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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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201/314

第201話 魔女の気配がする

 ”パパ活”......確かに今柊さんはそう言った。

 とはいえ、あまりにも唐突すぎて頭がスッと情報を読み込まない。

 そのせいか口からは聞き返す言葉が漏れ出てしまった。


「え、今.......パパ活って言った?」


「そそ。中学三年の時に興味本位でね。

 私ってば発育良かったもんでさ~。胸の大きさだけで騙される大人が多くて多くて。

 あ、でも、えっちはしない方のソフトの方~」


「パパ活にソフトもハードもないと思うんだけど......」


「でさ、そんなことを続けてたらある日面倒な大人に捕まっちゃったんだ~」


 時期は12月24日。

 クリスマスイブと呼ばれる一部のカップルや家族が盛り上がる季節。


 そんな日に家を留守にしがちな両親から目を盗み、部屋に引きこもってゲームする弟を家に置いて柊さんは一人待ち合わせ場所の駅に向かった。


 そこでSNSのDMだけでやり取りした相手との初めての顔合わせ。

 その行動は一度や二度じゃなかったために、すっかり彼女は慣れた気分でいた。

 適当に機嫌を取って話を合わせれば、数時間で数万という金が手に入る。


 最初は風の噂でクラスの女子がやってるのを聞いてやってみた彼女だったが、ローリスクな割にハイリターンなその活動に段々と欲を出し始めていた。


 そして、欲を出して女に飢えているであろう時期に足を踏み入れた彼女はそこで、今までただ運が良かったことを知ることになった。


「声をかけてきた相手の最初の印象は奥手の草食系って感じかな~」


 高身長でありながら基本猫背な体勢。

 常にへこへこしたような八の字眉をしており、相手が年下でありながら下手に出るような態度。


 それはこれまで会ってきたどの”おじさま”とも違い、DMで連絡を取ること自体意外のような人物。

 今までにないチョロさを感じた柊さんはいつも通りデートを始めた。


 その最中もまるで初めてできた彼女との初デートのようなリアクションをする男性に、柊さんはすっかりマイペースに引きずり込めたと思い込み、警戒心を解いていた。


 そして、デートも終盤に差し掛かったところ、男性は「一つだけ寄りたい場所」があると彼女に告げた。

 最後くらいいっかと安易に承諾した彼女が男性についていった場所は、薄暗い路地裏だった。


「少しだけ不審に思ったよ~。でも、それまでのその人の態度と『ここが近道』だからという理由を鑑みて、あと少しだけ信じてついてみようと思ったんだ~。でも、その選択が不味かった」


 後少し......その気の迷いが柊さんを窮地に追い込んだ。

 一本道の細い路地裏で行き場を塞ぐように数人の男達が現われたのだ。


 見た目からしても随分と派手であり、加えて屈強としている。

 向けて来る視線も下卑たもので、さながら性玩具としか見ていないような感じだったという。


 そんな連中に囲まれた状況で切り抜ける可能性があるとすれば、ずっとデートをしていた男性のみ。

 しかし、柊さんの印象からしても、草食系のその人が何とかしてくれる可能性は低かった。


 されど、身の危険を感じた柊さんにとってその人を信じるしか方法が無かった。

 結果、その信頼はもっと酷い仇となって返ってきた。


「その人がなんて言ったと思う?――『連れてきてやったぞ』だったんだ~。

 つまり、逃げ場の少ない路地裏に誘い込んだのも、囲んできた数人の男達も全て罠だったてこと」


 その言葉を吐いた直後に柊さんが見た男性の印象は、全く違ったものだったという。

 草食動物の皮を被った狡猾な肉食動物。

 全ては無知で非力な餌を確実に仕留めるため。


 袋のネズミとなった彼女に逃げ場などない。

 一縷の望みはあっさりと砕かれてしまったのだ。


「『中途半端に頭が良いやつほどよく引っかかる』......そう言われた時はだいぶ心に来たな~。

 慣れたつもりになって、たった一回のデートで相手を知った気になって、自分が上だと思ってたからこそ足元をすくわれた」


 たった少しの欲が人生を終わらせる。

 柊さんにとって今までニュースで見てバカな女と思っていた相手に自分がなった。


 自分ならもっとうまくやれる......ただこれまで運が良かったことを実力だと過信して。

 状況に絶望し、自分の浅はかさに失望し、愚かな選択に後悔し柊さんは動けなくなった。


 そんな餌の様子を捕食者達が見逃すはずもなく、彼女が死よりも辛い地獄に引きずられそうになった――その時だった。

 「ちょっと待った」――そう声をかけた人物がいたのだ。


「もしかして、その人って......」


「うん、愛名波勇姫......今のゆうちゃん。なんでも友達と歩いてた時に私を見かけたらしいんだ~。

 で、その時にはすでに私にはパパ活疑惑の噂がクラス内で流れていたから、それで私のことが気になってたみたいなんだ~」


 突如現れた勇姫先生は男達数人に臆せず立ち向かったらしい。

 当然、ただやみくもに突っ込んだところで、男達からすれば”おたのしみ”が増えただけだ。


 しかし、勇姫先生は父親の影響で合気道を習っていたそうだ。

 それによって男達は自分よりも二回り以上小さい相手に投げ飛ばされる。


 加えて、途中から同じく門下生であった椎名さんも加わり、柊さんは救出された。

 それが柊さんが二人と関わるようになったキッカケらしい。


「あの時のゆうちゃんはヒーローみたいにカッコよかったんだ~。

 今思い出してもキュンキュンしちゃうぐらいには~」


「それじゃ、柊さんが告白してきた男子と付き合った際に二人の審査がある理由って......」


「うん、たぶんそれが影響してるんだと思う~。

 でも、私としては一度も話してない相手を知るにはそれしかないと思って~。

 だって、振った後に馴れ馴れしく声をかけるのも違うでしょ~?」


「それはそうだけど......でも、それじゃ前と変わって無くない?」


「一見すればそうだろうね~。でも、今度は最初からしっかり用心してるよ。

 私のこの雰囲気を利用して多くの女の子と友達になってるの~。

 だから、付き合う人は家族構成、友人関係、成績などなど私の方である程度の素性は洗ってあるんだよ~」


「なるほど、なんとなく読めた......付き合うってのは、表面上でしか得てない情報以外を調べるための行動なんだな。

 で、それをしておきながら勇姫先生と椎名さんに教えてない辺り、二人を最終保険にしてるってことか。思ったより考えた行動だな......」


「まさか今のでここまで解釈されるとは思わなかったよ~。

 やっぱ早川君も頭の回転は速い方だね~。

 だからこそ、なんで()()()()とは思うんだけど」


「中途半端ってなんだよ......俺は別に頭は良くないぞ」


「......ま、それはいいや。というわけで、これが私と友達二人のなれそめでした~」


 まさか三人の中にそこまで深いストーリーがあるとは知らなんだ。

 というか、俺が聞きたいことってこれだったっけ?

 あれ、なんで俺はなれそめなんて聞いてるんだ? あっ――


「いやいやいや、勝手に話を終わらすな。聞きたいことが終わってない。

 危うく柊さんのマイペースさに飲まれかけたけど、結局隼人が嫌い理由と何の関係があるんだよ?」


「もうわかってるくせに~。そういうとこだぞ、私が”中途半端”って思うのは~。

 まぁいいけど、単純な話だよ。私が騙されかけた相手と金城君が同じタイプだから。

 こう、弱者を騙して舐っている感じが。早川君の姿が昔の私に被るんだよ~」


「だから、俺を誘って隼人に対して復讐しよう?」


「復讐とかそんな大それたものじゃないよ。

 だけど、窮鼠猫を嚙むって言葉があるでしょ~?

 やられてる側がやり返しちゃいけないってのは割に遭わないじゃん」


 そう言うと、柊さんはテーブルに乗っけた胸を押し潰しすように前のめりになり、言葉を付け加えた。


「ってことで、私達ネズミがやり返すんだよ。

 ちょっと過激な”トムとジ〇リー”しちゃおうぜ?」

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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