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アシュリーの願いごと  作者: ましろ


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48/65

48.再会

コーデリア様からのお返事は早かった。


『ご無事だと信じておりました』


その一文に大変申し訳なくなりました。やっぱり死亡疑惑が出ていたみたいです。伯爵の巻き添えにしてごめんなさい。


「ジェフ、コーデリア様をこの家に招待してもいいかしら」

「もちろん。ルーチェに会わせたいのか」

「ええ。ちゃんと私が幸せだって見せたいの。犠牲になんかなっていないって、言葉で伝えるより一発で分かるでしょう?」

「そうだな。それで?今後の方針は決まったのか」

「もちろんよ。聞いてくれる?」


その日はジェフとこれからの事をたくさん話しました。

何だか笑われたりもしたけれど、概ね了承を得ることが出来た。


「アシュリーの思うままに」

「大盤振る舞いね」

「信頼しているからな」

「……ありがとう。大好きよ」


言葉だけでは足りなくて、その逞しい体に抱きついた。

ふわりと香るウッディなそれは、鷹揚な彼によく似合っている。


「貴方の香りは気持ちが落ち着くわ」

「嬉しいね。君の香りはいつも私をドキドキさせるけどね?」

「まあ!」


笑い合ってキスをする。ただ触れ合うだけで心地よい。じゃれ合って、甘えて、甘えられて。

そんな穏やかな時間がとても愛おしい。


「貴方と出会えてよかった」

「……あの男には感謝しないぞ」

「あははっ」


ジェフが彼を許す日は一生来ないのでしょうね。




◇◇◇




「いらっしゃい、コーデリア様」

「お招きいただきありがとうございます。アシュリー様」


コーデリア様とはすぐに会うことが出来ました。何があろうとも参ります!と、熱いお手紙をいただいて、思わず笑ってしまったのは内緒です。


「どうぞお入りください」


伯爵家に比べればこぢんまりとした、でも私にとってはどこよりも素敵なお城です。


「まさか王都に住んでいらっしゃるとは思いませんでした」

「最初の頃は療養のために海沿いの街に住んでいたのよ。だいたい2年くらいかしら。

それで体調が随分良くなったのと、ジェフをいつまでも休ませるわけにもいかなかったから王都に戻ってきたの。

あ、紹介するわね。娘のルーチェよ」

「こんにちぁ、るーちぇでしゅ」


今日のルーチェはツインテールに白いリボンを結んでいます。最近お気に入りの髪型です。


「……まあ、何て可愛らしいのかしら」


コーデリア様はそう言いながら、とても懐かしそうにルーチェを見つめています。幼い頃のウィリアムを思い出しているのでしょうか。


「はじめまして、コーデリアと申します」

「こーでぇあ?」

「よろしければコーディと呼んでくださいませ」

「こーでぃ?」

「はい、ルーチェ様」


以前よりずいぶんと表情が柔らかくなったわ。

少し一緒にお話をしてから、ルーチェはコリーンとお絵かきをするために出て行きました。


「幼い頃のウィリアムにそっくりで驚きました」

「可愛いでしょう?」

「とっても!」

「ねえ、コーデリア様。私はちゃんと幸せよ?」

「はい…。よかったっ、本当によかったです……。

アシュリー様がご友人の皆様に、体を壊して長期の療養が必要だからと離婚理由を説明してくださったでしょう。でも、貴女はそんなふうに人に心配を掛けるような嘘を吐く方ではありませんもの。ですから本当にお体が優れないのだと心配でした。

でも、私が連絡するなんて、ご家族の皆様を不快にさせてしまいますし、ウィリアムのためにも絶対に元気になってくださると信じるしかありませんでした」


不思議ね。もともとは妻と愛人で、決して相容れない仲のはずなのに、なぜか同志のように感じてしまいます。


「心配をかけてごめんなさいね」

「いえ。私が勝手に……でも、マクレガー様とご結婚されていたのには驚きました。

一度事務所を訪ねたのですが休業されていたので」


……私を口説くために休業していたとは言い難いですね。


「彼がずっと私を支えてくれたんです」

「そうだったのですね」


そう呟くと、お茶を一口飲み、しっかりと私を見つめました。


「……アシュリー様はウィリアムを引き取ることをお望みなのでしょうか」


ああ、それを覚悟していたのですね。


「そうだと言ったら?」

「…まずは子ども達と話をする時間を頂きたいです。あの子達がちゃんと考えられる時間が必要ですわ」


よかった。コーデリア様はちゃんと子ども達の気持ちを一番に考えてくれている。


「意地悪してごめんなさい。貴女の気持ちが知りたかったの」

「……では?」

「私はコーデリア様のことが心配で会いたかったのよ。母親が幸せじゃないことに子どもは敏感ですもの。

最近ちょっとだけお父様反抗期が起きてるそうね?

理由を教えていただけるかしら」







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