表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/45

第33話 安全圏

門をくぐった瞬間、空気が変わった。


暖かかった。


冬の外気とは別の、柔らかい温度。

石壁の隙間から、暖炉の匂いが流れてくる。


「……あったかい」

ミラが小さく笑った。


その顔を見て、オレは初めて肩の力を抜いた。


「ようこそ」


声がした。


正面、階段の上。


丸坊主の老人が立っていた。


背は低い。

腰は曲がっている。

白い髪は薄い。


でも——目だけが、異様に若かった。


「ヴォルヴァ会へ」


老人が微笑む。


「私は評議会の長ヴァルドレン・スコルディア。……まあ、長と言っても、ただの古株だ」


エリクが軽く頭を下げた。


「お久しぶりです、ヴァルドレン議長」


議長。

この空気を作っているのは、この老人か。


議長はミラを見て、ほんの少しだけ目を細めた。


「ミラ。大きくなったのう。最後に見たのは10年前じゃ」


議長の視線が、オレに移る。


一瞬、息が詰まった。


「……君が、霧島翔か」


名前を呼ばれた。

知られている。


「……そうです」


議長の目が一瞬鋭くなった。


「日本神話を揺らした、自然の申し子」


「はは、そんなたいそうなモンじゃ......」


議長は、オレの肩に手を乗せた。


「安心してくれ」


議長はゆっくり頷いた。


「慣れない地で、疲れもあるじゃろう。ゆっくりしておくれ」


議長が手を上げる。


それだけで、壁際の扉が開いた。


中から現れたのは、数人の老人たちだった。


ミラが小声で言った。


「……評議会」


議長が歩き出す。


「評議会は高齢者ばかりだと思っただろう」


老人たちが後ろに並ぶ。


「この国のヴォルヴァは、六十で一つの選択をする」


「選択?」


ミラが言った。


議長は頷いた。


「引退するか。評議会に入るか」


老人たちの足音が揃う。


「評議会に残る者は、六十以上。理由は単純だ」


議長は立ち止まり、振り返った。


「若い者に権力を渡すと、血が騒ぐ」


笑った。

でも笑ってない。


「力を持つ者ほど、若さは危険だ」


その言葉——オレに向けられた気がした。


議長が廊下の奥を指差した。


「エリク、あの部屋、自由に使っておくれ。固いことは言わぬ、事が落ち着くまでゆっくりしていったらよい」


「ありがとうございます」


エリクは深々と頭を下げた。


部屋に入ったオレとミラは、同時にその場に座り込んだ。


「ちょっと疲れたね、翔くん」


「うん、流石に……」


奥から、リンネアが顔を出した。


「ママ!」


リンネアに抱きつくミラ。


「大変だったね、ミラ」


リンネアはそう言いながら、オレに微笑みかけた。


「このお部屋、キッチンまでついてるのよ」


そういうとミラを連れて部屋の奥へ消えた。


「わ!すご!大理石のテーブルだよ、ママ!」


明るいミラの声を聞いて、心が少し軽くなった。


エリクは、ソファに腰掛けると窓の外を見ながら呟いた。


「翔くん。心当たりは、あるかい?」


そう聞かれて、一瞬オリビアの顔が浮かんだ。


「墓地の奥にある教会。黒づくめの教団……ですかね?」


エリクは眉を顰めた。

「ふむ……。あれは数年前からあそこに出入りするようになった人々だが、それからあの墓地では、不穏な噂が流れるようになった」


「噂?」


「ドラウグルだ。だが、あの教団の実体はオレも知らない。墓地の噂と関連があるのかもどうかもなあ」


その時、スマホが震えた。


────────────────────

《SYSTEM UPDATE》

アップデートを利用できます。


最新バージョンのアプリに更新するため、App Storeに移動します。

────────────────────


そういえば、しばらくアプリ開いてなかったな。


────────────────────

…… Down Loading……

────────────────────


「評議会の方々と話をしてくる。翔くん、とりあえずここにいれば安全だ。ゆっくりしていてくれ」


エリクは、オレの肩を叩くと部屋を出ていった。


「エリクさん、ありがとう」


────────────────────

ダウンロードが完了しました。

アプリを再起動してください。

────────────────────


再起動、ね。


────────────────────

《STATUS》

NAME:霧島 翔

RACE:ワイルドブラッド

CLASS:サニワ

GUARDIAN:未登録

AFFINITY:UNDEFINED

LEVEL:7

HP. : 200 / 200 

ATK : 195 

DEF : 110    

AGI :210    


北欧神話シンクロレベル:9


《SKILL》

・空手 Lv.4

(コンボ攻撃時攻撃力UP+カウンター確率UP)


・ヴァナヘイム共鳴 Lv2

(ヴァナヘイムで全ステータス+回復速度微増)

・精霊感知

(ヴァナヘイムの精霊の気配を感知出来る)

・神話感知

(神格・守神・世界干渉を微弱に感知出来る)


《DIVINE ARTS》

・ワイルドスピード

(攻撃、防御、敏捷性アップ×ワイルドブラッド補正)

※神格存在との戦闘時、効果上昇)


・グリーンインパクト

(自然エネルギーを一点に集め、インパクトと同時に爆発させる。打撃命中時、自然衝撃波を発生+周囲の敵に巻き込みダメージ)

※特効:動物系・自然歪曲系死霊獣


・ワールドエラー

(効果不明+世界を自然で塗り替える)

※対象にランダムでバインド効果を付与

※対象にランダムでスタン効果を付与

※対象にランダムで回避率減少効果を付与

※ランダムで自身のHP大幅減少


《SYSTEM LOG》

・北欧神話圏(推奨レベル45)

・環境デバフ:無し

・ワイルドブラッド固有補正:ランダム倍率

────────────────────


特に変わんねえな。


────────────────────

《世界階層データ・シンクロ率》

《北欧神話》

アースガルド    22%

ヴァナへイム    78%

アルフヘイム   Locked

ミッドガルド    54%

ヨトゥンヘイム  Locked

ニザヴェリール   15%

ヘルヘイム     38%

ニブルヘイム   Locked

ムスペルヘイム  Locked


《WORLD TREE RECONSTRUCTION》

Progress : 207 / 900 (23%)

Status : Incomplete

Error:統合プロセスが未定義です


《SYSTEM NOTE》

複数世界との共鳴を確認

警告:世界構造の再編兆候を検出

推奨:不要な干渉を避けてください

────────────────────


不要な干渉ねぇ。

そんなのもう無理だっての。


────────────────────

⚠ WARNING ⚠

推奨レベルをいまだ大幅に下回っています

生存確率:27%

────────────────────


生存確率27%。

それだけあれば、十分って思うようになってきたわ。


────────────────────

神格照会

神格情報を確認出来ます。

▶︎ヴォルヴァ照会【NEW】

ヴォルヴァ情報を確認出来ます。

────────────────────


ヴォルヴァ情報?

これが、アップデートか。


────────────────────

▶︎ヴォルヴァ照会【NEW】

現役ヴォルヴァ情報を確認出来ます。


ミラ・アスクリンド

エリク・アスクリンド

▶︎オリビア・エル・ヴァンガード

────────────────────


オリビア……。


────────────────────

《オリビア・エル・ヴァンガード》

20歳/ 女

守神:テュール

 環境保護団体ヴァナリスの元メンバー。妹アリスの死後、ヴァナリスを離れ行方不明となった。邪教教団への入信、暗殺組織の創立等、噂はあるものの、詳細不明。

────────────────────


邪教……暗殺組織……。


でも、あの葛藤、涙。

神に向けた怒り……。


オレは、ポケットに入ったままの、指輪を触った。


「そうは思えないけどなあ……」


オレはそっとスマホを閉じて、やたら高い天井を見上げた。


キッチンから、いい匂い。


ミラが、キッチンからひょっこり顔を出した。


「翔くん。超美味しい肉、焼けた。食べよ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ