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追放鑑定士は、真の力で才能の原石だけを拾って最強パーティーを作る  作者: しぃ
第1章 追放鑑定士と新たな仲間たち
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第13話 魔族少女と装備購入

 ブックマークして下さった方、ありがとうございます! 励みになります!

 魔族は、昔から忌避される存在だった。

 見た目が魔物に近しいというだけで、人族から爪弾きにされてきた。


 私も、その一人だった。


 魔物が世界に現れる前の遥か古の時代は、魔族も人族や獣人と共に過ごしていたそうだ。私の母がそう言っていた。


 しかし、魔物が世界に現れてからは、そうもいかなくなった。

 魔物の見た目が、魔族に酷似していたのだ。

 ゴブリンのような緑色の肌を持つ魔族も居れば、私のように禍々しい角と羽を持つ魔族も居た。


 魔物は魔族を同族と見做さず殺しにかかったけど、人族は魔族を魔物と同種だと考えた。

 その結果、魔族は居場所を失っていった。


 世界が魔物に溢れ、残された人々は、一部の街に人を集め、そこを集中的に防衛する事で生き延びようと考えた。

 その結果各地に生まれたのが、今私が居るような街だ。冒険者や商人が時折移動する以外に、人の出入りは存在しない世の中になっている。


 そんな街に、魔族は入れてもらえなかった。

 『魔族が居れば魔物が入ってくるかもしれない』。人族の誰かが言い始めたそんな言葉が、世界中の魔族の居場所を奪っていったのだ。


 魔物塗れの外に放り出され、魔族は魔物に食べられ、次々と数を減らしていった。

 どうにかして街に忍び込んでも、人族によって攻撃され、追い出されるか、あるいは使役されるだけだった。


 私は後者で、奴隷商人によって使役される事になった。


 魔物に追われ命を落とす危険は無くなったが、人族によって使役され隷属するのは、この上ない不快感があった。

 人族どもは私の角や羽に嫌悪感を示す一方で、女としての象徴部分には目を付けた。


 結果、私は、ただただ檻に縛られ、顔も名前も知らない人族の男どもに体を好き放題触られるのみの生活を送る羽目になった。娼婦よりも酷い存在だ。金も貰えず、最低限の食料と水分のみを与えられ、毎日毎日嫌いな人族に体をまさぐられる。


 私の中にあった人族に対する憎悪の感情は、日に日に増していった。


 魔族である私が誰かに買われる事など無いだろうが、もし買われるのならば、獣人や亜人――エルフやドワーフなど――がよかった。

 世界で最も人口が多いのは人族だが、獣人や亜人も活動してはいる。獣人も亜人も嫌いだが、人族よりはマシだと思っていた。


 しかし、私は人族に買われてしまった。


 黒髪の、顔が少し良いだけの、目立たなそうな男。

 隣には銀髪の幼い少女を連れていた。私より少し年上ぐらいで、表情は読めなかったが、青々とした目は、明らかな幸福感をたたえていた。


 男は当然のように奴隷商人に許可を取り、私の体に触れた。普通、許可を取るのは私だろうに。

 しかし男は私の胸や下腹部には触れず、肩に手を置くのみだった。

 人族の男に肩を触れられるだけでも嫌悪感は酷かったが、これまでの人族たちより少しだけ違う事は、なんとなくだが分かった。


 男は銀貨五枚で私を購入すると、自身の名前を言った。


「俺がレイで、この子がリリア。よろしく、フェードラ」

「…………」


 レイと名乗った男は、何故か私の名前を知っていた。

 値札に書かれていたわけでもなかったし、奴隷商人が伝えた様子も無かった。不気味だった。


 そして、リリアという名らしき少女が、常にレイにくっついているのが、気持ち悪かった。


 久々に浴びた日の光は、なんだか眩しくて、私は視線を落とした。

 その日の光を見て、レイは昼時である事を知ったのか、私を食事処へと連れていった。


 給仕の金髪女はレイと顔見知りなのか、他の客に向ける目線と少しだけ違うように感じた。


 やがてその金髪女が鶏肉料理を運んでくると、真っ先にリリアが食べ始めた。多分、彼女は私のような奴隷ではなくて、レイの愛人とか、そんな立ち位置なのだろう。

 レイも料理に手を付けたが、私は黙ってそれを見ていた。腹は減っていたが、奴隷が勝手に食事するわけにもいかない。


 美味しそうな匂いの料理を前にして我慢している私を見て、レイは優しい声を出して、食べるよう許可を出した。

 意味が分からなかったが、気が変わって食べられなくなっても嫌なので、私はすぐに料理を食べた。


 温かい出来立ての料理は美味しくて、人族が作った物だというのに、私は思わず涙が出そうになった。

 私は涙を引っ込めて、ただただ料理を食べ続けた。


 向かいのレイが微笑ましげな目でこちらを見ているのが、なんだか癪だった。


 私は素早く料理を食べ終わると、料理をゆったりと食べているレイに訊いた。


「……なんで、私を買ったのよ」


 私の質問が想定外だったのか、レイは一瞬「んぐっ」と肉を喉に詰まらせかけた後、水で飲み込んでから答えた。


「俺とリリアは冒険者なんだけどさ、後衛が足りなくて……フェードラは風魔法が使えるだろ? だから、後衛として一緒に戦って欲しいんだよ」

「…………」


 なるほど。

 要するにこの男は、私をいざという時の盾にしたいのだ。自分のためかリリアのためかは知らないが……冒険者が奴隷を買う理由なんて、性処理か肉壁ぐらいしかない。

 隣のリリアが居る限り女に困る事は無さそうだし、どう考えても後者しかない。


 ……私の人生も、もうすぐ終わりか。


「あ、そうだ、回復魔法って使える? もし使えると凄くありがたいんだけど……」

「ふんっ」


 優しそうな声音を出して油断させようとしても、私は騙されない。

 例え死んでも、人族になど心を許すものか。


 私は自嘲気味に鼻を鳴らして、レイから目線を逸らした。




 ……参ったなぁ。

 質問をしても答えてくれないし、どことなく不機嫌そうだ。

 早いところ不機嫌の理由を探さないと、ダンジョン内で上手く連携が取れないかもしれない。


 取り敢えず、俺の武器の新調と、フェードラの装備の購入のために、親父の店に行くか。

 リリアの武器もそれなりに酷使させたし、メンテナンスか新調を考えてもいいかもな。


 手持ちの金の残量を見ながらうんうん唸っている内に、親父の店に辿り着いた。


 扉を開き、チリンチリンと鳴るベルの音を聞きながら、店内に入る。


「親父、来たぞ~」

「おう。……って、また女の子が増えてるじゃねえか。その子も奴隷か?」

「まあ、そうだけど……」

「お前、奴隷商人にでもなる気か? やめとけよ、あんな商売」

「いや、ならねえよ……ていうか、リリアはもう奴隷じゃないからな」

「そうなのか?」

「ああ。それより、早く本題に入らせてくれよ……」


 フェードラが居る事をツッコまれつつ、ゴブリンから奪った剣を剣帯から外し、カウンターの上に置く。


「おい、これ……俺の作ったヤツじゃねえな?」

「……悪い。せっかく親父に作ってもらったのに、折っちまったんだ……それで、仕方無くゴブリンの剣を持ってきた」

「そうか……ま、武器っつーのはいつか壊れちまうもんだからな。お前のはそこそこ前から使ってたし、仕方ねえよ。取り敢えず、この剣はまだ使えそうだし、買い取らせてもらうぜ」

「ああ……」


 仕方無い、と口では言っているが、親父はどことなく残念そうだった。

 自分の手で生み出した武器が壊れたという報告を聞くのは、職人としてはあまり嬉しくない事のはずだ。


 ……次は壊すまい。


 そう心の中で決意しながら、新しい剣を親父に頼んだ。


「替えの剣を買おうと思ってるんだが……」

「ああ、分かってるぜ。前のと同じ型のヤツでいいよな?」

「ああ。それと、リリアの剣のメンテナンス、あとはこのフェードラ用の装備も頼みたい」

「おお、結構一気に行くんだな……金は大丈夫なのか?」

「……まあ、なんとか」


 ゴブリンから採った魔石が結構多かったが、ここで散財してしまうので、また稼ぎに行かねばなるまい。


 剣のメンテナンスにはそこそこ時間が掛かるそうなので、それは後回しにして、先にフェードラの装備を見繕う事になった。

 フェードラは魔法使いなので、簡単なローブと風魔法用の杖があればいい。


「ローブはともかく、杖は滅多に作らねえからな……ウチに無ければ、他を当たってもらうしかねえが……」


 親父はブツブツ呟きながら、奥に消えていった。


 親父は革細工などもこなすので、ローブは普段から作っているのだろうが、杖に関してはあまり作らないのだろう。

 詳しい事は知らないが、魔石を加工した物を使ったりして作るらしい。


 少しして、いくつかのローブと一本の杖を持った親父が戻ってきた。


「ローブはこん中から選んでもらうとして……杖は、風属性用のはコイツしかなくてな。これが合わなきゃ、他に行ってくれ」

「いや、充分だ」


 それから、前回のリリアの時のように、フェードラのための試着スペースを作り、ローブを試着させる。

 サイズが合う物を自分で選ばせたので、特に問題は無いはずだ。


 試着が終わり購入する物が決定した後、フェードラに杖を持たせた。


「どうだ? 正直、杖はあんまり分かんないから、アドバイスしようがないんだが……」

「……手に馴染む、けど……」

「そうか。なら良かった」


 フェードラも気に入ってくれたみたいで何よりだ。


 俺は自身の剣と、フェードラ用のローブと杖の購入を決め、親父に代金を支払った。


「剣のメンテナンスってのは、どれくらい掛かるんだ?」

「まあ、状態にもよるからな……少なくとも、今からだと、今日はダンジョンに潜る時間はねぇな」

「そうか……じゃあ、明日の朝にまた来るよ」

「そうしてくれ。じゃあな」


 俺は手を振って親父と別れ、リリアとフェードラを連れて店を出た。

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