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第3話 あなたを歓迎していません。

暗闇の中。

遠くで、誰かの声が聞こえた。


近づいたり、離れたり。


身体の感覚はなくて、ただ浮いているみたいだった。


意識が、ゆっくり浮上した。


……あれ。


天井。


白い。


知らない。


「……ここ、どこだ」


声が、やけに掠れていた。


身体を動かそうとして、鈍い痛みが全身に走る。


「あ、痛っ……」


やっぱり生きてるらしい。


目を瞬かせると、視界の端で何かが揺れた。


ソファの横。


毛布。


……かけられてる。


その事実に、少しだけ現実味が戻る。


鼻をくすぐる匂いは、血でも土でもない。

コーヒー……いや、紅茶っぽい。


暖かい空気。


さっきまでの極寒の墓地が、嘘みたいだった。


「……助かったのか、オレ」


上体を起こそうとして、また失敗する。


その時だった。


カチャ、と小さな音。


奥の部屋から足音。


現れたのは──


金髪。

青い目。

オレより少し年下くらいの少女。


部屋着みたいなニットに、靴下。


北欧そのものみたいな見た目。


目が合った。


少女は小さく息を吐いて言った。


「……生きてた」


短い一言。


でも、その声は確かに安堵していた。


オレは喉を鳴らした。


「……ああ。たぶん」


少女は近づいてきて、ソファの横にしゃがむ。


距離、近い。


思ったより近い。


覗き込むようにオレの顔を見て、もう一度。


「よかった」


それだけ言って、立ち上がった。


なんだよそれ。


ちょっと安心するじゃん。


周囲を見渡す。


質素なリビング。

小さなテーブル。

壁にかかった写真は……少女だけ。


「ここ……君の家?」


拙い英語で聞くと、少女は頷いた。


「うん!」


毛布を握りながら、オレは天井を見上げる。


北欧で即死するはずだった人生。


なぜか民家のソファで復活。


金髪青目の少女付き。


「お父さんとお母さんは?」


「出かけてるよ!もうすぐ帰ってくるよ!」


いるのかよ。

絶対追い出されるじゃんか。


スマホが鳴った。


《蘭》


「……電話、出ていい?」


少女はニコリと笑って頷いた。


「もちろん」


通話。


押した瞬間、大声に驚いてスマホを落とした。


「ちょっと、翔くん!どこにいるの!?今、家まで来たのに、鍵閉まってて入れないんだけど!!」


「あ、いや、その……」


「どこにいるの!?」


言いたくない。

言ったら、絶対……。


「あ、ちょっと、スウェーデン……」


「スウェ……。はあああああぁぁぁぁ!?」


ほら。


「聞いてないんですけど!!」


スマホから漏れる大声に、少女は驚いてティーカップを倒した。


「あ!ごめんなさい!」


その声を、蘭の地獄耳が拾った。


「今の声、誰!?」


「いや、あの……知らない子」


「嘘つかないで!!もしかして私に黙って、浮気相手と海外旅行!?どういうつもりなの!?」


想像力がすごいな。

そもそもお前、彼女じゃねーだろ。


でも、反論したらめんどくさい。


「いや、さっき倒れて。気が付いたら、金髪の女の子がいて──」


「はああぁぁぁ!?翔くんって、外人好きだったわけ!?アタシって彼女がいながらなんなの!?もう知らない!!……」


切れた。


ちなみに電話の女は、海堂蘭。

彼女じゃない。

日本で神様と揉めた時に、一緒に戦った仲間。

こいつも“サニワ”だ。


まあ、そんなことはどうでもいい。


目の前に金髪の少女がいる。


オレを、キョトンと見つめる青い目の少女。


「すごい怒ってたね。彼女?」


「いや、違う。オ、オレ行かなきゃ。助けてくれてありがとう」


立ち上がろうとしたら、天井が回った。


「大丈夫!?無理しないで!あなた、ドラウグルにやられたんだから。パパとママにはちゃんと説明するから、ゆっくりしてて」


「……ごめん。ありがとう」


……え。

今、この子、ドラウグルって言ったよね?


「ちょっと待った!ドラウグルって、君、なんで知ってるの?」


「もちろん!私はヴォルヴァだから!だから、あなたが来ることもわかってた」


「ヴォル……ヴァ?分かってた?」


「はっきりじゃないけどね。

でも“守神を持たない緑のヴォルヴァ”が来るって、ずっと見えてた」


「……ヴォルヴァ?オレも?」


……なるほど。サニワの北欧版ってわけか。


「ちなみに、私のパパもママもヴォルヴァだよ!」


「……うっ!」


とりあえず、さっきの蘭の大声で頭が痛ぇ。


「今度教えるね!今はゆっくり休んでて!」


少女は扉に手をかけたまま、一瞬だけふらついた。


「怒られるかな……」


少女は小さな声で呟くと、部屋を出て行った。


油断したら、また遠のきそうな意識の中で、サニワアプリを開いてみた。


──サニワの世界にようこそ!


もう、わかったから。

──────────────────────

種族 ワイルドブラッド

職業 サニワ

名前 霧島 翔

守神 未登録


レベル 1

体力  4/100

攻撃力 50

防御力 20

敏捷  90

北欧神話シンクロレベル:2


スキル

・あばれる


神技

・ワイルドスピード(仮)


《SYSTEM LOG》

・北欧神話圏に滞在しています。(推奨レベル45)

・北欧神話との親和性:上昇中

・ワイルドブラッド固有補正:???

※通常のサニワと生体構造が異なります


WARNING!

未登録神域です!

推奨レベルを大幅に下回っています!

体力が5%を下回っています!


生存確率:7%

──────────────────────


体力4/100……。

生存確率7%て……。


——さっきよりマシだけど、全然安心できない。


「参ったな」


どうすりゃいいんだろ。


スマホが震えた。


《SYSTEM NOTE》

この世界は、あなたを歓迎していません。


笑う。分かってるよ。


「オレは歓迎されたことなんてねーよ、ばーか」


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