#03 交わることの無い世界
昼休みになり、俺は机でうつ伏せになっていた。
「…………」
今は何も考えたくない。だから、何も考えないようにしている。考えてしまったらどうにかなりそうだ。
すると、ドォンとでかい音が聞こえた。
『地震です!地震です!生徒の皆さんは体育館に避難してください!繰り返します!』
という校内放送が流れた。生徒たちは混乱していた。だけど、俺はなぜか落ち着いていた。
「空っ!早く逃げなきゃっ!」
茜が俺を引っ張る。けれど
「俺は……っ!」
俺は茜の手を振り払って音がした方向へ向かった。
「ちょっ…空っ!」
俺は急いで向かう。嫌な予感がしていた。
だって明らかに地震じゃなかった。何かに攻撃されたかのような感覚がした。でもこの世界で攻撃してくるものはいないだろう。だとしたら…あの世界から…!
「っ……!」
見つけた。だけどその姿には見覚えがあった。
「なんで……お前がここに…」
その人物は……
「"敵"を発見…排除する…」
「っ……フランドール…スカーレット…」
そう。フランドール・スカーレットであった。
フランは無言で弾幕を張ってくる。
それを俺は避ける。
「……なぜこの世界の人間が私の攻撃避けれる?」
口調がいつもと違う。つまり……
(洗脳されている…のか…?)
「空っ!」
声が聞こえた。
「なんでここに来たんだ…茜っ…!」
フランは茜を見るやいなや襲いかかろうとレーヴァテインを構えた。
「えっ………」
「自符『大結界』」
俺がそう唱えると、茜の周りに結界が貼られる。
ガキンッ…とフランの攻撃を弾く。
「これは…どういうことだ…この世界の人間が使えるはずのないものを……」
そんなことは今は関係ない。俺は茜の方向に走っていく。
「茜っ…どうして来たんだ…」
「だ…だって…心配だったから…」
「大丈夫だって言っただろっ…」
「でもっ……!」
「まぁいい…そろそろ茶番はここまでにしよう」
「お前…本当に何も…」
「"お兄様"の計画の邪魔はさせないっ…!」
「は……お兄…様?」
俺が疑問に思っていると、フランが斬りかかって来た。
「ぐっ……」
相変わらず重い一撃だ。
「貴様は計画の邪魔になる人間だと判断した。よって消させてもらう。」
「っ…………フラン……」
俺はフランを攻撃出来ない。したくない。
「『禁弾「スターボウブレイク」』
一気に弾幕が押し寄せてくる。それを難なく回避する。
「これでもっ…くらえっ…!」
俺はフランの腹部に思いっきりパンチを食らわせる。罪悪感がおしよせてくる。
「がはっ…!」
「いい加減…思い出せよフラン…」
「何を…いって…」
「お前がお兄様と言ってる奴はどんなやつかは知らんが…お前の兄は俺だ!フランっ!」
「っ………!?」
フランは俺から距離をとる。
「なぁ…思い出してくれよ…俺との思い出はそんなつまらなかったのか?」
「う…うるさいっ!」
フランはレーヴァテインを振り回す。だけど俺には当たらない。
「お前が洗脳されてるのはわかっている。俺がお前を守れなかったせいで…こんなことに…」
「だまれっ!黙れっ!」
「フラン…本当に何も覚えてないのかよ…少しくらいは…あるだろ…」
俺は高速でフランの後ろに移動する。
「なっ…いつの間にっ…!」
離れようとするフランを……俺は…強く抱き締めた。
「お前は…そんなに弱いやつなのか…?そんな簡単に敵の手に落ちるやつなのか?少なくとも…俺の知っているフランはそんな弱くは無い。」
「あ………ぁぁ…」
「だから…思い出してくれ…俺の事を…お前の…フランと一緒に過ごしてきた"兄"のことを」
「あ…ぁぅ………」
フランは崩れ落ちる。やがて立ち上がって………
「ごめんなさい……お兄様…」
それは、さっきまで言っていたお兄様ではなく、俺の事を指していた。
「フラ…ン……」
「私ね、ずっと…忘れてたの…ううん、正しく言えば…消された…」
「消された……?」
「うん…だから…ごめんなさいっ…」
フランが抱きついてきた。俺はフランを優しく撫でる。
「大丈夫…思い出してくれて…ありがとう……」
「お兄様っ…お兄様ぁ…」