83.帰宅
「ただいま」
玄関を開ける。誰も帰ってくると思っていないから誰もいない。すると
「まあ!ティア?どうしたの?早いじゃない」
「ご挨拶して少しゆっくりしたら帰ってきたの」
「一人?」
「ええ。メイ様お忙しいみたいだから」
「辺境じゃしかたないわね」
お母様はいいように誤解してくれたようだ。
疲れちゃった。久しぶりにパンチのあるご令嬢と絡んだからな。
のんびり過ごしすぎてて、急にあれだからびっくりして疲れちゃったな。
とりあえず、自室へ戻り着替えてスノウをもふる。一番の癒しだからだ。
眠くなってきたから少し眠ろう…。
あら。結構寝てた?夜になってる。
スノウがいない。
「ティア!起きてる?レイス様来てるわよー!」
え?レイ?なんで帰ったの知ってるんだろう。
「ティア久しぶりだね」
「レイ」
ハグだ。うん落ち着く。
「久しぶり!どうして帰ったの知ってるの?」
「スノウが知らせに来たよ」
「スノウが?」
「スノウが心配してたよ」
「?」
「辺境から急に帰ってきたんでしょ?スノウから聞いた」
「そうね。招かれざるお客様が来たからね」
「素直に客人の言う通り帰ってきたの?」
「だって、あの方ひどいこと言いながらメイ様のことお好きなのよ?そちらのことはそちらで片づけてもらわないと。私に当たり散らされても知らないわ」
「ああ。なるほど。それはその客人と辺境伯一家が悪いね。きっとしょっちゅう滞在してたんだろうしね」
「だからメイ様に挨拶もせずに帰ってきちゃった」
「ティア怒ってるの?」
「あの客人にね。メイ様のことあんなに悪く言ってたら、好きになってもらえるわけもないし。メイ様だって気付かないだろうし、悪口言うくせにしょっちゅう来るな。ぐらいに思ってると思う」
「久しぶりに偽善者って言われちゃった」
「ああ。ティアは悪くないのに」
抱きしめられる。
「のんびり過ごしすぎて、貴族令嬢ということを忘れてたのがいけなかったわ」
「どう考えてもそのご令嬢が悪いけどね。非常識すぎるでしょ」
「家族には言わないの?」
「うーん。スノウのことから話さなくちゃいけなくなるしね。たぶん皆怒ると思うから。怒るとややこしいでしょ。うちの家族」
「この件は怒って当然だと思うけどね。ティアが貶されてるんだから、抗議しないと。舐められる」
「そうよね。はあ」
「スノウも構わない?」
『いいよ』
「私って本当トラブルメーカーよね。私が動くとおかしくなる。はあ何でこんなになっちゃったんだろう。どこかで間違えたかな」
「僕は今のティアが大好きだよ。間違えてない」
「ありがとう。私も大好き」
抱き着く。
「メイナードさんにティア取られちゃった感じがして寂しかったんだけど、そうでもなかったみたいだね」
「レイはレイよ。一生大好きな大事な友達だわ」
「僕も」
「さあ。家族のところに行こうか」
「はーい」
久しぶりに家族からのお帰り攻撃を受け
「ティアから大事な話があるんだ」
レイが切り出す。
「まずスノウは精霊様なの」
「「「「「は?」」」」」
『そう』
皆にきこえるように話しかける。
「で、レイとお祖父様は知ってたんだけどね。スノウが教えていいって言ったから。そのスノウは話もできるんだけど、精霊の力があって空間移動ができるのね」
皆ぽかんとしてる。
「それで、今回一気に辺境地まで行けたから一週間滞在してたの。黙っててごめんなさい」
「よくわからんが、辺境拍のところで一週間滞在してたんだな?」
さすがお父様だ、一番に立ち直った。
「それで、ご両親にも使用人たちにも住民たちにも受け入れてもらえて楽しく過ごしてたんだけど今日ねグレイズ侯爵家のリリア様って方がいきなり部屋に来たの」
かくかくしかじか
「何だと?ティアを侮辱した?」
「許せないわ。そもそも常識もマナーすらも知らないのにティアを侮辱する権利はないわ!」
「それでティアは帰ってきたの?」
「そう。すぐね。私に当たり散らしてるんだもん。知らないよ」
「確かに。ティアのせいにされてもな」
「滞在してたのも両家の承諾のもとだしな。いやらしいと思う方がいやらしいと思うけどな」
「このことはグレイズ侯爵家に抗議しよう!!うちのティアを悪く言われて黙ってられるか。それにこれは王家が認めた婚約だぞ」
「ティアはこれも黙ってようって言ってたんだけどね」
レイが言う。
「何だと?ティアどうして?私たちは信用できないか?相談できない?」
「いいえ。だって娘が悪く言われるなんて、お父様もお母様も悲しいじゃない。腹も立つでしょ?私が動けば問題が起きるじゃない?迷惑ばかりかけてごめんね」
「迷惑なんかじゃない!悲しいし腹も立つけど、娘に頼られない方が悲しい」
「そうよ。大事な娘だもの」
「ありがとう」
久しぶりのレイです。




