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追放鑑定士は、真の力で才能の原石だけを拾って最強パーティーを作る  作者: しぃ
第1章 追放鑑定士と新たな仲間たち
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第3話 少女剣士と装備購入

「……ん」


 自分のものではない体温を感じた気がして、目が覚める。

 ぼんやりとしていた意識が覚醒していくと同時に、ある事に気付く。


 ――リリアが凄い抱き着いてきてる!?


 昨日のあの感じだったら当分懐いてくれないかな、と思っていたのに、なんで抱き着かれているんだ!?

 いや、寝ぼけているだけか……そうだな。


 ともかく、どうしようか……リリアの腕があって、起きるのも体の向きを変えるのもできない。いや、やろうと思えばできるのだが、そうするとせっかくぐっすり寝ているリリアを起こしてしまう。

 今までは奴隷市場の檻の中での寝起きだったのだろうから、柔らかいベッドで寝れる内は寝かせてあげたい。


 そう思った俺は、諦めてリリアが起きるまでこのままにしておく事にした。







 およそ20分後。

 ようやく、リリアが目覚めてくれた。


「…………」


 リリアは何一つ言う事無く、無言で俺の体から腕を離した。


 うーん……何を考えているのか分からないな。まあ、いいか。


 リリアが離れた事を確認すると、俺はベッドから起き上がる。

 リリアは何故かまだ寝転がったままだ。もう少し寝たいのだろうか?


「眠いんだったら、もう少し寝てもいいぞ?」

「…………」


 リリアはふるふると首を振ると、体を起こした。

 寝不足というわけではなかったらしい。


 荷物を回収し、リリアを連れて部屋を出る。

 チェックアウトを済ませ、宿屋を後にした。


「残り金額が……あと銀貨16枚か。リリアの武器と防具を買うのには、事足りるかな」


 小袋の中を覗き込みながら、独り言を呟く。

 リリアの購入代金が銀貨2枚、公衆浴場の利用料が銀貨1枚、そして宿屋の宿泊代が銀貨1枚で、現在16枚というわけだ。


 リリアの才能ならば冒険者としてやっていくに充分なはずなので、今日はリリアに装備を買い与えて、ついでに冒険者カードを発行しておきたい。冒険者カードが無ければ、冒険者として活動できないからな。


「……戦うの?」


 俺が小袋を仕舞っていると、不意にリリアが訊いてきた。

 何気に、リリアから何か言ってくるのは、これが初めてかもしれない。


「ああ、俺は冒険者だからな。リリアも剣の才能があるし、冒険者になってもらいたい」

「……才能? 私に?」

「そうだ。俺が保証する」


 才能がある、と聞いて、何故かリリアは訝し気な顔をした。

 『剣術』スキルは生まれつき持つものではないので、リリアはどこかで剣を振るった覚えがあるはずなんだが……。


「…………」


 それ以降、リリアが何か言う事は無かった。







 しばらく歩き、とある店の前に着いた。

 ここは、俺にとっては馴染み深い場所だ。


 店の扉を開き、中に入る。


「親父~、来たぞ~」


 カランカラン、と鳴るベルの音と同時に、俺は大声で親父を呼ぶ。


「ベルで聞こえてるから、大声は出さんでいいといつも言ってるだろうが……」


 ぼやきながら出てきた、髭を生やしたガタイの良い壮年の男。

 これが、親父だ。


 親父とは言っているが、実の親ではない。かといって、単なるそういう呼び方というわけでもない。

 親父は、俺の親代わりの人だ。

 俺は捨て子だったらしく、道端で捨てられている俺を見つけた親父が引き取ってくれたのだ。


 そして親父は、俺の育ての親であるとともに、武具屋を営む者でもある。


「んで、今日は何の用だ? 仕送りならもう要らんぞ」


 俺は親父に恩返しするために、定期的に稼いだ金を渡しに来ている。親父が言っているのは、それの事だろう。


「あ~……すまん、仕送りはしばらくできそうにない」

「だから、要らんって言ってるだろうが。……ちなみに、なんでできないんだ?」

「ガルドたちのとこから外れたんだ。そんで、俺は今独り身ってわけだ」

「……独り身って割には、俺はお前の後ろに女の子が居るように見えるんだが?」


 親父がカウンターから身を乗り出すようにして、リリアの方を見る。

 俺はリリアを前に出し、親父に言う。


「今日はその事で来たんだ。この子――リリアの剣と防具を見繕ってほしくて」

「随分と小さいが……戦えるのか?」

「ああ。ちゃんと鑑定した後だ」


 俺がそう言うと納得したようで、親父はカウンターの下から紙を取り出した。


「その子の鑑定結果を書いてくれ」

「了解」


 親父は、鑑定結果を見て、それぞれに合った武具を売るのだ。

 なので、まだ俺が冒険者になる前は、親父を手伝って客の鑑定をしたりもしていた。


 そんな事を思い出しつつ、記憶の中にあるリリアの鑑定結果を紙に記していく。鑑定士は記憶力が命なので、一日経ったくらいじゃ忘れないのだ。


 サラサラと結果を書いていき、書き終わった物を親父に見せる。


「ふむ……STRとAGI、それにDEXが高いわけか。スキルは『剣術』だけだが……本当に大丈夫なのか?」

「ああ。無理させず、最初の内は上層で戦わせるよ」

「それならまあ……いいか……」


 親父はしばらく紙を見詰めて唸ると、そのままカウンターの奥に消えて行った。


 親父が居なくなったカウンターに体重を掛けて待っていると、リリアが俺の服の裾をちょん、と摘まんだ。


「……ご主人様は、ランク、いくつなの?」


 ランク、とは冒険者ランクの事だろうか。


「Bだよ。一応、前まではAランクのパーティーに所属してたけど」

「…………」


 俺の答えが満足しなかったのかしたのか、リリアは無言になった。

 表情の変化が乏しいから、何を考えているのかが本当に分かりづらい……。


 ちなみに、冒険者のパーティーは、これと言って制限のようなものはない。

 そもそも、パーティーとは冒険者たちが勝手に言っているだけで、ギルドが作ったシステムではないのだ。

 ただ、冒険者たちの暗黙の了解として、ランクの差が二つ以上ある場合は組まない……というものがある。まあ、あくまで暗黙の了解なので、俺とリリアが気にする必要は無い。


 そんな事を考えている内に、奥からいくつかの箱を抱えた親父が出てきた。


「取り敢えず、防具を二種類、剣を三種類持ってきた。合うヤツを使えばいいさ」


 親父はカウンターを回って、俺たちの足元に箱を置きながらそう言った。


 箱を見ていくと、防具は軽金属装備と革装備の二種類があった。

 革装備、と聞くと弱く聞こえるかもしれないが、革装備は動きを阻害しない程度に身を守ってくれる。動きを重視するタイプの剣士には、これが必要不可欠だ。

 対して、軽金属装備を含む金属系の装備は、動きを阻害するが、その分防御力が高い。もっとタンク系の奴らが使う重金属装備ほどではないが、軽金属装備もそれなりに動きの速度が落ちる。


 ちなみに、俺の場合は革装備を着けている。そもそも俺はほとんど戦闘をしないが、いざという時に素早く動ける方が好みなため、革装備を選んでいる。


「取り敢えず、試着するか。リリア、あそこに試着用の仕切りがあるから、あの向こうで試着しておいで」

「…………」


 俺がそう言うと、リリアは無言で箱を抱えた。

 リリアの体格では一つしか持てないので、もう一つは俺が持ってやり、試着用の仕切りまで運ぶ。


「着方は分かるよな?」

「……ん」


 リリアが小さく頷いたのを確認し、仕切りを動かして見えないようにしてやる。


 それを見た親父が、何やら言ってきた。


「お前らの関係が読めないんだが……あれか、恋人か? ついにレイにも春が来たのか?」

「違うわ。……奴隷だよ、奴隷」

「奴隷? お前はそういうのが嫌いな奴だと思ってたが……」

「……気が変わったんだよ」


 奴隷という制度自体は嫌いではないが、人をまるで家畜のように扱うのは、好まない。

 魔物が溢れる世の中で、犯罪を犯した者とはいえ貴重な労働力として使う、という制度自体は、良いものだと思う。しかしだからと言って、犯罪者も人なのだから、あんな檻に入れて売買するのは、どうなのだろうか。


 ……だが、俺もその奴隷を購入した内の一人なのだから、何も言えない。

 せめてリリアは、ちゃんと人らしく扱ってあげたいとは思っている。


 少しして、まず軽金属装備を着けたリリアが出てきた。


「どうだ? 動きにくいとか、良さそうとか、あるか?」

「…………」


 俺がそう訊くと、リリアは無言で首を振った。

 好まない、という事だろうか。


「じゃあ、次のを着るか?」

「……ん」


 またも仕切りが動く。


 着脱に慣れたのか、今度は先程よりも短い時間で試着が済んだ。


「さっきのと今の、どっちがいいとかあるか?」

「……こっち」

「そうか。親父はどう思う?」

「まあ、いいんじゃないか? 使うのは本人だからな。本人が気に入ったヤツを使うのが一番だ」


 リリア自身で決めた事だし、確かにこれでいいか。


 防具は革装備にする事にして、次は剣だ。

 剣の方は、リリアの体格に合った小剣、一般的な女性が使う事を想定された剣、そして刺突が主な目的のレイピア。


「体格に合ったヤツがいいとは思ったんだが、一応その二つもどうかと思ってな」


 用意した親父曰くはこうだ。


 リリアは箱を開け、小剣を手に取った。

 何度か軽く振って、使用感を確かめている。


「…………」


 相変わらず、無表情でどう感じているのかは分からないが。


 続けて、普通の剣とレイピアでも同様の事をした。

 レイピアの方は、振るうのではなく突いていた。


「……これ」


 そしてリリアが選んだのは、最初に振るった小剣だった。やはり、体格に合う物が良いのだろう。


「ま、だよな……。コイツら、片付けてくるわ」


 親父は後頭部を掻きながらそう言うと、全ての箱を抱えてまたも奥に消えていった。


 それと同時に、リリアは小剣を剣帯に差した。なんだか、慣れているように見える。


「剣を扱った事があるのか? 『剣術』スキルも持ってたし……」

「……昔、少し」

「そうか」


 ダンジョンのあるこの街では、珍しい事ではない。

 親が冒険者だったりすれば、幼い頃に武器に触れる機会もあるだろう。実際、俺も親父が武具屋なので、子供の頃から武器に触れていた。


 その後、親父が戻ってきて、俺に向かって言った。


「そういや、お前、最近は装備替えてねえだろ。ステータス、上がってないのか?」

「俺は伸びが悪いからな……」


 俺の装備は普段から親父の店で購入しているので、親父はその辺りが気になるのだろう。

 試しに、久々に自分を鑑定してみるか。


 胸の辺りに手を当てて、深く息を吸う。


 ――鑑定。


────────────────────

名前:レイ

種族:人間

年齢:17

職業:冒険者(鑑定士)


STR:F

VIT:G

AGI:D

INT:E

DEX:G

MND:F


スキル:

・剣術Lv1

────────────────────


 ……あまりにも成長していない。もしかしたら、リリアにすら勝てないかもしれない。


 これがBランク冒険者のステータスかよ……と思いながら、続けて『真実視』を発動させる。


────────────────────

潜在成長上限:D


隠しスキル:

・強制開花(未解放)

・才能増幅(極低確率変異)


固有スキル:

・真実視(解放済)


精神安定度:62%

────────────────────


 ……あれ、隠しスキルが増えている。

 最後に見た時は、よく分からない『強制開花』だけだったが……今は、『才能増幅』が増えている。

 字面だけ見るならば……ステータスの向上、などだろうか? もしくは、他スキルの強化か。


 まあ、使えもしないスキルの力を考えていても意味が無いので、頭の片隅に留めておく程度にして、親父に結果を報告する。


「全然ダメだな。AGIがDに上がってる事ぐらいしか変わってない」

「まあそれでもいいじゃねえか。逃げ足があるのは良い事だぜ?」

「俺の冒険者ランクがBじゃなかったらな……」


 そうぼやくと、親父はガハハと笑った。


 笑い事じゃないんだが……と思いながら、装備の代金を訊く。


「リリア用のこの二つ、いくらだ?」

「一応、銀貨7枚だが……別に、後払いでもいいぞ? しばらく、下層には潜れないんだろ?」

「まあ、そうだけど……いや、今払うよ」


 銀貨7枚ならば、まあ払える範囲だ。有り金は銀貨9枚になるが、まあ一週間宿に泊まれれば充分だろう。それに、最悪の場合は親父の家に居候する、という選択肢もある。

 ……いや、もう一つ、居候先のアテはあったか。


 頭を振って思考を中断し、小袋から銀貨7枚を取り出す。


「まいど。また来いよ」

「ま、ボチボチ来るさ」

「なんだ、ボチボチって……」


 そんな会話をして親父と別れ、俺たちは店を出る。


 さて、次は冒険者ギルドに向かおう。

3/16 レイの真実視の鑑定結果について、固有スキルの記載が無かったため追記


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