43.貴族はめんどくさい
私は14歳になった。
私はお母様から、令嬢の嗜みを叩き込まれている。女性のお茶会は戦場だ。マナー違反はご法度。
私は爵位を笠に着て傲慢に振る舞うつもりはないし、できれば遠ざかっていたい。
私は半分ぐらいの貴族令嬢からは嫌われているし、ほとんどお茶会に出ていないから半分ぐらいは私のことを知らない令嬢だと思う。
それでもたまに出るお茶会で、私を咎めるような人がいる。
こそこそ
「あの方ですわよ。第二王子殿下の」
「よく第二王子殿下となんか一緒にいられますわよね?」
「おぞましいですわ」
「王太子殿下もよく一緒にいらっしゃるそうですわよ」
「まあ!第二王子殿下に近づいて王太子殿下の婚約者の座を狙ってるのではなくて?」
「いい人ぶって、最低ですわ」
言われ放題である。ま。好きに言ってちょうだい。おぞましいのはお前たちの脳内だ。
ここにレイがいれば私は反論するのだが、レイがいなければ直接言ってこないのは無視している。
結局僻みじゃない。羨ましいだけでしょ。仲がいいのが。
「聞こえてらっしゃらないのかしら?」
「ふてぶてしいわね」
「あの。ティアナ様すごい言われようですが反論しないのですか?」
「あれに反論したら嬉々とされるだけですわ。気にしてませんわ」
「ティアナ様はお強いのですね?私なら泣いてしまいそうですわ」
これは同情しているように見せかけて、図太いですわね。と言われてるのである。
はあ。疲れる。帰りたい。
貴族令嬢の義務とはいえ、こんなもの出たくもないし何なら領地にこもりたい。
断れないお茶会はこうして乗り切っている。
ある日、エリー様に呼び出された。
「ティア、心無い噂が出回っているわ」
「レイをだしにカイル兄さまの婚約者になろうとしている。ですか?」
「そうよ。ティア、レイをかばってくれるのは嬉しいけれど、あなたのイメージが悪くなっているわ」
「かまいませんよ。どうせ表にはできるだけ出ない予定ですし、カイル兄さまが婚約者を決めたら少しは落ち着くでしょう?」
「それがね、ティアが婚約するまで自分は婚約者を作らないと言っているのよ」
はあ。これである。兄達も皆そうなのだ。おかげさまでそのしわ寄せがこちらにきてるのである。
「ティア、カイルかレイと婚約するつもりはない?」
「ありません。カイル兄さまもレイも同じことを言うと思います。私たちは仲がいいですが恋愛のそれではありません。2人が可哀そうなので婚約者は別の方にしてください」
「そう?ティアはもう娘のようなものだし、本当の娘になってくれたらと思ったのだけど」
「デビュタントまでもう表に出るのをやめようと思います。王家主催も療養中でかまいません?」
「それは構わないけれど、そうしたら王宮にも来られないじゃない」
「ご学友も役目返上ですね」
「私とヴィクトルがティアに会えないのは寂しいのよ」
「2年我慢してくださいエリー様。私がこれ以上悪女になってもよろしくて?」
うるうる。久々のうるうるである。
「ああ。ティア私が我慢するわ。ごめんなさいね私の思いばかり押し付けて」
「いいえ。エリー様、私のことを考えていただきありがとうございます」
疲れた。スノウに癒されよう。
甘いものも食べたいし、気分転換に街へ行こう。
スノウを連れてエリックとカフェに向かう。
向かってる途中で、何人かに囲まれた。
ふぅ。
かかってきなさいよ。やってやるわよ。こちとら今イライラしてるのよ!
エリックとともに戦う。6人だ。叩きのめす!!
縛り上げておく。
「ティア!!」
「あら?レイ!どうしたの?」
「どうしたの?じゃないよ!スノウが呼びに来たんだよ!よかった!無事で!!」
抱きしめられる。
「スノウが?弱かったわよ。こいつら。連れてってくれる?何か王太子がどうとか言ってたし」
「ティア。強いからって戦っちゃいけないでしょ。逃げなきゃ」
「だって…。むしゃくしゃしてたんだもん」
「だってじゃないの!」
「お父様達には黙っててくれる?」
「今回はだめ!もう何度目だと思ってるの?」
はて。何度目だったか。そう。私は何度も狙われている。スノウ関係であったり、王子たち関係であったり。
今まではレイに言って黙ってもらっていたがそうもいかないらしい。
ティアは実は喧嘩っ早くて、好戦的です。
いつも、私は貴族。私は貴族。と我慢しています。




