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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第241話 クリスマス会の夜#2

「「「「「おおぉ~~~~!!!」」」」」


 隼人に豪邸の中へ招き入れてもらうと、玲子さんや永久先輩、それから柊さん以外の俺達若者は揃って庶民派のテンプレのような声をあげた。

 とはいえ、やはり誰だって豪邸の中を見ればそう感じるだろう。


 玄関に入り、目の前に広がる大きなエントランス。

 正面には二階へと続く横幅の広い階段があり、両サイドには数多くのドア。


 そして、そんな俺達をこの豪邸で働くメイドや執事が、両サイドに並んで出迎えてくれる。

 もう気分は異世界転生して貴族に生まれ変わった現代人だ。


 さっきの柵の敷居を跨いだところからすでに雰囲気が変わってたと思ったけど、ここに来るとより別世界に感じる。

 おぉ、豪華すぎてちょっと慣れねぇ。


「おい、どうした拓海? 随分と縮こまってんじゃねぇか」


 その時、隼人が突然俺の肩を組んでそんなことを言ってくる。

 コイツ、まさか俺が気後れしてるところを瞬時に察して近づいてきたのか?

 いや、するだろこんなん。置いてある花瓶とか誤って触って落としたら目も当てられんぞ。


「......なぁ、一つ確認していいか。あそこの階段の両端に置いてある花瓶っていくら?」


「あ? 何だ急に......確か右が500万で、左が380万だったか?」


「......お、オーケー。把握した」


 俺はもう極力なにも触りません! ドントタッチ!

 もう俺の気分はムンクの叫びのような感じになっている。

 こんなんで俺はクリスマス会を乗り切れるのだろうか。

 ......と思った矢先、隼人がそんな俺の気持ちを察したように言った。


「安心しろ、お前らに案内するのは別に大したものも置いてねぇリビングの方だ」


「あれ? パーティーホールとかでやるんじゃ......?」


「あれはもっとバカみたいに人を呼ぶ際に使うものだ。

 理由としては、コネクションを作るために多くの人を呼ぶためにな。

 お前ら程度の人数でそこを使うわけねぇだろ」


 とのことらしい。そこら辺にはなぜか妙なガッカリ感を感じた。

 まぁ、原因はわかり切っていて、先程から異世界感が抜けてないからだろうと思われる。

 だって、こんなとこに来たらそりゃもうねぇ?......想像だけやたら広がるよ。


「ほら、行くぞ」


 俺は隼人に肩を組まれたまま、リビングの方へ向かっていった。

 そこに入ると、当然俺が想像していたリビングのスペースではなく、小さな子供なら多少走り回れそうな広さがあった。

 この広さ、俺の家のLDKを全て合わせても余裕で大きいぞ。


「ん? このニオイ......」


 その時、部屋の広さに驚いていると、美味しそうなニオイが鼻の奥を突き抜けた。

 そのニオイに誘われるままに視線を移すと、凹型みたいなソファのすぐ近くのローテーブルに出来立てほやほやであろう料理が並んでいるではないか。


 もはやその料理は金銀財宝のような輝きを放っている。

 もちろん、それらは食器の光沢のせいなのかもしれないが、本当に輝いているのかもしれない。


 つーか、もうダメだ食べたい。

 ここまで食欲を掻き立てられるのはいつぶりだろうか。


「隼人、まだか。おで、食べたい」


「急に知能が低くなったな。だが待っとけ。すぐに始める」


 そう言うと、隼人は俺から離れ、全員がソファに座るように促した。

 その際、俺は安全面と空気感に配慮して、大地と空太の横に座ることに。


 すると案の定、一部から猛烈な視線が来たが、俺はそれに決して合わせなかった。

 すんません、それはここではキツいっす。


 その時、視界の両端で何かがブレてるような感じがし、ふと目線を向けてみる。

 すると、完全にブルっちまっている大地と空太の二人がいた。


 あぁ、二人がまるでスマホのバイブしているみたいになっしまった。

 なんと可哀そうに。だが、許してくれ。

 ここが一番俺にとって安置なのだ。

 そんな気持ちばかりの謝罪をしていると、隼人はしゃべり出した。


「ようお前ら、こんな日に集まってくれたこと素直に感謝しよう。

 正直、最初は全く開く予定なんざなかった。

 どうせ盛りのついたどこぞの(バカ)のための時間と思ってたからな」


 言い方。急に無差別攻撃し始めるじゃん。


「だがまぁ、そこに俺の姉こと成美が現れてな。

 日頃世話になってるから、たまには恩を返せ......ということで開く運びとなった。

 やることは食事と、ちょっとしたゲーム、それからプレゼント交換ってとこか。

 まぁ、程よく時間が経ったら始める。それまで食事を楽しんでろ」


 まぁ、確かに考えてみれば、このような企画を隼人がわざわざやるとは思えんよな。

 とはいえ、成美さんから一方的に実行に移した企画を隼人がちゃんと処理するとは。

 やっぱ随分と丸くなったみたいだな、隼人。


「それじゃ、飲み物を手に取れ」


 隼人がそう言うと、俺達はジュースの入ったグラスを手に取った。

 そして、隼人の音頭で食事が始まった。


「乾杯」


「「「「「かんぱーい!」」」」」


 俺は早速骨付きチキンに手を伸ばすと、素早く齧りつく。

 その瞬間、口の中に広がる香りの爆弾と、弾けるような肉汁。

 やっべぇ、これもう他のチキン食えなくなるんじゃないかってぐらい美味い。


 あ、こっちにパエリアがある。

 クリスマスにパエリア? とも思うが、もはや美味いければ何でも良し。

 そして、まるで大食い選手権のように食べ物をかけこんでいると、隣にいる大地が話しかけてきた。


「そういや拓海、11月末に随分な目に遭ったみたいなんだが、大丈夫か?」


「なんつー今更な話。もうそろ一か月経とうとしてる話だぞ?」


「いや、なんつーかさ。そん時に俺が力になってあげられなかったことが申し訳なくてよ。

 それに隼人と一緒に不良どもにボコられたって話だろ? なんか聞きにくくてよ」


「気持ちはわかるが、それでも今更かよって思うな」


 つーか、俺は別にボコられてなくね? ボコられかけたけど。

 そう思っていると、大地の隣に座った隼人がその言葉を一部否定した。


「いや、拓海はボコられてねぇよ。むしろ、上手くやり返してくれたぐらいだ。

 じゃなきゃ、今頃俺の顔は変形してたかもな」


「マジか! すげぇな、そんなこと出来たのか!?」


「いや、かじった程度の合気道でなんとか乗り切っただけだよ。

 でもそれ以前に、空太が状況を知らせてくれなかったら助けようがなかった。

 だから、そういう意味では空太が一番のファインプレーかな」


 そう言うと、空太は照れ臭そうに否定した。


「そこまで言われるようなことはしていない。

 とはいえ、そう言ってもらえると自分のしたことが正しかったように感じて嬉しいな」


「おいおい、俺がいない間になんかとんでもねぇ友情イベント進んでねぇか!?

 なんか俺一人だけが取り残されたような感じで辛いんだが!」


「ふっふっふ、仕方ない状況とはいえ、どうやら俺達はただの友達の枠を超えてしまったようだ。

 なんたって、こんな漫画にしか出てこなさそうな展開を乗り切ってしまったわけだからな」


「言うなれば、河川敷の漢と漢の殴り合いって感じだ。悪く思うなよ、大地」


「俺の場合はもともとお前より数段上にいたが、どうやらさらに開きが出来ちまったようだな」


「ぐぬぬ、お前ら好き勝手言ってくれるじゃねぇか!

 待ってろよ、すぐに追いついてやるからな!」


 俺、空太、隼人の言葉に大地は歯を食いしばって悔しそうな顔をした。

 しかし、心の底からは悔しがっていないようで、雰囲気からそう感じる。

 むしろ、全員が無事であることに改めて安堵しているような感じさえあった。


 その後しばらくの間、俺達は大地のウィンターカップ予選敗退の慰めをしつつ、他の話をしつつで男子だけの食事の時間を楽しんでいると、突然隼人が立ち上がった。

 何事かと様子を伺っていれば、隼人は全体から見える入りに立って言った。


「宴もたけなわ。それじゃ、そろそろ余興を始めようじゃないか」


 その時、隼人は確かに邪悪な笑みを浮かべた。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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