒険者カードを発行してくれた。

 そして、発行したカードを、リリアに優しく渡す。


「はい、これどうぞ。説明は、レイが居るから要らないよね?」

「ああ。発行代金、銀貨1枚だったか?」

「うん。まいど~」


 カードの発行代を支払い、アリアと別れた。


 さて……冒険者のランクは、最低がF。

 Fランクの人間は、ダンジョンの階層は主に上層――上層の中でも特に上の、1層~3層辺りが適正とされている。

 一応俺も居るが、俺は戦闘力としてはF~Eランク程度なので、大してアテにはならない。無理せず、最初の内は1層や2層で戦うのがいいだろう。


「よし、行くか」


 俺はリリアを連れて、ギルド内部にあるダンジョン入り口へと向かった。







 ダンジョン入り口で職員にカードを提示し、扉をくぐれば、もうそこはダンジョン。命のやり取りをする場だ。


「リリア、申し訳ないが、俺は戦闘力はあまりない……リリアメインで戦ってもらう事になる」

「……分かった」

「その代わり、補助は最大限する。魔物の種類は大体覚えているし、上層の魔物相手ならカバーもできる」


 俺はリリアと違って、これから強くなる事も無い。

 なので、強くなる可能性のあるリリアを前面に出し、俺はあくまで背後からのサポートをする。


「取り敢えず、この辺りは人が多いから、人が少ない所に行こうか」


 人が多い方が何かあった時に安全ではあるが、とはいえ、必ずしも冒険者が助けてくれるとも限らない。

 知り合いの冒険者であればいいが、そうでなければ、魔物を引き連れてきたり、あるいは宝箱のために騙したり……という事も有り得る。

 ギルドの規定的には違法な行為なのだが、ダンジョンの中には監視の目が無い。相手を生き残らせなければなんとでもなる、と考えてくる輩も居るのだ。


 なので、基本的には人が少ない場所に移動した方が良い。


 そう判断した俺は、ひとまず、2層への階段から離れた方向に向かって進んだ。




 三分ほど歩いた時、俺の耳に魔物の足音が届いた。


「リリア、敵だ。剣を抜け」


 最小限の言葉と音量で、リリアに指示を出す。それと同時に、俺自身も剣を抜く。

 これまでは俺が戦う事は無かったが、1層の敵ならば俺でも戦えるので、問題は無い。


 俺たちが剣を抜いてから数秒後、曲がり角から、巨大な蟻が現れた。まあ巨大と言っても、普通の蟻よりデカいというだけで、人よりは少しだけ小さい。

 奴の名はマイナーアント。小型の働き蟻だ。

 ちなみに、1層には全部で三種類の魔物が出現するのだが、それらは全て蟻だったりする。


 そんな事は置いておいて、今は目の前のマイナーアントだ。

 幸い単独行動している個体なので、リリアの良い練習台になってくれるだろう。


「リリア、アイツはマイナーアント。特別な攻撃とかはしてこないが、単純な爪や噛み付きでの攻撃も充分危険だから、注意しろ」

「……分かった」

「俺がサポートするから、自由に動いてみてくれ」


 マイナーアントは俺が一対一でも楽勝な相手なので、リリアに何かあっても問題無い相手だ。


 俺の指示を聞いたリリアは、静止して触手を動かすのみのマイナーアントに向かい、斬りかかった。

 滑らかな動作で、二つある触手の両方を斬り落とした。


 やっぱり、剣を振るのに慣れている。特段上手いわけでもないが、しっかり練習した者の剣筋だ。


「キュエエエエエ!!!」


 マイナーアントは怒りと痛みの雄叫びを上げ、ガチガチと歯を鳴らしながら、リリアに噛み付こうとした。

 しかしリリアは、機敏な動作でサイドステップをして、マイナーアントの噛み付き攻撃を回避した。

 そしてそのまま、マイナーアントの横顔に剣を突き刺す。


 マイナーアントは顔に剣を刺されたまま、真横に居るリリアではなく、俺の方に突撃してきた。


 ――なんでこっちに来るんだよっ!


 心の中で叫びながら、横に大きく跳んで突撃を避ける。

 AGIだけならばDの俺は、回避にはそこそこの自信がある。


 跳躍中、剣を握ったまま引きずられているリリアが見えた。


「リリアー! 大丈夫か!?」

「大丈夫」


 俺の叫びに小さく返事をすると、リリアは剣を一気に引き抜き、マイナーアントの頭上に跳躍した。

 そしてそのまま、マイナーアントの頭に向かって剣を突き出しながら落下する。


「キュエエエエエ!!!」


 頭を突き刺された痛みで、マイナーアントは悲鳴を上げた。

 リリアはそれを断末魔だと判断したのか、剣を引き抜いて、ゆったりとした動作でマイナーアントの頭上から降りた。


 しかし――マイナーアント含む昆虫型の魔物は、頭を落としたくらいじゃ死んでくれない。


「リリア!」


 マイナーアントは、無防備に背中を晒すリリアを、爪で引き裂こうとした。

 俺は慌ててその間に飛び込み、剣で爪を受け止める。親父製の剣は、マイナーアントの爪を正面から受け止めてもビクともしなかった。


 まだマイナーアントが生きている事に気付いたリリアは、急いで振り向いて、俺の剣と拮抗状態にある爪を根本から斬り落とした。

 俺の剣を止める物が無くなり、剣はそのままマイナーアントの胴体を斬っていく。


 俺は剣の角度を僅かにズラし、体内のある部分を目指した。確か、マイナーアントの場合はこの辺りに――。


 パリン。


 ガラスが割れるような音と共に、マイナーアントが急激に生命活動を停止した。


「ふぅ……もう終わりだ。お疲れ様」

「……ごめんなさい」


 リリアに労いの言葉を掛けたのだが、リリアは俯いて俺に謝ってきた。


「どうした?」

「……だって、油断して、ご主人様を危険に……」


 リリアがこれだけ喋ってくれたのは、初めてだろうか。

 その事を少しだけ嬉しく思いつつ、未だ俯いたままのリリアに言葉を掛ける。


「昆虫系の魔物があれくらいじゃ死なない、って伝え忘れた俺のミスだよ。リリアが気に病む事は無い」

「でも……」

「それに、俺――いや、俺たちは冒険者だ。多少の危険は付き物だし、それに、互いが互いのカバーをするのが当然だ。リリアだけを危険に晒そうなんてつもりはないよ」

「…………」


 リリアはそれ以上何も言う事は無かった。


 俺はそんなリリアを横目でチラリと見てから、マイナーアントの死骸を見る。


 う~ん……マイナーアントの解体なんてしても、素材はいくらでもギルドに売られているだろうしな……。


 マイナーアントの素材は、大した値段にならない。

 一番浅い層に居る魔物の素材なんて、駆け出し冒険者が売りまくっているからだ。

 少しの金にはなるだろうが、それではあまり稼げないし、新人冒険者たちの稼ぎを奪うのは申し訳ない。

 それに、一番大事な部分はダメになっているしな。


「ご主人様」


 俺がマイナーアントの死骸を見ながら考えていると、リリアが俺の服の裾をちょんちょん、と摘まんだ。


「なんだ?」

「これ、どうやってトドメを刺したの? 頭を刺しても、死ななかったのに……」


 リリアは、今回の反省を次に活かしたいようだ。

 そういうところは、好感が持てていい。


 リリアに説明するために、俺は先程まで自身の剣が刺し込まれていた場所に手を突っ込む。

 そして、体内にあった紫色の結晶体の破片を取り出した。


「魔石って、聞いた事ある?」

「……ある」

「それが、これ。一部例外があるけど、魔物の体内にはこの魔石があって、これを潰せば必ず死ぬ。人間でいうところの、心臓みたいなものかな? まあ、魔物の心臓は別であるけど……。昆虫系の魔物は頭を落としても死なないけど、こっちを割れば絶対に死ぬんだ」

「……なるほど」

「ただ、魔石は換金で一番重要な部位だから、普通は可能な限り潰さないかな。一刻も早く殺さないといけない時だけ、魔石を割るのが定番」

「……分かった」


 そう、これが一番大事な部分なのだ。

 換金の上でも一番高く売れるし、冒険者の中には、素材は売らずに魔石だけ回収するという者も居る。


 それくらい、魔石は貴重品だ。


 俺は魔石の破片を床に放ると、リリアに言った。


「今ので戦い方は分かっただろうし、次に行こうか」

「……ん」


 段々とリリアが反応を返してくれるようになっている事を喜びつつ、俺はマイナーアントの死体から離れ、更なる敵を求めてダンジョンを歩いた。

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