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第18話 分類不能(UNDEFINED)

北欧の神を初めて殴った日。


 夕食の後、リビングでくつろぎながらスマホを手に取った時、キッチンからエリックとミラとの会話が聞こえた。


「え、今日?駅前で?」


オレはその一言に一瞬、固まった。

ミラの父親エリックは、救急隊員だ。


「ああ、緊急で呼び出されて行ったんだ。そしたら若い男数人が倒れててな」


待ってくれ。

その話題、やめない?


「一人は顎が砕けてて、もう一人は脚。そしてほとんど全員、肋骨が折れてた」


「喧嘩?」


エリックは天井を見上げた。


「喧嘩というには、あまりも一方的に見えたなぁ。ありゃもう、事件レベルだな」


オレは、気配を消すように息を潜めた。


「でも、不思議なことに周囲にいた人は誰もその様子を見ていないって言うんだ。目の前にいたはずの環境保護団体の人達も……」


ナイス、ヴァナリスのおじいちゃん、おばあちゃん!

よし、終わろうその話題!


その時、ミラが一瞬こちらを見た。

オレは、ニコッと笑った。

我ながら、自然な笑顔だ。


「翔くん?」


「ん?」


呼ばれただけで、背筋が凍った。


「今日、一人で出かけてないよね?」


やばい。


「え?まあ、ちょっとその辺を散歩したぐらいかな……」


「そ。だよね」


ミラは、静かにエリックの方に向き直った。


助かった。

終わったと思った……。

あぶねえ。

気をつけよう……。


……そういえば、アップデート来てたな。


「どれどれ……」


────────────────────

《STATUS》

NAME:霧島 翔

RACE:ワイルドブラッド

CLASS:サニワ

GUARDIAN:未登録

AFFINITY:UNDEFINED ← 【NEW】

────────────────────


「ん?新しい項目が増えた。……なあ、ミラ。AFFINITY?って何?」


ミラがオレのスマホを覗き込んだ。


「属性、かな?」


「属性?」


ミラはクスッと笑った。


「でも翔くん、UNDEFINEDだね」


「それ、どういう属性?」


「うん。分類不能」


ちょっと期待したのに。

やっぱりオレは、どこにも属せないらしい。


「ミラは?」


「私はアースガルド。ヴァルキリー様が守神だからかな」


「なるほど……」


────────────────────

《LEVEL UP!》


LEVEL : Lv.4 → Lv.5

HP  : 150 / 150 → 170 / 170

ATK : 125    → 160

DEF : 70    → 90

AGI :150    → 170

────────────────────


「お、やっとレベルが5になった。ミラは?」


「えっと……9だね」


「……強くね?」


「翔くん。これはあくまで、アプリだから」


フォローになってるのか、それ。


────────────────────

北欧神話シンクロレベル:5 → 6


《SKILL》

・空手 Lv.3 → 空手 Lv.4

(コンボ攻撃時攻撃力UP+カウンター確率UP)


・ヴァナヘイム共鳴 Lv1

(ヴァナヘイムで全ステータス+回復速度微増)

・精霊感知

(ヴァナヘイムの精霊の気配を感知出来る)


・神話感知←【NEW】

(神格・守神・世界干渉を微弱に感知出来る)

────────────────────


神話感知。

まあ、それは分かる。


────────────────────

《DIVINE ARTS》

・ワイルドスピード

(攻撃、防御、敏捷性アップ×ワイルドブラッド補正)

※神格存在との戦闘時、効果上昇)


・ワールドエラー

(世界を自然で塗り替える)

※対象にランダムでバインド効果を付与

※対象にランダムでスタン効果を付与

※対象にランダムで回避率減少効果を付与

※ランダムで自身のHP大幅減少

────────────────────


「オレの神技、(仮)じゃなくなってる」


……てか、


「ランダムでHP大幅減少!?自爆技じゃん。改めて言われると怖いな」


────────────────────

《世界階層データ・シンクロ率》

《北欧神話》

アースガルド     5% → 11%

ヴァナへイム    25%

アルフヘイム   Locked

ミッドガルド    55% → 49%

ヨトゥンヘイム  Locked

ニザヴェリール    5%

ヘルヘイム     13%

ニブルヘイム   Locked

ムスペルヘイム  Locked


《WORLD TREE RECONSTRUCTION》

Progress : 93 / 900 (10.3%)

Status : Incomplete

Error:統合プロセスが未定義です

────────────────────


「ミッドガルドが下がってるのは……」


あ、チンピラぶっ飛ばしたからか。


「どうしたの、翔くん?」


「あ、いや、なんでもない」


オレは一瞬、スマホ画面を隠した。


────────────────────

《SYSTEM LOG》

・北欧神話圏(推奨レベル45)

・環境デバフ:無し

・ワイルドブラッド固有補正:ランダム倍率

⚠ WARNING ⚠

推奨レベルをいまだ大幅に下回っています

生存確率:21%

────────────────────


「肝心な生存確率が上がらねえ」


改めて……

推奨レベル45は、地獄だな。


────────────────────

《SYSTEM NOTE》

複数世界との共鳴を確認

警告:世界構造の再編兆候を検出

推奨:不要な干渉を避けてください

────────────────────


無理なこと知ってるくせに、意地悪なアプリだな。


────────────────────

▶︎ 神格照会

神格情報を確認出来ます。

────────────────────


ん、神格照会?


「なんだこれ?」


オレは何気なくタップしてみた。


────────────────────

対象を選択してください。

▶︎FORSETI

────────────────────


「フォル……セティ?」


ああ、昼間のあの神か。


画面が一瞬だけ暗転し、

低い電子音と一緒に、情報が展開された。


────────────────────

《GOD DATA》

NAME:FORSETIフォルセティ

MYTH:北欧神話

FACTION:アース神族

DOMAIN:裁き/秩序/正義


Divine Rank:B


敵対行動の可能性:高

────────────────────


敵対行動の可能性、高い……

まあ、ぶん殴っちまったから当然か。


────────────────────

《SYSTEM ALERT》

15:35 当該神格との直接衝突を確認

神話干渉レベル:危険域

────────────────────


神話干渉レベル、危険域……。


その時。


「……翔くん?」


振り返ると、怪訝な顔でオレのことを睨むミラがいた。


「今日の散歩……どこまで行ったの?」


終わった。

完全に終わった。


「それ……何?」


オレのスマホを指差すミラ。

オレは、話を逸らす。


「あ、ああ、これ?なんか、新機能?神格照会って追加されてて……」


「そうじゃなくて、“15:35当該神格との直接衝突を確認”って、どういうこと?」


はい、即死。


「え?あー……その……」


「フォルセティ……アース神族……裁き……」


ミラは、ゆっくり顔を上げた。


「翔くん」


嫌な予感しかしない。


「私が学校に行ってる間……一人で、外、出たでしょ」


「……はい」


「何があったの?話して」


「実は……」


オレは今日の出来事を洗いざらい全て正直に話した。


「ええぇぇ!?神様を殴ったあぁ!?」


「いや、そんなつもりはなかったんだけど、なんかそういう流れになって……」


ミラは、しばらく何も言わなかった。

その沈黙の方が、よっぽど怖かった。


しばらく沈黙した後、ミラは静かに口を開いた。


「なんで……オリビアさんを探しにいったの?」


「あ、いや、ミラに教えてもらった三年前の事件とか、ヴァナリスとか……どうしても他人事のように思えなくて。街に出たら何か知れるのかなとも思ったんだ。その流れで、もしオリビアに会えたら、ちゃんとお礼言わなきゃって思ってさ」


「お礼?」


「ああ。ビルカ遺跡で助けてもらっただろ?血まで流して……」


ミラは深くため息を吐いた。


「翔くん……」


ミラは、拳をぎゅっと握った。


「はい、ごめんなさい」


「ううん。それはいいの。でも……これから隠し事は禁止ね」


オレは、頭を掻いた。


「……悪かった」


「反省してる?」


「してる」


「もうしない?」


「うん。ちゃんと言う」


ミラは少し下を向くと、ゆっくりと顔をあげてニタリと笑った。


「じゃあ、罰として、外出は全部事前申請、スマホは毎日履歴チェック、位置情報常時ON、私の電話は3コール以内に必ず出る。OK?」


「いや、全然OKじゃない!」


「いいの?パパに、駅前で喧嘩したのは翔くんだったってバラしても?」


ミラは、鬼だった。


「はい……わかりました」


「フフフ、わかればよろしい!じゃあ、明日行くところは決まったね!」


「え、明日?どこ?」


ミラは壁に貼ってあったスウェーデンの地図を指差した。


「ブリーシンガメン!フレイヤの首飾りと呼ばれる場所よ!」


「フレイヤの首飾り?」


「そ!遠いよ!だから今日は早く寝てね!おやすみ!」


ミラは部屋を出て行った。


「ブリーシンガメン……名前からは何も想像出来ない」


だけど、なぜか呼ばれている気がして、胸がざわついた。

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