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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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242/315

第242話 クリスマス会の夜#3

 宴もたけなわ......隼人がそう言ったタイミングで動き出した。

 そういや、ちょっとしたゲームをするとかなんとか言ってたな。

 何やるんだろ? そこそこの人数がいると思うんだけど。


「余興といっても単純なものだ。

 今からお前らにやってもらうのは、単純なババ抜き。

 それで順位を決めてもらう」


「順位? 最下位の人が罰ゲームとかじゃないのか?」


「もちろん、罰ゲームさ。ただし、順位に応じて罰の程度が変化するというだけの話。

 つまり、罰ゲームを軽いしたものにしたければ、高順位を目指せということだ。

 最下位で一人だけ罰するなんてのは、友達じゃねぇよな?」


 そう言って、隼人はニヤニヤした。

 もう顔が悪だくみしてますと完全に言ってるな。

 今度は一体何を企んでいるのか。

 とはいえ、今回は女性陣もいる以上、突拍子もないことはしないと思うが。


「安心しろ、これからやるのはちゃんと健全としたやつだ。

 んじゃ、男女それぞれ分かれてババ抜きを始める。

 順位が決まったら女どもはそこにいるメイドにいる指示に従え」


 隼人はテキパキと指示を出すと、近くにいた執事からトランプを受け取った。

 その動きに合わせ、俺達も均等に距離を作ると、テーブルの角を置き場にするように円を作る。


 するとその時、隼人はトランプをシャッフルしながら、このゲームに対して一つ提案を出した。


「そうだ、どうせなら俺達はジジ抜きにしないか?」


「ジジ抜きっつーと、ジョーカーがババとわかっているババ抜きとは違って、何がババ......ジジかわからないやつだよな?」


 大地がジジ抜きの内容を確かめると、隼人は慣れた手つきで玄人がやるタイプのシャッフルの仕方をしながら頷いた。


「あぁ、そうだ。どうせお前らのことだ。

 俺が有利になるようにイカサマしている可能性を疑ってることだろう。

 が、そうではないことを今この場で証明してやろうじゃないか」


「別に俺達、そこまでお前に対して捻くれた考えは持ってねぇよ」


「まぁ、油断ならねぇ奴であるとは常々思ってるが」


「それに時々何考えてるかわからないがな」


 おい、大地と空太! せっかく俺がフォローした言葉に対し、妙なこと言うんじゃないよ!

 もう少し歯に衣着せて言いなさい。だけど、気持ちはわかるから否定もできない。

 そんな俺達の言葉に対し、隼人は怒る気配もなく、むしろ笑って返答した。


「ふっ、言うじゃねぇか。だが、人生において刺激は欲しいだろ?

 人間、退屈が一番の敵だって言うしな。それを俺は提供してやってんだ。

 むしろ、感謝されてもいいぐらいだな。いや、感謝しろ」


 前言撤回! やっぱコイツ、ムカつくんだが!?

 いいぜ、このジジ抜きでお前よりも先に上がって煽りまくってやろうじゃないか!

 そして、隼人が手札を配り、受け取った手札からペアを除くと、ゲームはスタートした。


 じゃんけんの結果、隼人が勝ち、一番手隼人から俺、大地、空太と時計回りに回っていく。

 序盤、俺は手札が奇数枚だったこともあり、有利な状態でゲームを進められた。


 が、それも手札が残り二枚となったところで、途端にペアが作れなくなった。

 その一方で、隼人は俺からカードを引いてはどんどんペアを作り数を減らしていく。

 しまいには、偶数枚だった奴の手札は、あっという間に一枚に。


 くっ、なんということだ!

 こっちはあと一枚揃えば、隼人にカードを引いてもらってあがれるのに!

 それであがれたなら、奴に対して相当な煽りができるというのに!


「なんだ? えらく焦ってるようじゃねぇか。そんなに俺に上がられるのが嫌か?」


「......あぁ、嫌だね。たまにはお前にも俺達の下の景色を見るべきだな!」


「その割にはめっちゃ二枚のカードシャッフルしてるな」


 だって、この中に隼人のカードと同じカードがあったら嫌じゃん!

 いや、落ち着け。まだ俺の中に隼人と同じカードがあるかどうかはわからない。

 なんせ、これはジジ抜きなんだ。何がジジか分かったものじゃない。


 つまり、隼人も内心では焦ってるはずだ。

 いや、もっと言えば、俺が同じカードを持っていることを願っていてもおかしくない。

 故に、ここで勝負が終わるとは限ら――


「宣言するぜ。ここでのお前との勝負で俺は勝つ。

 そして、俺は一位でこのゲームを終わる」


「おいおい、随分と大きな口を叩くじゃねぇか。

 だが知ってんだぜ? 内心ビビってることは。

 いつまでも強がれると思うなよ!」


「ふっ、甘いな。俺が金城隼人として生まれいた以上、運命は全て俺の手のひらだ」


 そう言って隼人は俺に向かって手を伸ばす。

 そして、ありがちな相手の反応を見る駆け引きもせず、サッと右のカードを取った。

 まぁ、何がジジかわからない以上、最後の二人にならない限り無用な駆け引きだけど。


「......」


 隼人は引いたカードを自分のカードと並べてみた。

 その時、一瞬俺の目を見ては、目を閉じ大きく息を吐いた。

 ......おい、この反応はまさか――っ!?


「俺の勝ちだ」


 隼人がカード置き場にワンペアを置いた。

 皮肉にも揃えた数字は「K」。

 一位で上がってキングってか。クソオオオオォォォォ!!


「なんで、なんで俺は勝てねぇんだ......!」


 俺は床に四つん這いになり、全力で叫んだ。

 気分はさながら甲子園決勝戦で惜しくも負けてしまった高校球児の気分。

 あの隼人に......俺は運ですら勝てねぇっつーのかよ!


 そんなことを思っていると、隼人はおもむろに立ち上がり、俺のそばに寄った。

 そして真上から見下すと、そのまま顔を近づけて言った。


「ザッッッッマァ!!」


「うあああああぁぁぁぁ!」


「お前の魂胆は見え見えだ。どうせ俺の優位に立って煽ろうとしてたんだろ?

 そんな浅はかな考えて天運がお前に味方すると思うなよ? お前はずっと俺の下だ」


「クソがああああぁぁぁぁ!」


 そんなこんなの茶番もありつつ、二番目に空太があがり。

 その後、俺と大地の決勝戦になったわけだが、特に駆け引きもなく互いに直感でカードを引いていけば、俺が接戦を制して三番目、そして大地が四番目という結果になった。


 そして、隼人を除く俺達三人は執事に案内されて別室に移動。

 その際、その執事さんに隼人のことに関してめっちゃ感謝された。


 どうやらその方は幼い頃から隼人の面倒を見ていたらしく、隼人が変わったことに関して凄く嬉しかったようだ。


 そんでもって別室に入ると、そこは衣裳部屋であった。

 加えて、ご丁寧に仕切りがあり、そこに俺達はそれぞれ入ると、執事から渡された衣装を着ていく。

 その時、隣.....主に大地の方から「マジかよ、これ着るのかよ」と聞こえたのは気のせいか。


「では、一斉にどうぞ」


 全員の着替えが終われば、俺たちは一斉に仕切りの外へ。

 そして、俺は両サイドを見てみれば、そこにはサンタ空太と変態がいた。

 いや、厳密にいえば、大地はトナカイなのだが、衣装の短さが極端だ。


 上はノースリーブで短ランほどの短さしかなく、ズボンに限っては女性が履くような超ショートデニムパンツみたいな短さ。


 そこから筋骨隆々のたくましい手足が伸びているのだから気持ち悪い。

 もはや腹筋に至っては輝いてすら見える。

 あ、ちなみに、俺は小学生の学芸会みたいなクリスマスツリーだったよ。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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