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52.わたしのお母様(2)

 『王子様とお姫様は幸せに暮らしました。

 めでたしめでたし。』



でも、お姫様が二人もいる時はどうなるの?



「ウィリアム。伯爵は悪い人ではないわ」

「じゃあ、どうしてお母様は一緒に暮らせないの?」

「私はあなたのお母様だけど、伯爵の妻ではないからよ」


お母様だけど、妻ではない。


「……私は婚外子ですか?」


母上は婚外子だ。ゴミ箱な実家のお話の時に教えてもらった。婚外子は結婚した相手とは違う女性が産んだ子のこと。

お母様が妻ではないなら私は婚外子になる。


「あなたは私が伯爵と結婚していた時に生まれた子だから嫡出子よ。その後に離婚したの。

そうして伯爵はコーデリア様と再婚なさってフェリックスとエリサが生まれたから、この家の子供達は皆嫡出子よ。ただ、母親が違うというだけなの」

「りこん……」

「夫婦ではなくなるということね」


難しくてよく分からないけど、最初の妻がお母様で、2番目が母上?


「……じゃあまた妻が増えるの?」


妻って何人必要なんだろう。そうしたら母上もそのうち出ていっちゃうのかな。


「よっぽどのことがない限り離婚はしないわ」

「……お母様はよっぽどのことがあったの?」

「そうね。たくさんあったかしら」


そう言って笑ったお母様は何だか寂しそう。


「大丈夫?寂しい?」


私には母上も父上もフェリックス達もいます。

でも、お母様はひとりぼっちなのかな。それはとっても寂しくて泣いちゃうかも。


「……ウィリアムは本当に優しいわね。

大丈夫よ。今はね、お母様も一人じゃないの」

「そうなの?じゃあ、新しいお父様?」

「そう呼んでくれたら喜ぶわ。妹もいるのよ」

「すごいっ、お父様もお母様も妹まで増えちゃった!」


びっくりした。……けど、なんだろう。やっぱりよく分からない。


「……なんでかな。嬉しいのと、こう……お腹がぐるぐるする感じ」

「そうね。よく分からないわよね。

ただ、これだけは覚えていて。あなたもフェリックスもエリサも、皆大切な宝物よ。誰が欠けても駄目なの。誰もあなた達の代わりにはならない、一人一人が大切な宝物。大好きよ、ウィリアム。忘れないでね」


何でかな。よく分からないのに……


「……うれしい」


だってお母様の宝物なんだって。


「代わりはないんだよね?」

「絶対にないわ。あなたは一等大切な宝物よ」


すごいっ、一等なんだ!

すると、お母様がちらりと時計を見た。

……もう帰っちゃうのかな。まだ少ししかお話ししてないのに。……でも、妹が待ってるんだよね?


「妹は小さい?」

「そうね、2歳よ。貴方の小さかった頃によく似ているわ」

「……ほんとに代わりじゃない?」


だって私に似ている妹がいるから会いに来るのを忘れたのかもしれない。


「ルーチェって言うの。確かにね、あの子を見てウィリアムを思い出すことはたくさんあるわ。

あなたは今、どれくらい大きくなったかしら。何か困ってないかしら。……いつか会えるかしら?

ルーチェと違ってウィリアムは体つきがしっかりしていたから、きっと背が伸びるだろう。

弟妹を可愛がっていると聞いているから、自分のことより下の子の面倒を見ているうちに自分の悩みなんか忘れちゃうかも。

会えないから想像ばかり膨らんで、こないだなんか、ルーチェに『かかたま、おきてる?』って聞かれちゃった。妄想注意と心に誓ったわ。

……やっと会えたあなたは、想像していたよりずっと格好良くて、ずっと優しい男の子だった」


嬉しそうに私を見つめるお母様は、ちゃんと妹と私を区別してくれていると分かりました。


「……お母様は、想像していた『アシュリー様』よりもずっと綺麗で可愛いです」

「まあ、嬉しいわ!」


私の一言でこんなにも喜んでくれる。

分からないことは多いけれど、お母様を大切にしたい。もっと側にいたい。……でも、どうやって?


「どうしたの?」


どう……なんて言えばいいのかな。

言ったら、母上やお母様を困らせないかな。


「……何でもありません」

「ねえ、ウィリアム。私達は親子だけど、ほとんど初めましてよね?」

「…はい」

「だからね、たくさんお話しをしましょう。

好きな遊びは何か、苦手な食べ物は何か。最近で一番楽しかったことは?

ほら、私はこんなにたくさん知りたいことがあるの。あなたはどうかしら」


本当に?知りたいと思っていいのかな。


「私も……たくさんありすぎて分かりません」

「じゃあ、次に会うときまでに3つ質問を考えておきましょう。お互いによ?」

「……また会えるのですか?」

「ウィリアムが望んでくれたら嬉しいし、嫌だと言っても押し掛けちゃうかも。

それにコーデリア様とも仲良くなったの。だから、覚悟してね?」


茶目っ気たっぷりに笑うお母様はとっても楽しそうだ。


「はい、ちゃんと質問も考えます。……5つに増やしてもいいですか?」


だって3つじゃ全然足りないよ。それに、『よっぽどのこと』が気になって仕方がない。


「もちろんよ。それなら私も5つに増やすわね」


二人でゆびきりをする。次に会うのは1週間後と約束をした。


それまでに質問を考えなきゃ。



来週が待ち遠しいな。





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