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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第144話 困った時は親友

―――ガールズサイド


 琴波の思わぬ失敗から導き出された唯華の妙な表情。

 頬を赤らめたその顔を見た瞬間、暴走ガールはすぐに思った。

 これっやっぱり......やっぱりなの!? と。


 前々から唯華と拓海の距離が近すぎることは懸念していた。

 いくらいつメンで話す会話が多いからと言ってもだ。

 だから、初めの方は唯華の矢印が拓海に向いているのではないかと警戒した。


 しかし、いつからか拓海と唯華が学校で一切話さなくなった。

 二人の間でケンカでもあったのかと思われたが、それにしては顔を合わせても険悪の雰囲気になる様子はない。


 代わりに、唯華が大地との会話を増やしていったので、唯華と拓海の微妙な距離を調べるため、それを口実に拓海と仲良くなるため、あわよくば大地と唯華をくっつけるためと珍しく頭が回った琴波は一石三鳥の提案を拓海にしたのだ。


 結果から言えば、それを調べる前に拓海からはフラれてしまったが。

 少々予定は変わりつつも、拓海と唯華、唯華と大地というそれぞれどういう関係性何かを目の前で調べる機会はやってきた。


 で、わかったことがやはり唯華は拓海に好意を寄せているのではないかという疑惑が強まったことだ。

 あんな赤らめた表情でだんまりを決める顔を見れば誰だってそう思うはずだ。


 当然、それは琴波にとって大問題だ。

 なぜなら、それは競争が激化したことを指すから。

 というか、早川君って早川君なのにモテ過ぎじゃない?


「え、えーっと、唯華ちゃん? どうしたの?」


「え、あ、いや......アハハ、そんなわけないじゃん」


 唯華は笑って否定する。

 誤魔化しているようにも見えるし、本当にそうではないようにも見える。

 もちろん、先ほどの表情のインパクトが強すぎたせいで認識に補正がかかっていることも考慮している。ただ、それでもだ。


「なんなら、この場で拓ちゃんに聞いてみる?」


「え?」


 思わぬ返しに琴波は声が裏返った。

 自分でもしないアグレッシブすぎる行動に動揺が隠せない。

 そんな琴波をよそに唯華はあっという間に行動に移した。


「おーい、拓ちゃん!」


「ん?」


「わたしのこと好きか!?」


「.......え?」


 突然唯華に声をかけられた拓海は脈絡もわからない質問に固まった。

 彼の視線が琴波に向けば琴波は首を傾げ、大地に向けば友人もまた首を傾げる。


「おい、早くしろ。聞いたこっちもハズいんだぞ」


「え、あ、はい......そりゃまぁ好きだけど......」


「友達としてだよね?」


「うん、その意味で答えたけど......」


「ならば良し。戻っていいぞ」


「???」


 拓海は頭にたくさんのハテナマークを浮かべながら、言われた通りに元の体の向きに戻す。

 一方で、満足気な顔をしている唯華は隣にいる琴波に「どうだ!」と言わんばかりに話しかけた。


「ほら、これでわかったでしょ。もちろん、わたしも好きだよ――友達としてね!」


「えずか......」


「なんて?」


 琴波は唯華という人物に恐怖を抱き思わず方言を漏らした。

 それほどまでに隣にいる同級生の行動はあまりにも異常だったのだ。


 さっきまで恋する可憐な乙女のような表情をしていたのに、先ほどではまるで友情を確かめ合う少年のようにサッパリとした表情を浮かべていた。

 そう、まるで二重人格でも見ているかのような違和感ありまくりの変化。


 だからこそ、さっきの感覚は間違っていなかったようだ。

 誤魔化しているようにも見えて、そうでないように見えたのは。

 まるで彼女の心の中で相反する二つの感情が分離しかけているように。


「ね、ねぇ、唯華ちゃん。次って何見るっけ?」


「そうだね~、次はペンギンを見て、その後に昼から始まるイルカショーだね。

 たぶん時間的に昼食は13時過ぎになると思うけど」


「そっか。なら、込む前にもう一度お手洗いに行かせて!」


「あ、うん、どうぞ......」


 琴波は「助けて莉子ちゃん!」と心の中で叫びながら、ダッシュでトイレに駆け込んだ。

 個室に入った彼女がすぐさま電話をかける相手は自慢の親友(ブレーン)である。


―――プルルル、フォン♪


「莉子ちゃん! 莉子ちゃん! 聞いて! 聞いて! ちょっと問題が発生したの!」


―――ツーツーツー


「切られた!?」


 通話状態になったためすぐさま声をかければ、莉子からすぐさま電話を切られてしまった。

 しかし、唯華はめげずにもう一度電話をかけると、今度は切らずに対応してくれた。


『うるさいから思わず切っちゃったわ。謝罪はしない』


「それは別にいいんだけど......問題が発生したから聞いて欲しいの。

 いや、問題って言っていいのかな? 別にうちに何か被ってるわけじゃないし」


『なら、この電話は必要ないってことで切っていいかしら?』


「ちょっと待って! それは話が違う! とにかく聞いて!」


 そして、唯華は通話が切られる前に早口に状況を話し始めた。

 その際、自分の感じた気持ちも添えて。

 その話を莉子は口を挟むことなく黙って聞き続ける。


『――つまり、あなたは拾わなくてもいいものを拾おうとしてるってのがよくわかったわ。

 結論を言うわよ。放っておきなさい。わざわざ自分から面倒ごとの種を拾おうとしなくていいわ』


「だけど、唯華ちゃんは友達だし......」


『根本的な部分が間違ってるわね。

 あなたがこれからしようとしてるのはその友情に日々どころか壊そうとしている作業なのよ。

 それをあなたが今更日和っていたら世話ないわよ』


「それは分かってるんだけど。だからって、今のおかしな唯華ちゃんをそのままにしておけないよ!

 というか、さっきからうちも分かってるかのように言ってるけど、うちは全然状況を理解できてない!」


『それは自信を持って言うことじゃないわよ。いい?

 状況から察するに今の元気さんは心中がめちゃくちゃな状態になってるの』


 それから莉子は琴波から聞いた話をもとに今の唯華の内情を推察し始めた。

 以下、唯華が莉子から伝えられた内容である。


 まず元気さんの状態だけれど、アレは恐らくもともと持っていた感情だったり気持ちだったりがぐちゃぐちゃに混ざったような状態に思えるの。


 どうしてああなったかはわからないけど、推察するに元気さんはもともとオンオフの切り替えがハッキリした人物だったんじゃないかしら?

 アタシもあの子の元気な姿を見たことあるけど、あんなテンションがいつまでも続くとは思えない。


 人間、常に同じパフォーマンスが出来るはずがない。機械じゃないんだから当然の話よね。

 であれば、少なからずどこかであのテンションを振りまくための充電時間が必要だと思う。


 で、その充電時間というのが所謂“オフ”と呼ばれる時間で、その時間はリラックスすることで心の整理をつける時間であるとも思ってる。

 やり方は様々だけど、主な方法はやっぱり自分の趣味に時間を費やすことね。


 だけど、彼女はそれがここ最近上手くできてなかったんじゃないかしら。

 そのせいで彼女の中でオンとオフが上手くできずに、元々抱えていた精神的問題ばかりが膨れ上がって、本来取るべき行動がチグハグとしていることに本人は気づいていない。


 オンオフの切り替え機能が上手くいってないのよ。

 何らかが原因で切り替えが下手になってしまったか。

 なんにせよ、彼女の今後の動きはかなりの台風の目になるかもしれない。

 そう考えると......前言撤回するわ。無視は出来ない。


「えーっと、ってことはつまり......?」


『つまり、それが今の元気さんの状況ってこと。

 まぁ、ここからはあなたの好きにすればいいけど。あなたの道だし。

 ただし、面倒ごとになるのは確実でしょうけどね』


「その気持ちの正体を気づかせるかどうかってことか......」


『気づかせるうんぬんより単に押し殺してるだけでしょ。

 安心しなさい。実はこっちにも協力者はいるの。最低限の仕事は出来るはずよ』

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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