66.ついで
「ティア今日ついでに婚約発表するか?」
「おじ様、それはいい考えですわ!」
「ちょ、ちょっと待ってください。それは早すぎませんか?キース殿何とか言ってください」
「いや。ちょうどいいだろう」
「ええ!?妃殿下!」
「ティア、アクセサリーを変えましょう!ゴールド台のそうね、カイヤナイトでどうかしら。清純・純粋・適応。ティアにぴったりよ!!いいわ!メイナード卿にはシルバー台のブルートルマリンのタイピンとシルバーのポケットチーフにしましょう!」
エリー様ノリノリである。
「レイス殿下!」
「メイナードさん、諦めようか。それに早く婚約したほうが、変な虫が来なくて安心だし、可愛いティアが近くで見られるよ?」
「仕方ありません」
満場一致なので、さっそく私は髪とアクセサリーを変える。
髪は侍女さんにおまかせだ。
自分じゃ見えないがきっと綺麗にしてくれてるだろう。
アクセサリーを変えるだけで全く違う雰囲気に見えるすごい。
「ティアナ嬢が俺の色を…よく似合ってる」
「ありがとうございます。メイナード様。それとティアでいいですわ」
「ああ。ティアそれなら俺はメイでいい。口調も崩してくれ」
「わかったわ。メイ様?」
「ああ」
「何というか。似合いだな」
「ええ。想像以上に並ぶと素敵ね。まるで夜の月と星ね」
「ティア…」
お父様が涙ぐんでいる。
「では、再登場とするか」
「「はい」」
腕を組む。
うん。逞しい。
「皆楽しんでいるか?今日は良き発表がある。セイクレッド辺境伯家メイナードとコールド侯爵家のティアナが婚約をした。セイクレッド辺境伯家はほとんど夜会には出ないから、会う機会も少ないとは思うが国の平和を守ってくれている大事な臣下だ。皆二人の今後を温かく見守ってやってくれ」
自分ができる最大限のカーテシーを披露する。
これは王家に認められた婚約。口出しは許されない。さらに貶した場合不敬にあたるから、そこんとこよろしく。といった感じである。
このあとはダンスを踊る。
メイ様はダンスが上手だ。鍛えてるから軽く支えてくれるし、踊っていて楽しい。
「ティア楽しそうだな」
「楽しいわ。踊りやすいもの。社交場へ出て楽しいのは久しぶりよ」
「そうか。それは何よりだ」
と軽く持ち上げて回される。
デビュタントも気が重かったのに、こんなに楽しくて心も軽い。
「2曲踊るか?」
「ええ。さっきは1曲だけだったものね」
「実は、終わるのが嫌だと初めて思ったんだ」
「私も!」
「どうやら俺達は相性がいいらしい」
そうかも!にっこり笑う。
「かわいい!」
「ありがとう?」
「何で疑問形?」
「男性に大きくなって初めて言われたわ」
「そうなのか!じゃあ、これからも俺だけだな」
「そうかも!もうそろそろ可愛いと言われなくなってきたものね」
「俺の特権だな!」
ニカッと笑うメイ様はとても可愛かった!
踊り終わり、少しゆっくりしようと飲食スペースへ行くと
兄様たちとカイル兄さまが急いで寄ってきた!レイも来てる。
「ティア!婚約って何?どういうこと?」
「どういうことって、こういう事?」
メイ様の腕に腕を絡める。
「くっ!可愛い!」
とメイ様は顔を抑えている。
「頑張って!これぐらい初歩中の初歩だから」
レイが励ましている。
「「「聞いてない!」」」
「だって、言ってないもの」
「ティア!」
「何で言ってくれなかったの?」
「何で言わないといけないの?お兄様たちは許してくれると思って。違うの?許してくれないの?」
うるうる
「「「くっ。ティア。ティアがいいならそれでいい」」」
と涙ぐみながら許してくれた。
「で?カイル兄さま、どうしてカイル兄さまに言わないといけないの?」
「ずっと兄妹のように育ったじゃないか」
「じゃあ、報告して何が変わるの?反対するの?反対してもカイル兄さまには関係ないから、私は好きにする」
「ティア何で今日そんな怒ってるの?」
「カイル兄さま、カイル兄さまが婚約者を決めないせいで私がどれだけ被害を被ったと?今日だって、頭の中がお花畑の人たちに責められたのよ?妹のように思ってくれたのに、私が言われても何とも思わないのよね?」
カイル兄さまは黙った。
「今のは兄上が悪いね。ティアがかわいそうだ。はい。ティア美味しいものでも食べて」
もぐもぐ。腹立つ。もぐもぐ。
あっ。これ美味しい!
「うまいか?」
「はい。あーん」
「ええ?」
「いらない?美味しいのに」
「ぐっ!食べる」
「はい。あーん」
「あーん」
「ほら見て兄上、ティアはもう食べさせてる」
「私にはあんまりしてくれないのに」
「日頃の行いでしょ」
「で?カイル兄さま言うことないの?」
「すみませんでした!」
ティアのことになると必死な王家です。
そして王太子殿下には塩対応です。




