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恐竜たちのハロウィンパーティー

作者: 雅樂川凪音

昔々、大昔。

「ハロウィンパーティーっていう楽しいイベントがあるらしいね」

スピノサウルスが言いました。

「ああ、人間たちがお菓子をもらっているらしいな。うらやましいぞ」

ティラノサウルスが答えました

「仮装もするらしいよ。僕は肉食恐竜になりたいなあ」

トリケラトプスが角を揺らしながら言いました

「お化けが出るという噂も聞いているよ。私は怖いなあ」

マイアサウラが体をぶるぶるふるわせながら言いました

「なあに、お化けが出たらやっつけてやるよ」

そう言ったのは体が大きくて首の長いブラキオサウルスです。

こうして恐竜たちはハロウィンパーティーを開くことにしました。


「ハロウィンパーティーには何が必要なんだ?」

ティラノサウルスが尋ねました。

「お菓子が必要だよ!」

トリケラトプスが答えました

「唐揚げも必要だね!」

とスピノサウルスが言いました

「僕たちは体が大きいからたくさん必要だ!」

ブラキオサウルスが言いました。

「じゃあ、作りましょうよ」

マイアサウラが答えました


そこで恐竜たちはお菓子作りと唐揚げ作りをすることにしました

「私はチョコレートを作るよ」

そうマイアサウラが言いました

でも、作っているそばから、味見と言ってちょこちょことティラノサウルスがつまみ食いするので、チョコレートはすっかりなくなってしまいました。

「ぼくはパーティー用の唐揚げを作るよ」

と、ブラキオサウルスがいいました。

でも、「唐揚げ用に鶏肉を取ってきて」と頼まれたスピノサウルスは魚ばっかり取ってきたので、唐揚げができませんでした。

恐竜たちは、ハロウィンパーティーの準備ができなくて困ってしまいました。


そこにかぼちゃのお化けが乗っている荷馬車が通りかかりました。

荷台にはたくさんのお菓子や食べ物を積まれています。

「あの荷馬車を襲ってお菓子や食べ物を手に入れたら手っ取り早いんじゃないか?」

ティラノサウルスが物騒なことを言いました。

「いやいや、そういうことをしてはいけないよ」

ブラキオサウルスが諭しました

「それに、お化けは怖いし」

マイアサウラががたがた震えながら言いました

「怖くなければ襲っていいわけじゃないからね」

トリケラトプスが常識的なことを言いました

「そうだよ、ちゃんとお金を払って買おうよ」

ブラキオサウルスがいいました

「えー、でも、お年玉なんて残ってないよー」

スピノサウルスが泣きそうな声で言いました。

1月にもらったお年玉でおもちゃを買ってしまったので、10月のハロウィンにはお年玉が全然残っていなかったのです。

「だから大事に使おうねって言ったじゃない」

マイアサウラがいいました。

でも、このままではお菓子も食べ物も買えません。

これではハロウィンパーティーができません。

恐竜たちは困ってしまいました。


指をくわえて荷馬車が通り過ぎるのをみていると、荷馬車がバランスを崩して倒れてしまいました。あまりにたくさんのお菓子や食べ物を積んでいたからです。

「うわあ、大変だ、助けてあげよう」

スピノサウルスが叫んで、荷馬車の方へ走っていきました

倒れているかぼちゃのお化けをマイアサウラが助け起こしてあげました

倒れている荷馬車をティラノサウルスがつかんでひっぱりましたが、なかなか起き上がりません

トリケラトプスが荷馬車の隙間に角を突っ込んで下から押し上げました

そして、荷馬車の反対側からブラキオサウルスが押して、やっと荷馬車を起こすことができました

スピノサウルスが散らばっているお菓子や食べ物を集めるのを手伝いました


「ああ、皆さん、おかげで助かりました」

やっと荷馬車が元に戻ってからかぼちゃのお化けが言いました

「いろんなお家のハロウィンパーティーに行って、お化けとして盛り上げて、お礼にお菓子や食べ物をもらったんですが、持ちきれなくって、馬車にも積みきれなくって、積載量を超えてしまって過積載になって困っていたんですよ。急いで明日のパーティー会場に行かないといけないのに、荷馬車が倒れちゃって困ってたんです。どうせ一人では食べきれないし、皆さん、もらってくれませんか?」

それを聞いて、恐竜たちは顔を見合わせました

「それなら今晩、僕たちの家で一緒にハロウィンパーティーをしませんか?」

こうして、5匹の恐竜とかぼちゃのお化けは恐竜たちの家でハロウィンパーティーをすることになりました。


「私の特製のお菓子を食べるとなりたいものに仮装することができますよ」

かぼちゃのお化けがそういって、恐竜たちに小さなチョコレートを配りました

チョコレートの包み紙にはかぼちゃのお化けの絵の描いてあるカードがついていました

みんなは喜んでチョコレートを食べました

すると、みるみるうちに恐竜たちの姿が変わっていきました

「僕は肉食恐竜だぞー」

そういって大きな声で吠えたのはトリケラトプスです。いつもは4本足なのに、2本足で立ち上がっています。

「俺様は空を飛べるようになったぞ!」

そういって羽ばたいたのは翼竜に仮装したティラノサウルスです。

「ちっちゃくなってみたかったんだよね」

そう言って、低い木になっている野イチゴを食べているのはコンプソグナトゥスに仮装したブラキオサウルスです。

「爪を伸ばしてみたかったんだよね。子育てしてると長い爪が邪魔だからいつもは短くしているんだけど、たまには長くしてみたくって」

そう言ったのはテリジノサウルスに仮装したマイアサウラです

「僕は、お化けだぞー」

一匹だけ違うものになったのは、かぼちゃのお化けに仮装したスピノサウルスでした。お化けなのでふわふわと浮かんでいます。

そうして、お菓子や唐揚げを食べて、ジュースを飲んで楽しくパーティーをして、恐竜たちはいつの間にか疲れて寝てしまいました。


スピノサウルスが気が付くと、辺りはすっかり明るくなって、朝になっていました。

そして、自分たちの姿を見ると、仮装が解けて元の姿に戻っていました。

かぼちゃのお化けも、もう出かけてしまったようで姿は見えませんでした。

「せっかく空を飛べたのに、また地上でのそのそ歩かなきゃいけなくなっちゃったぜ」

そう言って、ティラノサウルスが起きてきました。もう翼はありません。

「低いところになる実をもっと食べたかったな」

そう言ったのはブラキオサウルスです。元通り、大きな体に長い首の姿に戻っています。

「でも、僕はやっぱり植物の方がいいかな」

もごもごと草を食べながら言ったのはトリケラトプスです。

「爪が長いと邪魔は邪魔だしね」

と、短くなった爪を触りながらマイアサウラが言いました

「まあ、空にはあまり美味しい獲物はいないしな」

とティラノサウルス

「背が低いと、高い木の上の葉っぱが食べられないしね」

ブラキオサウルスも頷きながら言いました

「ありのままが、やっぱりいいってことなのかな」

スピノサウルスはそう言いましたが、もうかぼちゃのお化けに会えなくて、お化けの仮装でふわふわ浮かぶことができないのがちょっと寂しく感じるのでした。


ふとスピノサウルスがパーティーの残りのお菓子や食べ物の置かれたテーブルを見ると、

かぼちゃのお化けのメッセージカードが残っていました

そこには「助けてくれてありがとう、また一緒にパーティーしようね」と書かれていました。

仮装は解けてしまっていたけれど、スピノサウルスは嬉しくてちょっと気持ちが軽くなって、またふわふわ浮かんでしまいそうな気分になりました。

「気持ちが変わると、仮装なんてなくてもいいんだね」

スピノサウルスがそう言うと、みんなも頷きました


おしまい

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― 新着の感想 ―
偶にはそういう気分転換みたいなことがあっても良いですよねー。
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