生贄は悪魔を呼ぶ
とある小学校の裏庭で、小学生達が数名集まっていた。
「なぁ、健二知ってるか? 生贄を捧げると悪魔を召喚出来るんだって!!」
「何だよ突然…何の漫画を読んだんだよ?」
「ヘヘっ、コレだよ!!」
雄太が自慢気に見せてきたのは、『悪魔大辞典』という黒くて分厚い本だった。俺はその本を捲ってみると、悍ましい笑顔をした悪魔が描かれていた。
「面白いんだぜ、悪魔によって違うんだけどさ。魔法陣描いて、生贄を捧げると悍ましい悪魔が出てくるんだって!! なぁなぁ、やってみたくねぇか!?」
雄太の言葉に、周りの友達は様々な反応をした。面白そうにしたり、馬鹿らしいと呆れていたり。俺は正直、悪魔を信じてはいないけれど面白いなとは思っていた。
「ふ〜ん…面白そうじゃん。ならさ、生贄はコイツでやってみる?」
俺はそう言って、俺の下で倒れているクラスメイト、武を見た。
「ゴミ武? いいねぇ〜、生贄にピッタリだな!」
「こいつなら死んでも問題ないしな!」
「えぇ〜、ちょっと可哀想じゃねぇか…ププッ。」
武は傷だらけで、怯えたように俺達を見上げている。
「…何見てんだよ、ゴミ武の分際で!」
「ガハッ! …ご、ごめんなさい。」
俺が蹴りを入れると、武はすぐに謝ってきた。武はいつもオドオドしていて、見ていてイライラした。そんな奴だから虐められる。
「…うわ、もうこんな時間だ。皆、そろそろ帰ろうぜ!!」
日が暮れてきたのに気が付き、各々が帰る準備をし始めた。俺も支度をすると、友達と一緒に帰り始めた。勿論、武に構うやつなんていなかった。
◇◆◇
ここは…何処だ? 目を覚ますと見知らぬ場所に居た。何処かの廃墟の中みたいだ。
「…んむぅっ!?」
手足を動かそうとすると、何かに引張られて動けない…そして、口は紐か何かを咥えさせられている形で塞がれていた。俺は今、椅子に座った状態で縛られていた…。
「…気がついた?」
どう考えても普通じゃない状況に困惑していると、誰かの声が聞こえた。声のした方角に首を向けると、フードを被った男がいた。
「…久しぶり、僕が誰だか分かるかな? 健二くん。」
俺の名前を知っている…一体誰だ? 考えていると、そいつはフードを取って顔を見せてきた。
「あぁ…それじゃあ喋れないよね。外してあげるよ。」
「ぷはぁっ! …い、一体誰なんだよお前はっ!! 何でこんな真似を…!」
「…顔見ても分からないか…武だよ。小学校のクラスメイトだった。」
「た…武?」
俺は今、20歳の大学生だった。武は小学校を卒業と同時に何処かに引っ越してしまった。
「そうだよ。本当に久しぶりだね。変わってないなぁ〜、健二くんは。」
「お、お前! 何のつもりなんだよ、ここは何処なんだ! 早く俺を開放しろ!!」
何のつもりかは分からないが、相手が武なら怖がる必要なんて無い。俺は武を怒鳴りつけた。
「嫌だよ…それよりさ、せっかく皆が揃ったんだからもっと再会を楽しまないの?」
「はぁ? …うわぁっ、!」
武は座る俺を椅子ごと蹴り飛ばしてきた。衝撃と痛みが同時に襲いかかる。
「痛っ…てめぇ……………えっ?」
後ろ向きに倒れた俺は上を見るように後方を見ると、そこには何人か倒れているのが見えた。
「そのままじゃ見えにくいよね。」
武は俺にまたケリを食らわした後、その光景が見えるように再び俺を起こした。
眼の前に広がる光景は、赤黒くて大きな魔法陣のようなものが床に描かれていて、魔法陣の上に8人の人間が……無惨な姿で倒れていた。
「う、うわぁぁぁぁっ!!!」
腕や足が変な方向に曲がっていたり、内臓が出ていたり……とても見ていられなかった。
「健二くん、僕ならまだ分かるけど、雄太くん達の事も分からないの?」
「…はっ?」
武の言葉に、嫌な汗が流れてきた。何を、言っているんだ?
「…かつて、僕を虐めた皆を集めたんだよ。よく見なよ…まぁ、もう他の皆は殺しちゃったけどね。」
「あ……な…お、お前っ…!」
虐められた事への復讐…その為にこんな事を…なら、次は………。
「…や、やめてくれっ…頼む、赦してくれぇ!!!」
「…健二くん、昔雄太くんが言ってた事覚えてるかい? “生贄を捧げると悪魔を召喚出来る”って話。ねぇ、試してみようよ…。」
武は俺を引きずり、魔法陣のようなものの中央まで移動させた。
「…ナイフで刺したり、窒息させたり、色々してみたけど…最後はやっぱり火炙りにしようと思ったんだ。」
「や、やめてくれぇ〜〜!! 誰か助けてぇ〜!!!」
泣き叫ぶ俺の眼の前に、武はライターと、何かの液体が入った瓶をチラつかせた…恐らく、燃えやすくする何かだろう。
「…悪魔、本当に出てくると思う?」
そう言って笑う武の顔は、あの本に描かれていた………みたいで。
武は瓶の中身を、俺にかけ始めた。
よくあるオチですが、唐突に書いてみたくて書きました。人間って怖いですよね。生贄にされた人間の恨みは恐ろしいです。