9.護身術
「えりっく、てぃあごしんじゅつおしえてほしいの」
「お嬢、俺がいるじゃないですか!護身術なんて必要ないですよ」
「てぃあかわいくない?」
うるうる。
「いや、めちゃくちゃ可愛いですよ。誘拐されないか心配になるぐらい!だから俺が付けられたんですよ!」
「もしよ?えりっくはつよいけど、もしさらわれちゃったら?てぃあこわいのになにもせずにまってるだけ?」
「こちらから何かして、余計にひどいことになってもいけません」
「なにもしてないのに、なぐられそうになったら?いたいよ?」
うるうる。
「くっっっ!!!」
勝った!
「ぜったいあぶないことはしないから」
「絶対ですよ?逃げることが第一です!」
私はせっかく武官の家に生まれたのだから戦いたいとまではいわないが、ある程度鍛えたいしできる限り暴漢からも身を守りたい。今は小さいから何もできなくても、鍛えてるうちに多少は使えるようになると思う。
だけど、お母様には絶対内緒だ。泣かれたら大変。
「みんなにないしょでしたいの。えりっくおしえてくれるでしょ?」
小首を傾げる。
「くっ!わかりました。旦那様に見つかったら?」
「そこはてぃあがちゃんとせつめいするから」
と、護身術を習えることになったのである。
「小さい体を生かすことが今の最大の武器です!」
「はい」
「まず上から襲い掛かってきたら股の間を抜けて逃げるか、体勢を低くして思いっきり相手の懐へ飛び込みましょう」
「はい」
「それでひるめば逃げる時間ができます。受け止められたら、第二段階、顎を下から思いっきり攻撃です。今なら頭突きが一番力が出ますかね。抱えられて動けなさそうであれば、喉ぼとけを思いっきり殴りましょう!」
「はい!」
「お嬢が今の体でできる最大限はこのぐらいです。それでは実践です!」
エリックは渋ってた割にちゃんと考えて教えてくれている。
実践あるのみ!
あれから、鬼ごっこは定期的にしていて私もちゃんと走っているから脚力もついてきている。
「いいですよお嬢!もっと本気で!」
「えりっくいたくない?」
「大丈夫です!鍛えてますから」
この日からエリックと私の秘密の特訓がはじまったのである。