#01 記憶喪失
俺の名前は天月空。3年前に幻想入りした男だ。
「ふわぁ…おはよう霊夢…」
「おはよう。随分遅いわね」
この巫女さんは博麗霊夢。俺が居候させてもらっている人だ。
「ここ最近異変起こらなくて暇だな。ま、起こらない方がいいけどさ」
「そう言えばそうね。かなり長い間異変が起こってない気がするわ」
「相変わらず霊夢の神社には人は来ないし」
「うるさいわね!追い出すわよ?」
「ご、ごめんなさい」
と、当たり障りのない会話をする。
「そうだ、あんたこれ買ってきてくれない?」
と、霊夢からメモのようなものを渡される。
「ええっと……なになに…」
俺はそれを読み上げる。
「りょーかい。と、その前に朝ごはんだな」
「えぇ、もう出来てるから食べていいわよ」
「まじか!さすが霊夢!」
「褒められるのは……悪い気はしないわね…」
全く、この人はツンデレなんだから。
「いただきます」
俺たちはご飯を食べ進める。
「ん、これ美味いな」
「でしょ?頑張って作ったのよ」
「へぇー…霊夢に頑張るって言葉があったんだな」
「隙あらばバカにして…ま、いいわ。早く食べなさい」
「わかったよ」
そして俺たちは食べ終わる
「ご馳走様」
「お粗末さま。じゃあ片しておくから買ってきてね」
「りょ」
俺は神社から出て人里に向かう。
「やぁ、いらっしゃい。ここは品揃えがいいからなんでもあると思うよ」
「いつも助かるよ」
「助かってるのはこっちの方だよ。兄ちゃんが異変やら解決してくれたおかげで人里は無事なんだから」
「役に立ててるのなら良かったよ」
「それじゃ…これを頼めるか?」
俺はメモを見せる。
「おぉ、ちょっと待ってておくれ。」
と言われたので俺はしばらく待った。
「これだね。合計で1840円だよ」
「じゃあ2000円で」
「はいよ、160円のお釣りだね。」
俺はお釣りを受け取る。
「いつもありがとうね」
「いえいえ、それじゃ!」
と、俺は人里を出ようとした。その時……
「………っ…!?」
急に頭が痛くなった。なんだかすごく嫌な予感がした。
「いや…まさか…な…」
俺はその重い足を動かしながら神社へ向かう。
いつも見なれた階段。だけど、なにか違和感があった。
「……っ…なんで違和感なんか……」
そう思いつつも俺はその階段を登る。
いつにも増して長く感じた。ようやく階段が終わろうとしていた。けど、何故か霊夢は掃除をしていた。
(あれ…掃除は俺の仕事のはずじゃ……)
そう。居候する代わりに掃除やらを任されていたのだ。なのに霊夢は1人で掃除している。
「…………」
階段を登りきる勇気が出なかった。いつもはちゃんと登り切れるのに。
(なんで…動かないんだ…?)
怖いのか?怯えてるのか?
そんな疑問が俺の頭の中で交差する。
「っ………」
ようやく足が動いた。
「れ…霊夢…?戻ったぞ…?」
と、霊夢に話しかけるが返事は無い。
「霊夢…?」
「あなた…誰かしら…?」
…………………は?
何を言ってるんだ。そんな茶番は辞めてくれよ。
「れ…霊夢…流石にその冗談は…」
「冗談…?私が冗談を言う人に見えるかしら?」
「……………」
何も、言い返せなかった。その通りだったからだ。
ならば何故…俺の事を……
もう訳が分からなくなった。だって、1時間前は俺と食事をしていたのだ。それなのに、なんで……
「れ…霊夢…俺何か悪いことでもしたか?悪いことしたなら教えてくれよ…謝るからさ…」
「悪いこと?強いて言えば今あなたがそこにいることかしら、目障りなのよね。早く消えてちょうだい」
こんなに心臓の鼓動が早くなるのは初めてだ。息が出来なくなりそうだ。
「は…はは…なんだよ…そんなに俺が邪魔だったのかよ……」
と、買ってきたものを地面に叩きつける。
俺は元々メンタルが弱いのだ。だからこんな言葉を言われると死にたくなる。
「邪魔ならなんで居候させたんだよっ!捨てればよかったじゃないか!」
「居候…?私があんたみたいなのを居候させるわけないでしょ。」
あぁ……だめだ…どんどんと頭の中で何かが崩れていくのを感じる。冷静に判断が出来なくなる。もしここで冷静になっていれば……。
「っ……そうかよ…」
俺は階段を走って去ってゆく。
「……そうだ…紅魔館…紅魔館なら…!」
俺は全速力で紅魔館に向かった。
「はぁ…はぁ…」
紅魔館に着いた。美鈴は居ないみたいだ。
「………」
俺は紅魔館の前に行く。だけど、ここでも嫌な予感がした。そんなはずは無い。あってはならない。
「れ…レミリアっ…咲夜…!」
俺は紅魔館に入りそう叫んだ。
だけど…返事は帰ってこなかった。
「嘘…だよな…嘘だと言ってくれ…」
俺がそう思っていると、咲夜の姿が見えた。
「さ…咲夜…」
と、俺が近づこうとした時。
「あなた誰かしら?汚らわしい虫が私を触らないで貰えます?」
「…………っ」
結局…こうなるのかよ。
「あ、お嬢様」
「咲夜じゃない…それと…そこの"人間"は?」
その言葉で、全てを察してしまう。
「さぁ…わかりません」
「ただの人間が簡単に侵入できるとは思えないが…」
俺は逃げるように紅魔館を後にする。
「なんだったんでしょう。」
「まぁいい…我が"マスター"の計画は順調に進んでいる」