『再誕の神と探偵』
夜神月は机の上の黒いノートを見つめ、口元に笑みを浮かべていた。
――これで俺は神となる。前回の失敗は繰り返さない。
だがその瞬間。
別の場所、同じ時刻。東京の片隅にあるホテルの一室。
窓際で膝を抱え、菓子を摘まんでいた男が、不意に目を見開いた。
「……これは」
冷たい記憶が脳裏を駆け抜ける。
夜神月と向かい合い、心臓が止まっていく瞬間。死神の姿。
そして――自らの敗北。
竜崎。そう呼ばれていた世界一の探偵、Lは確かに一度死んでいた。
しかし、今こうして戻っている。若き姿のまま、死ぬ前のあの日に。
「なるほど……これは面白いですね」
Lの瞳に、冷ややかな光が宿る。
敗北したのは一度目の人生。ならば二度目は――勝てばいい。
そして彼は直感する。
――奴も、戻ってきている。
その「奴」とはただ一人。
夜神月。キラ。自らの唯一無二の宿敵。
Lは菓子をひと口齧り、淡々と呟いた。
「月くん……また遊びましょう。今度はどちらが勝つか……楽しみですね」
かくして、死を越えた二人の天才は、再び同じ時刻から動き出す。
運命は最初の一手から、既に狂い始めていた――。