81.メイナード視点
婚約してから、これだけは買っておきたいと思って宝飾品店に行った。行く道中のあの手繋ぎはダメだ。恥ずかしい。だがティアは可愛いし手は握れるからこれはいい!!
指輪は婚約を申し出るときに用意しておくのが普通だが、今回はイレギュラーだったから仕方がない。早くティアに婚約指輪を付けてもらいたい。
ティアがそこで注文したのが、俺の髪色の石だった。世間に嫌われている俺の色。
それを選んでくれるティア。もっと大きい石にすればいいのに小さい石を選んだ。大きいと高くなるからの遠慮なのか、暗い色の大きい石は嫌なのか。
聞くと、ずっと付けていたいからだってにっこり笑う!!!かわいすぎる!
それに、俺にもお揃いで付けようと言った。お揃い?まあティアがしたいならしよう。とティアが自分の瞳の色を選んだ。
俺の髪色の石とティアの瞳の色どちらも深めのブルーだから、パッと見てもお揃いみたいでいいと頬を緩めていた。
かわいすぎる!!はあ。かわいい。
そのあとのカフェでも、人が多いのに気にせずに食べさせてくる。
店に入った時から、この髪色のせいで見られている。「あんな男をあんなに可愛い子が?」という視線である。
でもティアは気付かない。指摘をしても、わからない顔だ。
こんな人前で食べさせるなんて普通はありえない。しかも美女がこんな男にだ。皆照れている。男も女もだ。わかる。恥ずかしいよな。こんな美女だしな。でもティアは気にしないから俺が慣れるだけだ。
それから、辺境に帰った。ティアを連れて。
何というかやっぱり、両親は大喜びだった。母は驚いていたが心底ホッとしていたようだったし、父はそうなるように俺を王都へ行かせたと言っていたがこんなに早く婚約まで行くと思ってなかったからこちらも大喜びだ。ティアが娘になるとそれはもう顔が緩んでいた。ただティアと仲が良すぎることは不満だ。
それから、父と母に婚約までの流れを説明していたのだが。
この婚約はティアの条件に俺がちょうどいいからだと思っていたら、ティアは一目ぼれだと言った。ええ?顔が好み?嬉しい。だが父に似ているって何とも微妙だ。と思ったら、いっぱい理由を話し出した!!もういい!!恥ずかしいからやめてくれ!!
俺だって一目ぼれだ。ティアを好きにならない理由はない。と思ったら、父にもティアは運命の相手だろう。と俺が思ってたことを言った。やっぱりそうだよな!!
手土産のティアの手作りクッキーを食べさせてくれたり
父の挑発に乗ってしまって膝に乗せたりしたが、どうしてあんなに無防備でかわいいんだ!!かわいい!!愛おしいとはこのことを言うんだな。
父も母を膝に乗せていたが、ほら見ろ恥ずかしいじゃないか!俺が慣れてないからだけじゃないぞ!!
それからは、ティアの手料理を食べる機会が増えた。あんなに料理がうまいとは!料理人たちにも教えていて、砦でも兵たちに振る舞われるようになる。
ああ。俺はこんなに可愛くて綺麗で優しくて料理のうまいティアが奥さんになるなんて幸せすぎやしないか?
精霊達と森に行って膝枕を提案されたときは、驚いたが素直に枕にさせてもらった。なんだこれ、最高だ。髪をさらさら撫でられ、眠った。ティアの歌も心地よく寝入ってしまっていた。
幸せだ。毎日幸せすぎる。
婚約してから毎日が幸せで浮かれていた。
だから忘れていたんだ。あの存在を。
浮かれております。




