第39話 黒装束の正体
「終わりだ。ミラ・アスクリンド」
弦から手が離れる。
放たれた矢が、空気を裂いた。
一直線。
──避けられない。
その瞬間。
目の前を、“真紅”が遮る。
放たれた矢が弾かれる。
キィィンッ!!
金属を削るような甲高い音。
矢が弾かれる。
回転しながら地面に突き刺さった。
「ミラ!」
遠くで声。
「あの声……?」
瞬間、緑の閃光が、森を裂いた。
仮面の男の顔面に直撃する。
ドゴォッ!!
──音が、遅れて森に届いた。
仮面が砕け散り、破片が宙に舞う。
男の体が宙を滑った。
残像だけを残し、森の闇へ吹き飛ぶ。
「ミラ、悪いな。待たせた」
「翔くん!……オリビアさん」
仮面の男の舌打ちが森に響いた。
「チッ……」
森は何事もなかったかのように静まり返った。
そのまま男は森の闇へ消えた。
「遅れた」
その一言にミラの瞳が揺れる。
「翔くん……バカ……」
駆け寄ったオリビアが、ミラの肩に手を触れた。
「ミラ……」
ミラは、オリビアの手を払いのけた。
「触らないで!」
空気が、張り詰めた。
「ミラ。どうしたんだ?オリビアは助けに──」
ミラはオリビアを睨みつけた。
「オリビアさん!さっきの奴、あなたの仲間でしょ!墓地であなたが着てた黒装束!あいつも同じ黒装束を着てた!どうして私達を狙うのよ!」
ミラの声が震えていた。
「そ……そんなはずはない。私は、知らない……。オルド・イージスは外では──」
「聞きたくない!消えてよ!もう二度と私達に関わらないで!」
オリビアの瞳が揺れた。
「うっ、う……」
背後でうめき声。
「シグルドさん!」
「シグルド?」
「パパの同僚の人!矢で撃たれてる!」
オレ達は、シグルドを屋敷に運んだ。
慌てて駆け寄ってきたエリク。
「シグルド、どうした!?ミラ、お前そんな格好で、何があった!?」
ヴァルドレン議長が顔を顰める。
「これは一体……」
オリビアは、オレ達を見届けると何も言わずに屋敷を去った。
月明かりの下、彼女の影だけが震えていた。
静まり返った屋敷の会議室。
ミラが口を開いた。
「気付いたら森の中にいたの。頭がふらふらして。見回り中のシグルドさんに出会って……シグルドさんは、私の目を見て、幻術を見たかって」
ヴァルドレン議長がため息を吐いた。
「それで、君を襲った奴は?」
ミラは頷いた。
「仮面をかぶってたけど、男。教団の黒装束を着てた……」
「教団?」
オレが割って入った。
「オルド・イージスだ。……オリビアの」
「オリビアさん、やっぱり私達を狙ってた……」
ミラの声が震えた。
「ミラ、多分違う。オレはオルド・イージスの連中に会ったんだ。あいつらは、ヘルヘイムを監視するためにあの教会にいる。嘘じゃねえ気がするんだ……。それに……」
「それに?」
「わざわざオルド・イージスと分かるような服装でオレ達を襲うかなって。目をよそに向けさせようとしてる気もするんだ……。本気で殺すなら、正体なんか見せねえだろ」
ミラは何も言わず視線を落とした。
エリクはミラの肩を摩りながら、口を開いた。
「翔くん。戻ってくれてありがとう。助かったよ」
ヴァルドレン議長は、静かに立ち上がった。
「今夜は警備を増やそう」
そういうと、オレ達を屋敷に送ってくれたベテランヴォルヴァに目配せをする。
「皆、今日のところは休んでおくれ」
部屋に戻ったミラは、まだ機嫌が悪かった。
「翔くん、なんで私を置いて行ったの?」
「いや、だって……オレがいたら」
ミラが言葉を遮る。
「で、なんでオリビアさんに会ってるの?」
「いや、その。駅を出たらオリビアがいて……その流れで……」
「嫌い。翔くんのこと、嫌いになった」
いや、仕方ねーだろ、そんなの。
ミラが狙われるとは思ってもみなかったんだし……。
その時、リンネアがミラの頭に手を乗せて微笑んだ。
「こら、ミラ。翔くんを困らせないの」
「次は、許さないからね!」
「あ、はい。すんません」
「じゃあ、罰として今日はベッドに手足を縛り付けて寝てもらいます!」
「いや、拷問じゃねーか!」
リンネアが割って入った。
「ミ〜ラ〜」
「フン。知らない!お風呂入ってくる!」
ミラは、頬を膨らませ部屋を出て行った。
リンネアが笑った。
「翔くん、ごめんなさいね。あの子なりに心配してたのよ。寂しかったんだと思う。翔くんが出て行った後、一日中、死んだような顔してた」
「そうですか……」
「ミラをよろしくね」
リンネアが言った“よろしく”の意味は分からなかった。
でも──
胸の奥が、痛んだ。
「……はい」
オレは、頷いた。
横になったオレはスマホを開いた。
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神格照会
神格情報を確認出来ます。
▶︎ヴォルヴァ照会【NEW】
ヴォルヴァ情報を確認出来ます。
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【NEW】?
ふう……。
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▶︎ヴォルヴァ照会
現役ヴォルヴァ情報を確認出来ます。
ミラ・アスクリンド
エリク・アスクリンド
オリビア・エル・ヴァンガード【更新】
▶︎アイリ・ルーネル【NEW】
ヴィーゴ・ロセンベリ【NEW】
ノア・ヴァルケン【NEW】
シグルド・アルヴェリク【NEW】
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アイリ・ルーネル……。
あの黒髪の。
双剣使い、か……。
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《アイリ・ルーネル》
19歳/女
守神:フリッグ
環境保護団体ヴァナリスの元メンバー。アリスの死後、オリビアと行動を共にする。ヘルヘイム監視機構【オルド・イージス】の幹部。
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で……。
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《ヴィーゴ・ロセンベリ》
25歳/男
守神:バルドル(仮)
環境保護団体ヴァナリスの元メンバー。アリスの死後、行方不明になる。その後、オリビアと合流しオルド・イージス創設に関わる。ヘルヘイム監視機構【オルド・イージス】の幹部。
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ヴィーゴ。
声も体も、やけにデカい男。
こいつの守神、なんで仮なんだろう?
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《ノア・ヴァルケン》
24歳/男
守神:不明
環境保護団体ヴァナリスの元メンバー。アリスの死後、オリビアと共にオルド・イージス創設に関わる。ヘルヘイム監視機構【オルド・イージス】の幹部。
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ノア。
なんか嫌な奴だったな……。
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《シグルド・アルヴェリク》
58歳/男
守神:不明
ウーデスヴェクターレ評議会(通称:ヴォルヴァ会)補佐。エリク・アスクリンドとともに長年活躍したベテランヴォルヴァ。
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シグルドさん、か。
大丈夫だったのかな?
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▶︎オリビア・エル・ヴァンガード【更新】
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更新?
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《オリビア・エル・ヴァンガード》
20歳/女
守神:テュール
オルド・イージスリーダー。環境保護団体ヴァナリスの元メンバー。妹アリスの死後、真相を追ってヘルヘイム監視機構【オルド・イージス】を創設する。
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オルド・イージスリーダー……。
てか、いつも思う。
このアプリ──
誰が更新してる?
そしてミラを襲った奴……誰なんだ?




