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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第211話 気になる存在

 おはようございます。今日は来なければ良かった土曜日ですね。

 外を見れば清々しいほどの快晴で、俺の目は一層恨みが強くなります。

 体調も万全です。強い体に生んでくれた親に感謝ですね。

 それでは今日も張り切っていきましょー......ハァ。


「寝起きに脳内でこの独り言とか......いよいよ極まってんな」


 全然寝れた気がしない。こんなにも不快眠はいつぶりか。

 あまりにも憂鬱すぎてこのまま布団から出たくない。


 なーんで俺はあの時あんな愚かな言葉を口走ったのか。

 でなければ、今頃東大寺さんとデートしていただろう。

 ......間違ってないのになんだろうな、このクズ男っぷり発言。


「ハァ.....約束は守らないとなぁ」


 山田と田山からの評価とか心底どうでもいい。

 どうでもいいが、こういう小さな綻びから俺の今の評価が総崩れするかもしれない。

 信用は一日にしてならず。こういう積み重ねが大事だ。

 それこそ約束を守るってのはその最たるものだろう。


 だからか、断る機会を失ってしまった現在。

 俺をゲームの主人公に例えれば、「イベントを開始しますか?」というテキストに対し、”はい”か”Yes"しか選択肢が無い。

 もっと言えば土曜日になった時点で強制イベントって感じか。


 俺はいつも通り顔を洗い、髪をセットし、歯を磨く。

 そして、母さんに「今日は遅くなる」と言って出掛けた。


 玄関から出る時、後ろから「明日は朝から赤飯ね」という言葉が聞こえたがきっと気のせいだろう。

 母さんは俺の言葉を”朝帰り”と解釈してるのだろうか。

 だとしたら、さすがの息子もびっくりだ。


 時刻は午前中。冬の寒さも厳しさを増す。

 しかし、駅前広場の像の前にいる童貞二人は熱意が違った。

 なんというか......ダサい服でジョ〇ョ立ちしているというか。


 その服のダサさはもはや簡単には説明できない。

 強いて言うなら、山田の服に「I LOVE NY」と書いてある。ここはNYじゃねぇ。


「おはよ......なんというか、元気だな」


「そりゃそうだろ。なんたって俺達は今日人生が変わる!......かもしれない」


「俺達は彼女いない歴イコール年齢という一つ目の童貞を捨てる!......かもしれない」


「そこは自信ないんだな」


「いいんだよ、このぐらいで! 変に期待しすぎて大やけどしたくない!」


「めっちゃ保守的じゃん」


「それに彼の偉人は言った......『合コンとは次の合コンへ繋ぐための催しである』よ!」


「言ったの俺な」


 相変わらず調子のいい二人だ。

 それでいてちゃんと陰キャ童貞だ。なんか安心した。

 にしても、午前中から何するってんだよ。

 作戦会議するとは聞いてるけどさ。合コン始まるの夕方頃だぞ?


「で、何を作戦会議するんだ?」


 そう聞くやすぐにバカ二人は顔を見合わせる。

 そして、「なにいってんだコイツ?」みたいな顔で見て来る。

 なんだろう、この顔めっちゃ腹立つ。

 つーか、こいつら.......


「まさかとは思うけど、俺が作戦を立ててきてるとてでも?」


「「違うのか?」」


「コイツら、無駄に純粋な目をしやがって......。

 俺は別に合コンに行ったことはないし、これといった恋愛経験もない。

 それに渋々お前らの懇願に応じてサポートしてやるってだけの立ち場なのに、俺だけやたら負担大きくないか?」


「いいだろ、お前は女子と普通に話せるんだからな!」


「なんだったら距離感近いじゃねぇか! 文化祭の時とか役得だったな!」


 こいつら、普通に私怨をぶつけてくる。いっそ清々しいよ。

 これでいて合コンで俺からサポートしてもらおうってんだからな。

 それはそれとして、今重要な言葉を聞いた気がする。


 文化祭......そういや、コイツらは隼人の指示を受けたんだったな。

 いや、それは一部の演劇に関わる奴らだけだっけ?

 それに確か、あの時は隼人の独断の行動として解決したはず。

 ......なんとなく気になるから聞いてみよう。


「なぁ、なんか考えてみるから、代わりに俺の質問に答えてくれ」


「質問?」


「まぁ、それで考えてくれるなら」


 まぁ、考えてみるってだけで、本当に思いつくかどうかは別だけどね。

 という形で、コイツらは騙そう。うん、男子同士の会話ならこんなもんだろ。


「お前達は文化祭の最終日の時、演劇の内容を知ってたか?」


 その瞬間、二人の目がそっと逸れる。

 どうやらあの時に関わっていたようだ。


「言っておくが、演劇があんな風に変わるなんて全然知らなかったからな」


「俺達は黒子をしていたけど、基本的にはリーダーの指示を受けてただけだし」


「それは隼人に頼まれたことだよな?」


 そう聞くと二人ともなぜか首を横に振った。

 その反応は俺にとってあまりにも予想外過ぎた。

 え、待て、隼人じゃない? なら、誰が指示を?

 ゲンキング、東大寺さん、それとも別の誰か?


「誰に頼まれたんだ」


「ギャルだ。黒子の運び練習をしてる時、ギャルが一人やってきてリーダーと話してた。

 二人でどこかに移動したから何を話してたかわからないけど」


「名前はなんて言ったかな.....とにかくギャルってのはわかるんだけど。

 ほら、ヲタクに優しいギャルとかフィクションじゃん?

 それにリアルのギャルは視線が厳しいって言うかなんというか......」


「そりゃ、女子は視線に敏感って話だからな」


 俺も女子と関わる時は、顔以外見ないよう紳士的マナーを心がけてる。

 しかし、最近永久先輩もゲンキングも東大寺さんも、直視すると顔を赤くして目を逸らすことが多い。


 なので、適宜目線をよそに外すと今度は逆にムッとされる。あれは何なのか。

 ちなみに、玲子さんだけは微笑しながら見つめ返してくるため、こっちが照れ臭くなる。

 そんな俺の質問に対し、童貞二人は童貞の主張を始めた。


「あんなん見るだろ、普通ゥ! もう普通に寒いのにさァ!

 オシャレのためだけに胸元開いてんだぜェ!?

 そりゃ無茶ってもんだろォーーーがよォ!」


「男が変態ってのはよーーーくわかる。

 だがよォ、その恰好をしてるってことは見られる覚悟してるってことだろォ!?

 それなのに見てしまったら軽蔑の目をしてくんだぜェ!? そりゃねぇってもっだろうがよォ!」


 なんかどことなく似てそうで似てない言葉に覚えがあるもスルーしよう。

 こういうのにいちいち構ってたらもはや午前中で体力が尽きそうだ。

 それはそうと、話がそれ始めたので軌道修正しよう。


「ギャルっていうと.....ゲンキング?」


 あの子はファッション陽キャであるけど一応。


「「あの子は天使!」」


 らしいよ、良かったねゲンキング。


「となると、残るは愛名波さん、柊さん、椎名さんの三人だけど」


「あ、そうそう! 確か柊さんだったはず!」


「俺の好みだったから覚えてる!」


 田山、だったら名前も覚えろ。後、お前の性癖は知らん。

 にしても、どうして柊さんが隼人の手伝いを?


 帰ってきた言葉が勇姫先生だったら......まぁ納得できる可能性もある。

 ただ、勇姫先生は文化祭後に隼人と接触した。

 そして、彼女の性格的に隠し事が上手くできるタイプではない......かもしれない。


 そう考えるとあまりにも予想外な返答が来たな。

 柊さんか......彼女は隼人を嫌っている。

 特別な理由があるわけではなく、単純にああいう人間性が嫌いらしい。


 故に、俺に協力を求めて八つ当たりしようとした。

 にもかかわらず、今の情報からは隼人に協力しているかのような裏が取れた。

 この矛盾は一体何だ? 妙に気持ち悪いぞ。


「なぁ、拓海」


「ん?」


「とりあえず、どっか店行かね? さすがに寒い」


 というわけで、俺は疑問を片隅に置いて、近くの喫茶店に移動した。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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