プロローグ
ピヴォが落としたボールを拾った右アラが、45度の角度でペナルティーエリアに侵入してきた。
おれは左手でゴールポストの位置を確認。2歩前進して姿勢を低くし、ブロックの体勢を作った。
「逆か?」
反射的に、長くもない右足がボールに向かって一直線に伸びる。かろうじて親指の付け根あたりでボールを弾く。
「しまった。弱い!」
クリアーが中途半端になってしまった。案の定、ペナルティーエリアの内側で敵左アラがボールを抑え、すばやくゴール左隅に蹴り込んだ。
おれはコートに倒れたまま、ボールがネットを揺らすのを見ているしかなかった。
キックオフは、ピヴォの虎太郎君からフィクソの健吾君を経由して、右アラの太一君へ。
太一君がドリブルで1人かわしたが、素早くカバーに入った敵フィクソがボールを奪い、ツータッチで前方の左アラへ。
左アラがゴール右隅に蹴り込んだボールを、おれはポストぎりぎりのところで太ももに当て、ゴールラインの外に押し出した。
「コーナーキック」
おれはゴールポスト付近。壁2枚。壁の向こう側を抜けたボールを、ゴール正面で敵ピヴォがノートラップで転がす。股の間を抜かれて前半4失点目。あっという間に逆転を許してしまった。
「まだだ。あきらめるのはまだ早いぞ。」
おれは自分に言い聞かせるように、そう叫んだ。せっかくここまで頑張ってきたんだ。こんなところで負けるわけにはいかない。