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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第244話 クリスマス会の夜#5

 引き続き、目の前で行われるツイスターゲーム。

 俺のよく知る女子がくんずほぐれつ状態で、己の意地とプライドを賭けて戦っている。

 もはやキャットファイト......は言い過ぎだけど、似たようなものだろこれ。


「ほれ、拓海。次の久川の番のルーレットを回してやれ」


「あ、うす」


 隼人に言われるがままに、ルーレット係の俺は玲子さんのルーレットを回していく。


 適当な力加減で回したそれは、グルグルと針を回していき、時間経過で減速しやがて止まる。

 その止まった色と部位を確認した俺は、玲子さんに向かって指示を出した。


「玲子さん、次は左足の赤色」


「左足の赤色!?」


 俺が玲子さんに呼び掛ければ、普段の彼女からは想像もつかない素っ頓狂な声が聞こえた。

 どうやらこのゲームに関しては、さしもの玲子さんでも余裕がないらしい。

 そして、玲子さんが無理やり足を動かそうとすれば、それに連動して苦しむ三人。


「痛たたたた! もう少し体を沈ませなさいよ!」


「そんなこと言われても、それだと唯華の足が当たって......それに琴波が邪魔」


「邪魔って言われても、そこしか手が伸ばせる場所が無かったんです......」


「拓ちゃん、早く.......足の位置を変えて.....どこでもいいから」


 四人からは怒りとも呪詛とも恥辱とも取れる言葉が聞こえてくる。

 そんな光景を見る俺は、最初こそ見てもいいものかわからない光景にドギマギしていたが、今やその痛々しい光景に悲しみの方が増さってる気がする。


 そりゃまぁ、同年代の女子のあられもない姿に思春期の体が反応しないわけではない。

 がしかしだ、やはりそういうので大事なのはシチュエーションであろう。


 今回、俺は目の前の光景でそれを深く学んだ気がした。

 エロよりも面白さや悲しさが勝ってしまったら、もはや共感性羞恥で見るのも辛い。


 その後、俺は記憶も曖昧なままにルーレット係を続けた。

 それからどのくらいたっただろうか、最初にゲンキングが脱落した。


 敗因はいつまで経っても開脚姿勢が解除されることがなかったこと。

 その恥ずかしさに耐えられなかったらしい。それに関してはすまぬ。


 次に脱落したのは、琴波さんであった。

 敗因で言えば、手を滑らせたことであろうか。

 片腕を伸ばした以外は、基本腕立て伏せみたいな姿勢で体勢的には問題なかったようだ。


 とはいえ、如何せん文系の体にはそれすらもきつかったようだ。

 その結果、体の近くにあった腕を伸ばす際、バランスを崩して転倒した。


 その二人がいなくなってから、しばらく四つん這いの玲子さんと、逆四つん這いの永久先輩の戦いが続いた。


 二人の体勢は互いの体の一部が接触している感じで、どちらかが体の一部を動かせば、それだけで有利にも不利にもなる。


 しかし、二人とも手足を上手く入れ替え、互いの体に体重を分散させるような姿勢を作り、その結果膠着状態が続いた。


 それに飽きていたのが、うちの総大将こと隼人さんだ。

 大将はゲンキングと琴波さんが脱落した辺りで、もう若干飽き始めており、そして膠着状態でついに飽きた。


 その結果、起きたのは互いの二部位を同時に動かし色に触れさせること。

 膠着状態を打破するのが目的とは言え、かなり無茶なルール変更だ。


 例えば両手や両足、もしくは右半身や左半身、そのいずれかで色指定が出た場合、その部位を同時に動かすのだから。

 その無茶を二人は精一杯頑張って答えようとしたが、ついに先輩が力尽きて脱落した。


「勝者、久川!」


 隼人がそう言うと、床に寝そべるゲンキング、琴波、先輩をよそに、玲子さんは一人あぐらをかいたまま拳を突き上げた。


 その姿はまるでバトルロワイアルでただ一人勝ち残った勝者のようで。

 なんせ玲子さんの目には、未だ勝利したものの闘争心の余韻が残っているボクサーのような熱があるし。


 俺の「一体何を見せられているんだ?」という状況はこれにて終了した。

 ついでに、俺の一日デート券という権利も勝者の玲子さんに譲渡された。

 それからしばしの休憩後、隼人による最後の催しが行われる。


「それじゃ、最後はプレゼント交換会だ。各々用意したプレゼントがあるだろう。

 そして、それはさっきの休憩中に一人ずつメイドに渡したはずだ。

 で、それら全部のプレゼントがこれだ」


 隼人の言う通り、戦いを終えた女子四人が休憩中の間に、俺達は一人ずつ別室に入りプレゼント渡した。

 その目的は、各々どのプレゼントを持ち寄ったかわからないようにするためらしい。


 そして現在、隼人の呼び出しにより、大きなカートのようなものに全員分のプレゼントを乗せたものがメイドさんによって運ばれてきた。

 さらに、別のメイドさんからはビンゴカードが配られた。


「今からやってもらうのは単純なビンゴゲーム。

 そして、勝者は好きなプレゼント一つ選ぶという最高に公平なゲームだ。

 当然ながら、プレゼントに関しては俺は知らない。

 俺がしたのはただ適当に順番をつけただけだ」


 そう言うと、いつの間にか執事さんによって運ばれた五位までの順位付けがされている階段が置いてある。

 そこにたメイドさんが、プレゼントを一つ取ってはその階段に並べた。


 それを見ながら、俺は思ったね――おっと、愉悦部のお通りだぞ、と。

 隼人のやろうとしているのは単純で、プレゼント選びにガチになる顔を見たいのだ。


 例えば、一位のプレゼントが隼人のものだとして、勇姫先輩がそれに目星をつけたとする。

 となれば、一位でビンゴすればお目当てのものを手に入れられるが、運試しはそう甘くない。


 誰かが一位になれば、その都度一位が選ばれるかどうかにドキドキしなければいけない。


 そして、狙っていたものが誰かに取られればそれはそれで凹む。

 だけど、まだそれが隼人のものかどうか決まったかわからないから希望を持ち続ける。


 そんな人間の醜い感情を見るのが好きなのだ、彼奴は。

 まっこと真性にひねくれた愉悦部である。


 そんな隼人に踊らされてるのが、椎名さんを除き、大地を追加した女性陣(プラス男一名)である。

 例の四人は言わずもがな、勇姫先生はもちろん隼人のプレゼント狙いで、柊さんは恐らく勇姫先生のもの狙いだろう。


 大地もたぶん琴波さんの狙い......じゃないかな?

 大地は文化祭で振られたとはいえ、普通に今も意識してる感じだし。

 うっ、そう考えると、この状況は大地にとって非常に酷だろうな。


 ごめん、なんか何も考えてやれなくて。

 俺は現在進行形でお前の優しさに甘えてる。

 だが待ってくれ、必ず答えを出すと約束するから!


「拓ちゃん拓ちゃん、一つ聞いていい?

 拓ちゃん的にはどのプレゼントが欲しいと思ってる?」


 そんなことを思っていると、ひょこひょこと隣にやってきたゲンキングがそ質問してきた。

 どのプレゼントが欲しい、か。

 まぁ、インパクトだけ見れば、五位のデカいやつだよな。


「俺は大きいやつかな。デカいぬいぐるみか、お菓子詰め合わせと見た」


「ふむふむ、なるほど。ちなみに、私は三位のオレンジ色の袋かな」


「アレは包装が凝ってるよね。結構いいものそう」


「そっか、五位と三位は違うか......」


 ......ん? あれ? 今、俺ってば誘導尋問させられた?

 そう思った瞬間、隼人の方から甲高い笛の音が響き渡る。


「元気、今のはイエローだ。次やれば、貴様のお目当てのものを没収する」


「ぐぬぬぬ......運営め、手が早い!」


 ゲンキングがすげーダーティなことしてきたんだが。

 そんなに俺のが欲しいのか?

 ちなみに、俺のプレゼントはランキング外だが。


「それじゃ、今からプレゼント交換会を始める。全員準備はいいか?」


 隼人の言葉に、全員が頷いた。

 それを見た隼人は執事に合図を出し、執事がビンゴマシーンを回し始めた。

 そして、俺は目の前で見ることになる――女性陣の熾烈な頭脳戦を。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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