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追放鑑定士は、真の力で才能の原石だけを拾って最強パーティーを作る  作者: しぃ
第1章 追放鑑定士と新たな仲間たち
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第1話 追放鑑定士と奴隷市場

「はぁ……」


 酒場を出た俺は、溜め息を吐きながら外を歩いていた。


 俺……なんで追放されたんだろうな。


 自嘲気味な思考で、その理由を考える。


 俺は、ガルドのパーティーがまだEランクだった頃から所属していたメンバーだった。

 俺には、固有スキルというものがあった。それが、『真実視』。


 固有スキルは、世界で唯一のスキルだ。しかし、そんな珍しいものを持っている者はほとんど居ない。

 Aランクの冒険者でも、持っている奴は一握りだ。Sランクや最高ランクであるSSランクならば、それなりに所持している奴も居るだろうが、Aランクではそうそう居ない。


 だから俺は、固有スキルの持ち主として、重宝されてもおかしくなかった。

 しかし、能力の特異性から、俺は自分のスキルをただの『鑑定』だと言った。できる内容は『鑑定』に近いし、持っているスキルは他の鑑定士に『鑑定』されない限りはバレないので、嘘を吐いた事をバレる事もなかった。それに、固有スキルはただの『鑑定』では見透かせない。


 最初の内は、俺もパーティーメンバーとしてそれなりに活躍できていた。

 俺が役立たずになり始めたのは、パーティーがCランクに上がった頃。


 鑑定士に求められる仕事は、現れた敵の力を計る事と、手に入れた装備品などの能力を見る事。

 普通の鑑定士には、それができる。だが、俺にはそれができなかった。


 いや、できないわけではない。

 正確に言えば、難しかった。


 普通の『鑑定』スキルは、視界に入ったものが対象だ。少し離れた敵の情報も、自由に読み取る事ができる。

 しかし俺の『真実視』は、対象に触れる必要があった。それも、一瞬だけではダメで、数秒触れる必要があった。

 先程のように何もせずとも勝手に発動する事も何度かはあったが、それは稀だった。あくまで、俺が能動的に発動させる必要がある。


 自分たちを襲おうとしている敵に、数秒触れるなんて事ができるはずがない。

 俺は鑑定士としての仕事を全うできなかった。


 それでも、パーティーの古株だった事もあって、俺はなんだかんだパーティーに残ったままだった。

 装備品なんかの鑑定は『真実視』でもできるし、俺の伝えた情報が役に立った事もあった。


 だが、パーティーが成長してきて、ダンジョンの深くに入るようになってから、俺はだんだんガルドに「腰抜け」と罵られる事が増えた。


 何故か?


 『真実視』によって、危険な未来が視える事が増えてきたからだ。

 ダンジョンの奥深くに行けば行くほど、危険度は増す。『真実視』は、俺にそれを如実に伝えてきた。


 しかし、『真実視』で視える未来分岐は、行動によって変わる。

 俺の視た未来がそのまま訪れる事もあったが、そうでない事もあった。

 なので段々俺は、ガルドたちにホラ吹き扱いを受けるようになった。


 俺はただ、危険を冒したくなかっただけなのに。みんなに生きていて欲しかっただけなのに。


 そしてそれらが積もり重なって、今に至るわけだ……。


「はぁ……」


 俺は再び溜め息を吐いた。


 どうせ『真実視』の事を伝えても、証明手段が無い以上、どうしようもなかった。

 多分、こうなる運命だったんだろう。


 これからどうするか……鑑定士として新しいパーティーに拾ってもらうか……いっその事、冒険者を辞めるか。

 冒険者なんて辞めて、農家にでもなってやろうか……。


 どんどん思考がネガティブになっていく中、ふと、俺の耳に何やら声が届いた。


「奴隷市場はここだ~。労働用でも戦闘用でも下の処理用でも、いくらでも居るぞ~!」

「お、マジか! 行こうぜ!」

「ハッ、お前、絶対最後の奴が欲しいだけだろ?」

「は、はぁ? ち、ちげぇし?」


 奴隷市場の宣伝をする小太りの男と、その市場に入って行く二人組の男。


 俺はそれを見て、ふと手元の小袋の中身を確認した。ガルドから、最後の報酬として渡されたものだ。

 中には、銀貨が20枚。一日の宿代が食事を含めて大体銀貨1、2枚なので、10~20日分の生活費だ。

 Aランクの稼ぎとしては少ない気がするが……無能鑑定士に払う金など、これで充分という事だろうか。


「……ハッ」


 自嘲の笑いが零れた。


 どうせなら、この金で奴隷でも買ってやろうか。

 『真実視』を使えば、質の良い労働用の奴隷でも見つかるかもしれない。


 ふとそう思った俺は、小太りの男が示す奴隷市場の入り口に向かって歩き出した。




 奴隷市場は、それなりに大きな建物だった。

 目玉の奴隷が目立つように立ち並んでいる区画と、それ以外の奴隷が檻に入れられた区画、そして全く売れない奴隷が檻に入れられた区画の、三つに区分されるらしい。


 人はもっぱら最初の区画に集まるようで、そちらは混み合っていた。

 チラッと覗いた感じ、どれもこれも高値だったので、俺には関係無いだろう。


 俺は最初の区画から視線を外すと、二番目の区画に向かった。


 二番目の区画には、それなりに見物客が居た。

 奴隷を買いに来たが、目玉商品を買うほどの財力が無い者が集まるのだろう。


 その内の一人と思しき男が、俺に話しかけてきた。


「兄ちゃんも奴隷を買いに来たのか?」

「ええ、まあ、そんなところです」

「そうかぁ。俺ぁ、ここに来るのが初めてでよ。あれだな……デカい奴隷が多くて、目の保養っつーやつだな!」


 男が言う「デカい」とは、女性奴隷の胸を指しているのだろう。


 奴隷の衣服はところどころ破れていたり薄かったりするので、男のように興奮するのもまあ分かる。


 俺は苦笑いしながら、適当に男の言葉に頷く。


「ふっ……まあ、そうですね」

「おいおい、ノリが悪いな……ま、兄ちゃんも気に入った女奴隷が居たら、買ってみたらどうだ?」

「まあ、考えておきますよ」


 購入する奴隷が決まったのか、男は俺から離れていった。


 気を取り直して、奴隷を見る。


 奴隷とは、一般的に犯罪を犯した者が落ちる身分だ。

 一部、借金などの理由により落ちる者も居るが、大半は犯罪者。

 普通は犯罪者など身近に置きたくないが……奴隷と主人が交わす『契約』により、奴隷は主人に逆らう事ができない。だから、金のある男性なんかは、女性奴隷を購入しに来たりもする。


 まあ、俺の目的はそんな事では無い。単なる暇潰しに来ただけだ。


 檻の周りを歩きながら、どんな奴隷が居るのか観察する。


 先程の男が言っていたように胸のデカい女性奴隷も居れば、胸の小さい女性奴隷も居るし、ガタイの良い男性奴隷も居る。多分、ああいうのが戦闘用として買われるのだろう。

 仮に買うとすれば、俺も戦闘用だろうか。


 他にも、人間ではない、エルフや獣人、魔族などの奴隷も居た。

 獣人や魔族は煙たがられるようで、不人気らしい。檻を見る者もほとんど居なかった。

 戦闘用としては使えるが、それ以外の用途では使いづらいのだろう。


 何人か気になった者に許可を貰って『真実視』を使ったが、良さそうな者は特に居なかった。

 まあ、そういう者は目玉区画に移動されるのだろう。


 一通り見終わった後、最後の売れない区画に移動する。

 こちらは、見物客が全く居なかった。


 その上……。


「ごほっ、げほっ……」


 時折、奴隷のものと思しき咳の声が聞こえる。

 恐らく、病気のある者なんかが集まっているのだろう。道理で売れないわけだ。


 俺が一人で勝手に納得していると、客では無い市場側の人間、恐らく奴隷商人が話しかけてきた。


「これはこれはお客様。格安の奴隷をお求めですかな?」

「格安?」

「ええ。こちらにおりますのは、何かしらの問題を抱えてはおりますが、どれもこれも格安の奴隷。ゆっくりとご覧下さい」


 やはり、問題のある者が集まっているらしい。


 病気がうつったりしては困るので、距離を取りながら見て回る。

 奴隷商人はこの区画に来る客が珍しいのか、俺についてきた。


 暇なので、雑談しながら回る事にする。


「ああいう奴らに、病気治しの薬を買ってやったりはしないのか?」

「しませんな。わざわざ奴隷に買い与える理由もありませんからな。ですが、購入してから治療されるお客様も中には居ます」

「……へぇ」


 観察眼のある奴が、病気さえ治せば使えそうな奴を選んでいるのだろうか。

 それならば、俺も真似できそうだな。


 そんな事を考えていると、一人だけ、顔色も良く、咳などもしていない、健康そうな奴隷が居る事に気付いた。

 気になったので、檻に近付く。

 胸の小さい少女奴隷だった。髪は銀髪で、無感情そうな青い目と表情をしていて、俺が近付いて来ても、視線を動かす事は無い。


 そして……よくよく見れば、美形だ。

 俯いていて無表情だから分かりづらいが、しっかりと見れば、結構整った顔立ちである事が見て取れる。


「……なあ、コイツ、なんでここに居るんだ?」


 奴隷商人に問う。

 見たところ病気でもないし、胸が小さいとはいえ、目立たないが美形なのだから、そういう趣味の奴ならば買う奴も居るだろう。


 俺が初めて奴隷に興味を示したからか、商人は喜々として質問に答えた。


「それはですね、そやつがあまりにも無感情だからでございます。病も無く健康的ではありますが、大したスキルも持っておらず、胸も小振りで……。それに加えて、受け答えもハッキリしないため、お客様に好まれず……」

「……なるほど? 少し、触ってみても?」

「ええ、ええ、どうぞ!」


 奴隷商人の許可を貰い、檻に手を突っ込んで、少女の肩に触れる。


 ――鑑定。


────────────────────

名前:リリア

種族:人間

年齢:14

職業:奴隷(剣士)


STR:E

VIT:F

AGI:E

INT:G

DEX:E

MND:F


スキル:

・剣術Lv1

────────────────────


 見たところ、確かに商人が言うように、売れない理由も納得できる。

 基本的に、鑑定で見えるステータスのアルファベットは、冒険者のランクに近い。この少女――リリアの場合、平均がEとFの間ぐらいなので、ランクもその辺りというわけだ。

 スキルが多ければそれでも高ランクに行く余地はあるが、リリアの場合は『剣術』のみ。そりゃあ不人気にもなるだろう。


 だが。


 『真実視』の力は、ここからだ。


 更に集中し、深呼吸をする。


 ――真実視。


────────────────────

潜在成長上限:S


隠しスキル:

・雷閃(未解放)

・連鎖加速(未解放)

・雷神因子(極低確率変異)


精神安定度:42%

信頼度:0%

裏切り確率:?%

────────────────────


 これが、『真実視』が普通の『鑑定』とは違うところ。

 潜在成長上限でその者の持つポテンシャルを見る事ができるし、隠しスキルで将来的に習得する可能性のある強力なスキルを見る事ができる。


 それに加え、俺に対する感情なんかもある程度読み取れる。

 俺との関わりが薄いため、未来分岐は見れないが……それでも充分だ。


 コイツは、強い。下手をすれば、将来的にはガルドを上回るだろう。

 なにせ、潜在成長上限がSだ。いくつかのステータスは、Sランクに届き得るポテンシャルを秘めているという事。

 それに、隠しスキルも強力そうだ。神の名が付くスキルなど、俺はこれまで見た事が無い。


「商人。コイツ、いくらだ?」


 俺は少女から手を離すと、振り向いて商人に値段を訊いた。


 商人が答えた値段は、即決するに充分な金額だった。


「銀貨2枚でございます」


 俺の所持金の10分の1。

 こんな強力な奴隷を、そんな安値で購入できる。買わない理由は無い。


「……買った」


 かくして追放された俺に、新たな仲間が増えた。

 彼女の名は、リリア。

 将来的に、Sランクになるかもしれない女である。

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