第14話 少女剣士の急成長
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親父の店を出た後、俺たちは冒険者ギルドに向かった。
今日はダンジョンに潜るつもりは無いが、フェードラの冒険者カードの発行を行うためだ。明日やってもいいが、時間のある内にできる事は済ませておいた方がいい。
そういうわけで、昼間の人が少ない時間帯のギルドにやってきた。
人が少ないので、アリアのカウンターに並ぶ者も居ない。こうなると、アリアも暇だろう。
「よっ、アリア」
「……ん、レイ。朝は見かけないと思ったら、何してたの――って、まぁた女の子?」
暇そうに頬杖を突いていたアリアは俺を見て姿勢を正したが、すぐに俺の背後に居るフェードラを見て雨息を吐いた。
「また奴隷の子? 魔族みたいだけど……いいの?」
「ん? まあいいんじゃないか?」
「あ、そう……」
フェードラの角と羽を見てアリアは一瞬胡乱な顔をしたものの、俺の答えに驚きながら呟いた。
「そういうのが好きなのかしら……」
「それで、フェードラの冒険者カードを発行してもらいたいんだけど?」
「――ああ、はいはい。フェードラって言うのね、その子。分かったわよ」
何事か呟いていたアリアだったが、俺の頼みに我に返ると、手続きに必要な書類を取り出した。
リリアの時にも書いた、名前やジョブなどの簡素な情報を書くだけの物だ。
アリアは書類とペンをフェードラに手渡した。
フェードラは首を傾げながらそれらを受け取り、ペンを持って手を止めた。
「どうした、フェードラ? ……もしかして、字、書けないのか?」
「……そうよ! 書けないわよ! ふんっ!」
俺に問われ、フェードラは不機嫌そうに叫び、ペンを投げようとして――踏み止まった。自身が奴隷の身分である事を思い出したのだろうか。
「ちょっとそれ貸して」
俺は鼻を鳴らして顔を逸らしたフェードラの手からペンを掴むと、書類にサラサラと情報を書いていく。
名前、ジョブ、年齢、種族などは全て鑑定で分かる情報なので、俺でも分かるものだ。
念の為、一つずつ読み上げていき、問題が無い事をフェードラに確認してもらう。
「これで合ってるよな?」
「ええ!」
フェードラはまたも不快そうに叫んだ。
その様子を見て、アリアが眉をひそめていたが、俺から書類とペンを受け取ると、奥に行ってカードを発行しに行った。
「……フェードラ」
「何よ!」
アリアが奥に消えたのを見届けていると、後ろに居たリリアがフェードラに話しかけた。
「言っとくけど、アンタは別に主人じゃないから、質問に答える義理も無いからね!」
勝ち誇ったように叫んだフェードラの様子に構う事無く、リリアは言いたい事のみを言っていく。
「私にはいいけど、ご主人様への態度、直して。そうじゃないと、許さない」
「……は? 待って、アンタ、もしかして奴隷なの?」
リリアの言った『ご主人様』という言葉に対して、フェードラは疑問を呈した。
……あれ、親父の店でリリアを奴隷から解放した、という話をしたはずだけど、フェードラは聞いていなかったのだろうか。
「リリアは奴隷じゃないよ。リリア、俺の事はもうご主人様って呼ばずに、レイって呼んでいいんだよ」
「……レイ?」
「そう、それでいい」
首を傾げながら嬉しそうに俺の名を呼んだリリアの頭を撫でると、後ろのカウンターから声が飛んできた。
「ちょっとー、ギルドはそういうイチャイチャする場所じゃないんですけどー?」
「なっ、アリア……イチャイチャはしてないぞ」
フェードラの冒険者カードを発行してきたアリアが、ムッとした様子で俺に文句を言っていた。
何度も言っているが、リリアは妹のようなもので、決して恋愛対象ではないのだが……。
アリアはフェードラにカードを渡すと、俺に言った。
「ほら、何か私にもする事無いの?」
「……へ? えーと……あ、発行代金」
「あーもう、それもそうだけど……いいわよっ! 早くお金出しなさい!」
「ああ、うん……」
何故アリアは怒っているのだろうか……。
俺は困惑しながら銀貨一枚を取り出し、怒鳴っているアリアに代金を支払う。
「はい、銀貨一枚ね! もうどこにでも行けばいいじゃない!」
「な、なんで怒ってるんだ……何か気に障るような事、したか?」
「それが分からないからダメなのよ! ほらもう行った行った!」
「えぇ……」
不機嫌そうなアリアに背中を押されるようにして、俺たちはギルドを出た。
その日一日は、特にやる事も無いので、公衆浴場に入ったりした後、早めに宿屋に泊まった。
ギルドでの様子からリリアとフェードラが喧嘩しないかが少しだけ不安だったが、浴場を出た後の様子を見る限り、杞憂だった。
宿屋に泊まる時にも一悶着ありかけた。
リリアはもう奴隷でないから、リリアの分の部屋も合わせて二つ分部屋を取ろうとしたのだが、リリアが俺と同じ部屋で寝たがったのだ。
とはいえフェードラを別の部屋にするわけにもいかないし、三人では流石に狭い。
そういうわけで、三人では少し広い大部屋を取る羽目になった。
早いところ、ガルドたちとパーティーを組んでいた時のように、パーティー用の家を買うべきかもしれない。
……まあ、その辺りは追々考えていけばいいか。
「レイ、一緒に寝よ?」
床に座って考え事をしていた俺に、ベッドに寝転がったリリアが催促した。
「ああ、分かった」
リリアに頷きながら、フェードラをチラリと見る。
俺と寝る事に不信感があるのか、フェードラは部屋の隅っこに座り、睨むようにこちらを見ている。
……まあ、ベッドは何個かあるし、普通に寝られるだろう。
フェードラから視線を外し、一人部屋のベッドよりも少し大きなベッドに、リリアと共に倒れる。
「えへへ……」
リリアは寝転がった俺に抱き着くと、そのまま俺の胸に顔を埋めた。
そして額をグリグリと押し付け、満足そうに微笑を漏らす。
幼子らしくて可愛げがあり微笑ましい。
リリアを見て微笑みながら、リリアの背中に触れ、鑑定を行う。
ダンジョンで急成長していたように感じたので、気になっていたのだ。
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名前:リリア
種族:人間
年齢:14
職業:冒険者(剣士)
STR:D
VIT:E
AGI:C
INT:F
DEX:D
MND:E
スキル:
・剣術Lv2
・雷閃
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やっぱり、リリアは隠しスキルの一つを会得していたみたいだ。
あの剣を振るった時の金色の輝き、それが『雷閃』だろう。効果は雷属性の追加攻撃か、あるいは攻撃速度の上昇か……どちらにせよ、強力なスキルである事に変わりは無いだろう。
続けて、変化は無いと思うが、一応『真実視』を使う。
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潜在成長上限:S
隠しスキル:
・連鎖加速(未解放)
・雷神因子(極低確率変異)
精神安定度:69%
信頼度:72%
裏切り確率:0%
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流石に隠しスキルは増えていたりしないか。
まあでも、出会った頃に比べれば精神は非常に安定しているし、信頼もしてくれている。
こうやってスキルで信頼度を計るのはどうかとも思うが、しかしこれで安心もできる。奴隷から解放した以上、もしリリアがその気になれば、俺の命を奪う事は容易いため、少しだけ不安だったのだ。
……リリアはかなりの速度で成長しているし、この調子ながら、意外と早くAランクパーティーとして再活動できるかもしれないな。
俺は鑑定結果から目を外すと、俺に抱き着いているリリアの頭を撫でながら眠りに就いた。
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