第42話 戦乙女の号令
うーん……。
それにしても、ロックされてるこの4つの世界は、なんなんだろう……。
「翔くん、おはよう」
「ああ、おはよう」
「どうしたの、朝から難しい顔して」
オレはミラにスマホを見せた。
「ロックされてるこの4つの世界、何これ?」
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《世界階層データ・シンクロ率》
《北欧神話》
アースガルド 22%
ヴァナへイム 78%
アルフヘイム Locked
ミッドガルド 60%
ヨトゥンヘイム Locked
ニザヴェリール 20%
ヘルヘイム 38%
ニブルヘイム Locked
ムスペルヘイム Locked
《WORLD TREE RECONSTRUCTION》
Progress : 218 / 900 (24.2%)
Status : Incomplete
Error:統合プロセスが未定義です
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「アルフヘイム。これは妖精エルフの世界って言われてる。ヨトゥンヘイムは巨人族。ニブルヘイムとムスペルヘイムはそれぞれ炎と氷の世界って言われてるよ」
「どうしたら、関われるの?」
「うーん……わかんない」
「そっか。それにしても……」
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《STATUS》
NAME:霧島 翔
RACE:ワイルドブラッド
CLASS:サニワ
GUARDIAN:未登録
AFFINITY:UNDEFINED
FIGHT STYLE:ストリートファイト
LEVEL:7
HP : 200 / 200
ATK : 195
DEF : 110
AGI : 210
北欧神話シンクロレベル:9
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「レベル7って弱すぎじゃない、オレ?」
「でも実際の強さとは合ってない気がするけど……特に翔くんは」
「そうかなぁ?オリビア、31だったぜ。なんか悔しいな」
「その代わり、翔くん反則技あるじゃん!ワールドエラー!」
「いやフォローになってねえよ」
「よし!わかった!」
ミラは向かいのベッドから飛び降りた。
「修行だ!」
「どこで?」
「わかんない!墓荒らし!ドラウグル呼んで倒しまくる!」
無茶苦茶言ってんな。
──でも、本当は少しだけ、焦っていた。
「翔くん、ガムラ・ウプサラ!どう?」
「何それ?」
「ここから1時間弱で行ける。北欧神話の神殿があった場所って言われてる」
「ほう」
「神と死者、王様が交わる場所とも」
「決まったな」
「よし!じゃあ、朝食たくさん食べてから行こう!」
昨日の日本食といい、
ミラって大食いだったっけ?
オレ達はストックホルム駅から電車で揺られ、ガムラ・ウプサラに向かった。
でも──
「ミラは、そのガムラ・ウプサラって場所、行ったことあるのか?」
「……」
「ミラ?」
「え、ごめん!聞いてなかった」
「おい!いや、だから、そこに行ったことあるの?」
「……今日は、空気が軽いね!」
「は?」
電車の中から、ミラの様子が変だった。
ガムラ・ウプサラ。
北欧神話の聖地。
その空はやけに高く感じた。
「ミラ、あそこに丘が三つ並んでる」
「あれが王の墓って呼ばれてるんだ」
王の墓……。
古墳みたいなもんか。
だが、
足を踏み入れた瞬間、分かった。
草木の揺れと風の強さが一致しない。
「ここは……」
オレの足が突然重くなった。
生者と死者。
神話と現実。
人間と神。
その境界が、全部が薄く重なってる。
剣のぶつかる音。
雄叫び。
蹄。
血の匂い。
今は何もないのに。
ここだけ、時間が終わってない。
なるほど。
この場所は、神話が終わってない。
「翔くん?」
「ミラは、平気か?」
「どうしたの?平気だよ。なんだか体が軽い」
その違和感の意味を、
オレはまだ知らなかった。
「翔くん!あれ!」
ミラが突然、前方を指差した。
「ルンリス!ブリッジ・オブ・ガルズにいた!」
「本当だ」
銀色の体毛を身に纏ったリス、ルンリスが尻尾を振っていた。
ルンリスが尻尾を振る度、ふわりと浮かんでは消えるルーン文字。
「やっぱり、ここは……アースガルドに近い」
ミラが呟く。
その時、ルンリスが大きく尻尾を振った。
その瞬間。
ミラの足が止まった。
「いや──ヴァルハラに」
声が違った。
「ん?」
ミラは顔を上げた。
ミラの青い目が、金色に光った。
「ヴァルハラに近寄るな」
空気が凍った。
「……は?」
ミラはゆっくり首を傾けた。
その仕草すら、ミラじゃない。
「ここは生者の来るところではない。去れ」
「ミラ……お前、何を言ってんだ?」
風が止まる。
音が止まる。
草が消え、漆黒の石畳が広がる。
地面に巨大なルーン文字が浮かび上がる。
ミラの前に一本のレイピアが落ちた。
「ヴァルハラに寄るな、ワイルドブラッド!」
「ちょちょ、待て!ミラ、お前、どうしたんだよ!?」
ミラの指先が、小さく震えた。
ミラは、レイピアを取ると、オレに向けた。
《ミラ敵対意思:確認》
《Warning》
《戦闘を回避してください》
戦闘を回避って。
当たり前だろ!
《生存確率:計算》
《生存確率:14%》
14%……。
その数値が、冗談じゃないことを、オレの本能は理解していた。
「プレ──」
「やっ、やめろ、ミラ!」




