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高校時代に戻った俺が同じ道を歩まないためにすべきこと  作者: 夜月紅輝


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第134話 大地、お前は漢だ

 ゲンキングから「しばらく近づかないで」と言われた翌日。

 さすがの俺もそれが唐突な絶縁宣言じゃないことはわかってる。

 だって、それなら協力してくれた理由が成り立たないし。

 とはいえ、言われてしばらくはちょっと放心してたね。


 とにもかくにも、思ったよりもスムーズにゲンキングの協力は得れた。

 ということは、こっちも大詰めってところである。

 それはもちろん大地を文化祭実行委員会として招き入れることだ。


 ぶっちゃけ、これさえ成功すれば案外どうにかなるんじゃないかと思ってる。

 東大寺さんが俺にホの字なのかどうかは定かじゃない。

 だが、仮に近い感じだったとしても、それぐらいなら大地の魅力が掻っ攫うのではないかと思う。


 大地は友達の俺から見てもスポーツ系イケメンって感じだ。

 爽やかと熱血の中間ぐらいの位置にいる。

 それは人付き合いがしやすいという長所になるだろう。


 そして、大地は陽キャだ。

 羽目を外してウェーイするわけじゃない健全なタイプの方。

 そうこれだけ並べただけでも大地は非常に人として太鼓判を押せる優良物件だ。


 正直、彼女がいない方がおかしいと思っている。

 皆が美人だったり、可愛いだったりだと思っている人には既に恋人がいる。

 もはやそれは世の中の常識だろう。狙わない方がおかしいもの。


 そう考えると、玲子さんや永久先輩、ゲンキングもその枠組みにいないよな。

 特に部活に入ってるわけでもないし、これといって習い事に忙しいという印象でもない。


 ともかく、大地との関わる機会を増やせば、自ずとその人の魅力にも気づくわけで。

 よし、文化祭実行委員を大地の好きな人が手伝ってくれるってんだ。

 大地もきっと乗るはず――


「すまん、無理だわ」


「......」


 放課後、部活に向かう前の大地に突撃してみると予想外の答えが返ってきた。え、断る、マジ?

 大地は首を擦りながら理由を答えてくれた。


「拓海はバスケにあまり詳しくないだろうから知らないだろうけどさ。

 バスケにはウィンターカップって冬に行う大きな大会があって、今はその大会に出るための予選時期なんだ。だから、部活に集中したい」


「なる、ほど......」


「いや、正直、めっちゃ一緒にやりたいと思ってる。

 それにこうしてセッティングしてくれた拓海に申し訳ないとも思ってる。

 けどさ、俺は好きな人の努力する姿が好きになったんだ。

 俺は得意なバスケでもって努力して振り向かせたいと思ってんだ。

 だからさ、今回の拓海のやってくれたことスゲー嬉しい。

 だけど、実行委員として働くことは出来ない」


 俺は今この瞬間、自分の男レベルの低さを思い知った気がした。

 ここ最近の俺はずっとどこか浮ついていた。

 まだ痩せるっていう目標もクリアできてないのに、少し環境が変わったぐらいで仲の良い女子から好意を持たれてるんじゃないかという気持ちまで生まれてしまっていた。


 しかし、目の前の大地は愚直にも熱意があって一つのことに全力で取り組んでいる。

 例え、好きな人と近づけるというチャンスをフイにしてもだ。

 人間の格が違う。目の前で男は......この上なく漢だった。


「そっか、わかった。なぁ、大地。これからは大将と呼ばせてもらっていいか?」


「え、何急に。普通でいいよ」


****


 さてと、これはどうしたものか。

 本当は大地も含めた三人で文化祭実行委員として働くつもりだったが......あんな大地の漢らしい行動見て説得などもはや無意味。


 となれば、俺が東大寺さんと組むのもどうかと思うが、もうすでに協力をしておいて後からこっちの都合で断るってのも失礼な話だ。


 そうだな。言った手前、東大寺さんには手伝ってもらおう。

 正直、大地がいない状況で関わらない方が良いだろう。

 だけど、それは俺の意志さえしっかりしていれば問題ないとも思う。

 単にこれまでは俺の自意識過剰ということも大いにありえるし。


「とはいえ、そうなるとどうやって大地を意識させるかだよな~。

 本人の良い所を言ったとしても、人となりを見ないとどうしようもないし。

 それに実際に判断するのは当の本人だから.......う~ん」


「そんなところで呻ってどうしたんだ?」


 腕を組みながら廊下を歩いていると後ろから声を掛けられた。

 振り返って見れば空太と隼人が二人でいる。

 なんだか珍しい組み合わせだな。


「二人でいるなんて意外だな。少なくとも、イメージはつかない」


「そうか? 最近は大地が部活で忙しそうだから割りと話すぞ」


「つーか、それがキッカケで話すようになったって感じだな。

 まぁ、前からコイツとは話すこともあったが、すぐに途切れる感じだったしな」


 友達の友達って距離感のやつか。

 確かに、実際空太と隼人の間には必ず俺か大地が間を取り持っていたし。

 なんか絶妙に気まずい距離感だよな。


「で、お前は一体何にそんな悩んでたんだ?」


 空太が話題を戻して聞いてくる。

 さて、どうしたものか。ここは正直に白状すべきか?

 しかし、大地本人が言わないのを友達とはいえ俺がペラぺラ話すのはな。


「どうせ大地のことだろ? アイツ、最近よく女子のケツを目で追っかけてるし」


「あぁ、そのことか。わかりやすいもんなアイツ」


「大方、俺達に相談するとロクな結果にならなさそうだし、それ以前に協力してくれるかどうか怪しいってところで、唯一助けになりそうなお前に相談したってところだろ」


 わぁお、何から何まで筒抜けだぜ。大地おい、どうするよ。隼人のやつ、エスパーかよ。

 しかし、そんなわかりやすく目で追っかけてたのか大地よ。

 タッパの割に意外に可愛い所あんじゃねぇか。


「しかし、隼人の言い方だと大地がまるで節操無しの変態みたいだぞ」


「いや、実際そうだぞ。家にもしっかりとアダルト本や同人誌あったし」


 やめなさい、それだけで変態と決めつけるのは。世の中の男子が泣くぞ?

 それなら、やり直し前の頃にスマホにあったメールアドレスよりも、購入した同人誌の方が多かった俺はとんでもねぇド変態ってことになるじゃねぇか。


 安心しろ大地。俺は健全な思春期の男子高校生だと俺は高く評価するぞ。

 こんな見た目彼女をNTRそうな鬼畜野郎の言葉なんて真に受けちゃいけない。


「おい、お前今失礼なことを考えたろ」


「言葉にしない限り言質にはならない。思想まで止められる筋合いはねぇぜ」


「チッ......まぁいい。で、察するにここで悩んでたのは、協力したお前がせっかく大地の想い人とのセッティングをしたってのに大地が断ったからどうしようかって悩んでんだろ」


「お前、エスパーかよ」


「状況からの推理だ」


 だとしたら、推理力が高すぎるだろ。

 どういう思考したらこの短い時間でそんなに察することが出来んだ。

 そんなことを思っていると、空太が腕を組みながらじっと俺を見る。


「どうした空太?」


「ん? いや、たぶんだけど、大地の好きな人ってお――」


 空太が何かを言おうとした瞬間、隼人の素早い手が彼の口を覆った。

 そして、何食わぬ顔でしゃべり始める。


「そうだな。せっかく大地の恋路を助けようってのに、お前が大地の想い人との距離を近づけてしまったならそれは疑似NTRみたいなものだもんな」


「お前、嫌な言い方するなぁ。それにまだそう決まったわけじゃないだろ。

 確かに、その人との距離が近いことは認めるが、逆に言えばそれだけだ。

 俺は大地の願いが叶って欲しいと思ってるし、そのための手助けをすると決めた」


「......そうかい」


 隼人は相変わらず空太の口を覆いながら、俺の肩をポンと触れると前を歩いていく。


「ま、俺は今はオブザーバーだ。好きにやれ。

 アドバイスするなら、人を引き付ける魅力ってのを舐めないことだな」


 そんな二人の後ろ姿を俺は首を傾げながら見送った。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')


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