7.ズボンスタイル
次の日お母様は早速仕立て屋を呼んだ。何でも男の子の服を着せておくわけにいかないからって。
「本日は、どういったものをお作りしましょうか?」
「今日はこの子のズボンスタイルの服を仕立てたいの」
「まあ!お嬢様がズボンをお召しになるのですか?」
嫌味っぽくなく、素直に驚いた感じだ。
「そうなんですの。この子ったらお兄様達と同じがいいって言うんですのよ?実際アレクのお下がりを着てたのが可愛くて」
お転婆で、ズボンが必要だとは言わないお母様さすがである。
「おぼっちゃまのお下りを?確かに、お嬢様でしたら絶対可愛いですわ」
「シンプルな感じでお願いできますかしら?」
「かしこまりました。色味と刺繍で女の子らしさを出しましょう」
「ししゅういっぱだとおもくなるから、ししゅうはすくなくしてね」
「まあ!お嬢様、確かに刺繍は重いですわ。他に女の子らしくとなると…」
この世界の男の子の普段の服と言えばシャツにズボンが定番だ。
「あのね、しゃつのえりをまあるくしたらどうかな?」
丸襟だ。
「ぽけっともね、こうしてこう!おそでもね、こうよ」
ペンを借りて描く、ハート型だ。袖は少し絞ってペプラム風にする。
「まあああ!素敵ですわ!奥様、このデザインで新しいスタイルとして売り出してもよろしいでしょうか?もちろんアイディア料とデザイン料はお支払いいたします!!」
「ティアどうかしら?お母様も可愛いと思うし、売れると思うわ」
「いいよー。たくさんうれるといいねー」
大きい話になってきたぞ。私は動けたら何でもいいのでタダでもいいのに、そういうわけにはいかないらしい。
「こちらお嬢様の名前を付けたラインにしても?」
え?めちゃくちゃ恥ずかしいのでは?
お転婆ラインでしょ?
「はずかしいので、なまえはちょっと…
とんぼーいでどうですか?」
Tomboyだ。
「トンボーイ。いい響きですわね!!それでいきますわ」
「ティアどういう意味なの?」
「おてんばってかんじのことばをつくったの」
この世界は英語ではないので、通じないし意味を聞かれても困るのだが。とりあえずごまかす。
「そうなの?でも確かにいい響きだわ」
「おかあさま、てぃあおとうさまとおなじふくもほしいの。おとうさまにはないしょよ?」
「お父様と同じ服?」
「おしごとのふく。かっこいいからてぃあもきたい」
騎士服のコスプレである。
「まあああ!ティア!それは絶対に可愛いわ!作ってくださる?」
「おまかせ下さい!女の子の騎士服なんて初めてですわ。しかもお父様とお揃いなんて!想像だけでも素敵ですわ!すぐにでも取り掛かります」
お針子さんたちも目を輝かせている。皆ノリノリである。
「たのしみね〜」