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愉悦

【Rileyu:あなたが正面から撃ち負けるだなんて、珍しいですわね】

【DarkGuru:なんか、このまま終わっちまうのも寂しい気がしてさ】


(冗談……ではありませんの?)

 麗羅は横目で彼を見たが、決して冗談を言っている顔ではないし、虚勢を張っているようでもない。

 もちろん、勝ちを諦めたようにも見えない。むしろ、その目は輝いていた。


 12ラウンド同士で並んだ場合、そこから先はオーバー・タイムと言われ、テニスのデュースのように先に2ラウンドの差をつけたほうが勝利となる。

 少なくともあと2ラウンドはゲームが続くということだ。


 ここから先はラウンドごとに武器はリセットされ、キャッシュは5,000持った状態から始まる。攻守は1ラウンドごとに交代となる。


 まずはP高の攻撃からだ。


【RisuxRisu:もう疲れたデス。早く終わらせまショー】

【Riley:がんばりましょう、アリス。ここからスタミナ勝負ですわ】


 前なら『DarkGuru』もアリスと同様のことを言っただろう。なのに、実際に出た言葉は「終わらせたくない」だ。

 一体、彼に何があったのかと、麗羅は驚いていた。

 だが、もっと驚いたのは、自分も彼と同様の気持ちになっていたことだった。


 最初はゲームを楽しいと思ってやっていたはずだ。

 いつからだろう、これほど勝つことに固執しだしたのは。まるで成績を伸ばすことを上から強要されるサラリーマンのように、心を殺してやっていた。

 勝つための工夫、努力、計略などは、いつしか楽しさとはかけ離れたものになっていた。


 今はもう、次のラウンド開始が待ちきれなかった。


「集中! 集中切らすな!」


 真希波は背後から声を出す。

 ヘッド・セットをしている彼女たちに聞こえているとは思えない。

 だが、そうせずにいられなかった。

(まだ疲れはないはず。そんで、追いついたのはこっち。流れはきてる)

 ここが勝負どころ。真希波はあえて、それは言わなかった。

 下手に言うことでプレッシャーを与えたくなかったからだ。

 そして彼女たちの表情を見た時、そんなこと言わずとも彼女たち自信が十分理解していると感じられたからだ。


 勝てばマッチ・ポイントとなる大事なラウンド。

 攻撃のP高は一気に勝負に出た。

 最高の装備を買い、全員でアルファへ進撃である。


【DarkGuru:『Riley』たちはそっちから!】

【Riley:了解ですわ】


 麗羅、アリスと『DarkGuru』、『Comet』、『Temp』で二手に分かれ、別の入り口からアルファへエントリーを試みる。

 対し今女の防衛は声呼と良瑠の二人だけだ。

 味方がやってくるまで持ちこたえられるかどうかが鍵となる。


【Seiko:三……いや、全員こっちからきてる!】

【Raru:無理しないで、一度引こう!】

【Seiko:オーケー!】


 相手の人数を見抜いた二人は一旦、退却を選んだ。

 ここは一度譲り、人数を揃えてから取り返すという算段だ。

 窮地において冷静な判断といえよう。


 あっけなくアルファを奪ったP高はロケット設置を完了させる。

 ここまでは上手くいった。

 あとはこれを守りきれるかどうかだ。


【Comet:奥から!】


 彼は索敵スキルを使い、早めに敵を察知する。

 そこは一番敵が使いやすい入り口だ。もちろん、すでに警戒している。

 麗羅とアリスは、その裏から回り込むよう動いていた。

 が、二人の到着前に今女は動いた。


【Temp:だあああ! ダウン!】


 まず『Temp』がやられたが、すかさず『Comet』がカバーし友愛をダウンさせる。

 一人づつ交換したが今女は攻めの手を緩めない。

 まず先頭を行く声呼が『Comet』を撃ち抜き、侵攻してきた。


【DarkGuru:一度下がる!】


 『DarkGuru』はそう言うと、アルファから出るような動きを見せる。

 当然、それを逃すまいと声呼が追いすがるが、単独で追いすぎた。逆に『DarkGuru』からダウンを奪われてしまう。


【Jyuna:追うな! リテイクはできた!】


 彼女の言葉は間に合わなかったが、三対三の状況でリテイクはできた。

 あとは解除すれば勝ちとなる。良瑠が取り掛かろうとするが、そこを後ろから襲われた。

 麗羅たちが間に合ったのだ。


【DarkGuru:あと二人!】


 こうなると、今女は解除するよりも相手を全滅させた方が現実的だ。


 麗羅は慎重に、耳を澄ませた。

(こちらから二人)

 足音から相手の位置は特定できた。

 音が近づいてくる。もう目の前の角から体を出す寸前だ。

 敵の頭があるだろう位置に、レティクルを合わせる。


 どこかから飛んできた弾丸が、樹那を撃ち抜いた。


【Jyuna:なっ、どこから!?】


 麗羅の得意とする、壁抜きだった。


 これにより圧倒的有利となったP高は最後の一人を仕留めるべく、ポイントのクリアリングに入った。

 残された灑は半ば強引に攻めに転じたが、角からピークした先には運悪く麗羅とアリスの二人がいた。

 さすがの彼女も、二人を同時に相手にしては勝ち目が無かった。


 これで12-13、P高のマッチ・ポイントである。

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