62.メイナード視点(夜会編)
そんな話を聞かされて、行かん!と言えるほど俺は心が死んでいるわけではなかったらしい。
会場へ着いて、デビュタントの令嬢がコールされるのを待つ。
相変わらずコソコソ言われてるのは慣れてるからいいとして、髪の暗い令嬢と騎士か?が楽しそうに話している人もいるな。前と少し変わったか?
コールド家がコールされた。
会場が一気に静かになる。
綺麗なカーテシーで入ってきた令嬢は
女神か?
白い肌にプラチナシルバーの髪にブルートルマリンの瞳、色彩だけでも美しいのにあの造り。
コールド侯爵にそっくりだ。
父の言っていたのは本当だったのか。話半分で聞いていたら、驚いた!今まで見た令嬢の中でも圧倒的だ。
皆見惚れているな。男も女も関係ない。
侯爵と踊る令嬢は、楽しそうだ。笑うと天使だな。
今度はレイス殿下だ。髪色は暗いが明るい表情の楽しそうなレイス殿下に、嬉しそうに楽しそうに踊る令嬢。お似合いだな。
するとどこからか
「あの方ですわ」
「ああ。あの…」
「レイス殿下とお似合いではないですか」
と同じ感想でも馬鹿にしたような声が聞こえる。
レイス殿下と令嬢が侯爵の元へと戻る。
他の子息が声かける前に、声をかける。
近くで見るとより綺麗だな。ドレスも似合ってる。
侯爵とは面識があるから侯爵にお伺いを立てる。
見てる。すごい見られてる。でも嫌な視線じゃない。
自己紹介すると、ぱあっと顔が明るくなった!可愛いな!
レオおじ様だと?何て呼ばせてるんだよ父上は!
ダンスに誘っても嫌な顔せず、喜んで!と言ってくれたのは初めてだ。
普通に話もしてくれてる。父よなぜそんな好かれているんだ。
髪色も素敵だと?しかも本心から言っている顔だな。優しいんだな。
これだけで、来てよかったと思える。
1曲踊るだけじゃ話し足りんな。
誘っても、応じてくれた。
レイス殿下も誘って侯爵と4人で話をする。
3歳から知り合いだったのは知っていたが話の取っ掛かりだ。
父の顔が好きだと?子供が?
と思っていると、令嬢がレイス殿下に食べさせている。
レイス殿下も普通に食べている!え?こんなところで食べさせるのか?驚いて見ていると、レイス殿下が気づいたようだ。
恋人ではないと聞いていたが、恋人なのか?距離も近いし。
「その、レイス殿下とティアナ嬢は恋人なのですか?」
2人ともから否定された。
無意識とは?
ああ。皆が甘やかし、甘えた結果か。父までか…何をしてるんだ父上は!
しかし、恋人同士にしか見えんぞ。違うと聞いてもそうとしか思えない。そりゃ噂になるだろう。
やめる気ないのか?
父が言っていた事と同じ事言ってるな。
社交界にいたくない、王家に言うこと聞かすってすごいな。可愛い顔して強い。
結婚願望がなくて、社交界に出たくなくて、俺を見ても顔をしかめないし普通に接してくれる。
「ふむ。ティアナ嬢、私の見た目はどう思う?」
「レオおじ様に似ていてとっても素敵ですわ」
父に似ていて初めて良かったと思えた!
気付いたら口にしていた。
「私と結婚しないか?」




