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#1 師弟の買い物【リオラン&ビビアン】

こちらは連載「最強ババアのティータイム」の番外編です。

本編では語られなかった歴代"最強ババア"たちの日常を、1話読み切り形式でご紹介いたします。


※注意※本編に比べて少し甘めですので、苦手な方はご注意ください。 


大勢の人でにぎわう休日の商店街。

その中に少し開けた空間が。


真っ赤なワンピースに、艶のある緋色の長い髪。

丁寧にほどこされた化粧は、唇に引かれたルージュがアクセント。

――だがしかし、どこまでも男性らしい逞しい体つき。


誰もが距離を置く、いかつい御仁のその隣に。

白髪にシンプルな灰色ワンピースの少女が、隠れるように歩いていた。


「ちょっとあなた。たまには陽の光も浴びなさい」

なかば師・ビビアンに引きずられるようにして、久方ぶりの外出をするリオランだ。


城下の貴族街。

石畳の両側に、高級店が並ぶ中を、師は弟子の手を引いて目的の店へと向かった。



***

繊細なレースと胸元の柔らかなベルベット生地。

白髪の少女は、漆黒のゴシックドレスに包まれていた。


痩せて小柄な体がスカートのボリュームを強調し、それがどうしようもなく退廃的で、神秘的な雰囲気を醸し出していた。


「……驚くほど似合うわね」


年頃の少女に人気のシフォンドレス、流行りのリボンにパリッと仕立てのフォーマルドレス。

いずれを着ても「服に着られてるわね……」と、師の反応は芳しくなかったが。


再三の着せ替えにぐったりしている本人をよそに、ビビアンは服飾店員と盛り上がっていた。


「これにするわ。超特急で仕上げてちょうだい」


まだ細かな採寸・調整があると聞き、思わず気が遠くなるリオランだった。




***

「先生、脱げない…」


ビビアンのノリと勢いで、お買い上げそのままに着て帰ったゴシックドレス。

複雑な衣装の仕様に、リオランは途方に暮れた。


「あなた、そういえば術以外はからっきしだったわね…失念してたわ」

ビビアンも困り顔。


ドレス1つの購入で、目が回るほどに疲れ果てたリオランは。

彼女が唯一希望していた薬屋訪問も諦めて、泣く泣く山小屋に戻ってきた。


今はただひたすらベッドに飛び込みたい。


ビビアンは困り果てた。

何層にも重ねるペチコート。背中の網紐ボタン。

慣れた女子でも大変なのに、ましてや複雑なコルセットは、到底引きこもりの教え子には無理だろう。


「せめてもっとシンプルなものにすれば――いや、あたくしが着替えの魔術を開発すれば……?」

最早教え子のファッションのために新術開発まで検討し始めるビビアンだったが


「眠い。ドレス邪魔……先生、脱がせて」

小さな声に、ビビアンはフリーズした。


「脱が……ちょっと!?」

この引きこもり、遂に常識的な人間の知識も抜け落ちたか。


「リオ……いくら美しいからといって、あたくしが成人男性であること、忘れたわけじゃないわよね?」


暫しの沈黙。

そして返された言葉に、今度こそビビアンは絶句した。


「早く。先生に、脱がせてほしいの」

気のせいか。普段表情の少ないリオランの頬が赤らみ、目が潤んでいる。


懇願するように見つめてくる弟子の視線に、ビビアンは空を仰いだ。

「ああ、もう。知らないわよ」


ビビアンは葛藤の中、その白い肌に手を伸ばし――ピトリと額に手を当てた。


「あっつ。あなた、凄い熱よ」


病人相手に冷静さが舞い戻る。

そうだ、別に着替の術がなくとも、使い魔に手伝わせれば良いだけだ。


(ふう。……グッジョブあたくし!)

理性の勝利である。


無事使い魔に寝間着に替えられ、布団に寝かせられたリオランは――



「おでこ……熱い」


触れられた手のひらが、今もはっきり思い出されて。

引いてきた熱がぶり返したようだと、枕の下に頭を突っ込んだ。


第一弾は、

初代・最強ババア:リオラン&本編いち美人さん:ビビアン先生のお話でした。

※2人は本編『最強ババアのティータイム』第1話と第13話に登場です。


不定期にはなりますが、ぼちぼち更新していこうと思います。

よろしければ、ティーカップ片手にのぞいてみてくださいね。

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