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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第296話 結局、俺次第ってわけ

 勇姫先生の性格分析らしき質問が終わり、俺達はショッピングモールへ辿り着いていた。

 店内に入れば、すぐに一階のショッピングコーナーに向かい、そこで品をチェック。


 バレンタインの日と同様に、ホワイトデーフェアとして賑わっている。

 そのおかげで探す手間は省けるが、改めてイベントを意識すると既製品の気合の入りようって凄いな。


 ぶっちゃけ、下手に作るぐらいなら既製品にした方がいいまである。

 もちろん、手作りうんぬんは気持ちの問題が大きいけど、既製品を渡すからってお返しが雑って思われるのか......さすがに思われるかぁ。


「正直、別に既製品とかでも良いと思うけどね」


 そんなことを思っていると、俺が思考していた答えを示すように勇姫先生が答える。

 その言葉にサッと顔を向ければ、勇姫先生は依然棚に陳列するお菓子を見ながら、


「そもそもバレンタインでお返し狙いってのは.....正直、いないとは思わないけど、案外少ないものよ」


「そうなのか? うちのクラスでは見かけなかったけど、他のクラスでは餅まきみたいな感じでチョコを恵まれない男達に配ってたそうだけど」


「恵まれないって言い方、あんたが言うとちょっと鼻につくわね。

 ともあれ、そういうのはクラスでの好感度維持のためか、本当に良かれと思ってるおバカだけよ」


「そこまで言うか」


「だって、考えて見なさいよ。

 これまで一度か、挙句は一回も話したことない相手にお返しが来ると見込んで渡すと思う?

 そんな確証もないのに、割りに合わないことのために散財なんてするわけないじゃん」


「だったら、はなから達成目的が違うってことか」


「そ。だから、そんなことをやるのは自分のためか、本当に何も考えてないかどちらかなのよ。

 それに、バレンタインで渡すチョコってのは、渡して気持ちを届けることが目的なの。

 簡単に言えば、自己満足の延長線上でしかないの」


 と言うのが、勇姫先生からのお言葉だ。

 もちろん、それは彼女の主観的な話であり、全部に当てはまるとは思わない。

 しかし、自己満足の延長線上と言われると、俺は少し納得してしまった。


 俺自身、今こうして悩んでいるのは、あの四人が渡してくれた気持ちのお返しがしたいからだ。

 チョコや品をくれたからじゃない。渡そうと思ってくれた気持ちに応えたい。


 そう考えると、俺も自己満足であのイベントを乗りこなしたいのかも。

 とはいえ――、


「いくら貰えることを期待していないとはいえ、手作りを既製品で返すのはなぁ。

 物で受け取ってしまった先輩には、さすがに物で返すしかないと思うけど」


「それも結局あんたの自己満足よ。手作りにするなら手作りにすればいい。

 もしくは、お菓子に拘らず、デート一回分で消費するとかね。

 ......ふむ、変に考えるよりはよっぽどそっちの方がいいかもね」


 デート、デートねぇ......悪い考えじゃないけど、


「あんまり他とそういうことやってても心象悪くね?」


「今更、何言ってんのよ。あんた達の関係性を知ってる私達からすれば、もう十分に悪いわよ。

 とはいえ、別に付き合ってない状態で()()として遊びに行く分ならいいんじゃない?」


「なんか母さんと同じこと言われた気がするわ」


 確か、前に母さんに話した時も、婚活でそういったことはあると言っていたな。

 実際にデートしてみてそれで互いの相性を確かめるとか、そんな感じのこと。


「ともかく、それをどうするかはあんた自身が決めなさい。

 まだ時間はあるわけだし、聞いてみるってのも悪い手じゃない。

 相手から変なものを渡されるよりはよっぽどマシだからね」


「なるほど」


「今の私に出来るのは、あんたが手作りであれ既製品であれお菓子を選ぶとなった際に、お菓子選びを間違えないようにすること」


「お菓子選びで間違えるってあるのか?」


 正直、お菓子そのものを苦手とする人は少ない気がする。

 カロリーとかを気にして食べない人は、勇姫先生みたいにあくまで太りたくないって理由だろうし。


 しかし、その考えとは違うと言わんばかりに、勇姫先生は棚の奥の方へ移動しながら答えてくれた。


「その様子じゃあんたは知らないようね。

 一応だけど、ホワイトデーにお返しするお菓子や品物にも意味が存在するのよ」


「マジか」


「だから、念のために意識しておきなさい」


「了解です」


 ということで、そこからは勇姫先生のレクチャーのもと適当な商品をピックアップした。

 彼女のアドバイス通り、即決ということはせず、ひとまず四人の意見を聞いてみることに。


 ともあれ、そんな時間を過ごして入れば、午前中はあっという間に潰れ、時刻はお昼時に。

 感謝も兼ねて何かお昼を奢ろうとしたが、彼女には「NO」と言われてしまったので、その場で解散の運びになった。


 一人で適当にお昼を過ごしたはいいものの、午後はどうするか。

 一応の予定は済んでしまったので、手持無沙汰になってしまったのが正直な感想。


「......いや、まだ俺がやるべきことはあるか」


 そう、俺にはまだやるべきことがある。

 それは彼女達の意見を聞くということだ。

 お返しは気持ちが籠っていればいいとよく聞くが、その気持ちも一人よがりは良くない気がする。


 どうせなら、相手が好ましいと思うものをお返ししたいと思うのが、貰った者としての意見だ。

 というわけで――、


―――プルルルル♪


――1人目 久川玲子――


『もしもし? 拓海君?』


「あ、もしもし玲子さん。突然、電話してごめん」


『大丈夫よ。どうしたの?』


「玲子さんって普段お菓子とか食べるっけとか思って。

 というのもさ、普段色々と世話になってるのに何もお返ししてないことに気付いて。

 まぁ、お菓子なんかで釣り合うのかってレベルではあるんだけど」


『......なるほど。それなら、別に何でもいいわ。

 いえ、言い方を間違えたわ。拓海君のであれば何でもいい。

 きっと私にとっては大切な思い出になるだろうから』


「え、それでいいの?」


『それで構わないわ。お返し、楽しみにしてる』


「あ、切れちゃった。ふむ、玲子さんは何でもいいと。よし、次」


――2人目 元気唯華――


『もしもし、どったの? そっちから連絡してくるなんて珍しいじゃん。それも電話なんてさ』


「それは『かくかくしかじか』で」


『――なるほど、なるほど。

 にしても、わたしが拓ちゃんを世話したことあったっけな?

 むしろ、こっちの都合に巻き込んでる気しかしないけど』


「俺がそう思ってるだけだから気にしなくていいよ。

 それで、ゲンキングは何か『これ、欲しい』ってのある?」


『あるっちゃあるけど、それゲームソフトの話だしな。

 物理的な品となれば.....う~む、何でもいいや。拓ちゃんのものなら』


「ゲンキングもそういう感じか」


『も?』


「いや、こっちのこと。ありがとう、わかった」


――3人目 東大寺琴波――


『あれ、拓海君どげんしたと?......じゃなかった、どうしたの?」


「ごめん、突然電話して。実は『かくかくしかじか』といった話で――」


『なるほど、『まるまるうまうま』といったことね。

 ふ~む、これって......そういうこと? いや、考えすぎって可能性も』


「琴波さん?」


『あ、ごめんね! お返しって話だったよね!

 うちは何でもいいかな。きっと拓海君から貰えたものなら何でも嬉しいし。

 それに、何が貰えるかわからない方が楽しみが増える気もするから』


「なるほど。でも、本当に何でもいいの?」


『うん。別にこれまでお返しが欲しいから行動してたわけじゃないし』


「そっか、わかった。ありがとう、話聞いてくれて」


『いえいえ~』


――4人目 白樺永久――


『珍しいわね、あなたから電話を寄越すなんて。

 いや、珍しい以上に初めてなんじゃないかしら』


「考えれ見れば、先輩からかかってくるのが全てでしたね」


『......切るわよ』


「あぁ、すみません! そういうことを言いたかったわけじゃなくてですね!

 実は『かくかくしかじか』って話で!」


『お返し? あなたも殊勝な考えを持って.....あぁ、なるほど。そういうことね』


「勝手に分かれられても困るんですけど。

 え、こっちの狙いの意図がわかったんですか?」


『いえ、さすがにわからないわよ。大抵わかる時は、あなたの表情や仕草を見てるから。

 だからそうね、あなたがワタシに良いと思うものを献上しなさい』


「それって単に何でもいいって話じゃ......」


『そうとも言うわね。でも、お返しってのは本来相手のことを考え、その考え尽くした先に辿り着いた物を送るのが普通よ。

 だとすれば、相手の好みを聞くのも悪く無いけれど、それはまだ悩み尽くせてない証。

 簡単に言えば、手抜き。だから、悩んだ末に思い付いた物をワタシに渡して』


「......なるほど、わかりました」


『期待してるわ』


 ......全員との電話が終わった。

 総評すれば、全員「なんでもいい」とのこと。

 ふぅ、一番困るパターンのやつだこれ。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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お返しは僕です!って行け笑
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