表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/78

GWコミュニティ大会

 入学から半月ほど経ったその日。

 今女CEチームは樹那のルームに集まっていた。


【Jyuna:今日、集まってもらったのは、大事な話があるからなんだ】

【Makina:んなことより、みんなが集まるんですから、ソファーの一つでも用意してくださいよ、立ちっぱなしじゃないッスか。これじゃ疲れますって】

【Jyuna:アバターなんだから別に疲れないだろ!】

【Alice:ミーもそう思いまス。疲れないと言っても、気分の問題デス。それに多少の飾りつけも無いなんて、樹那先輩は女子力ゼロなんデスか?】

【Jyuna:ぐっ! う、うるせぇ! ルームなんて普段は使わないから良いんだよ!】

【Reira:樹那先輩。それよりも大事なお話とは?】

【Jyuna:ああ、うん。それなんだが、実は大会に出ようと思う】

【Makina:おおお! 大会! 盛り上がってキター!】


 大会、そう聞いても声呼は我関せずという感じでぼーっとしていた。

 一年の自分に出番は無いだろうと考えていたからだ。


【Alice:どの大会デスか?】

【Jyuna:ちょうど良いのがあってな。これよ】


 樹那はルームの壁にスクリーンを表示し、そこに大会のサイトを映し出した。

 ルーム内ではこのように画面の共有ができるのだ。


【Reira:女性限定CEコミュニティ大会ですか。なるほど】

【Makina:女性のみッスけど、年齢制限は無し? 一般の強い人も出るかもしれないッスね】

【Jyuna:うん。でもまぁ、この大会はあくまで慣れるためだよ。勝つのは二の次】

【Alice:先輩が勝ちにこだわらないとは珍しいこともあるんデスね。クレイジーな負けず嫌いなのに】

【Jyuna:クレイジーは言い過ぎだぞ、アリス。ウチは出ないからな。二年から二人と一年の三人でチームを組んでもらう】

【Seiko:え! 一年全員、出られるんですか!?】


 声呼は思わず現実世界で座っている椅子から立ち上がった。

 アバターは微動だにしなかったので、それは他の皆にはわからなかった。


【Jyuna:その通り! 言ったように、慣れるため、だからな。ウチらの本当の勝負は高校生大会だから】

【Raru:うう……ボク、自信無いです……】


 良瑠は弱々しい声を上げた。

 皆の視線が彼女に集中する。

 同じ一年である声呼と友愛が彼女を両方から挟むように立った。


【Seiko:大丈夫だよ良瑠。練習なんだから気楽にいこうよ】

【Toa:そうそう。友愛だってまだまだ全然だし。ハンバーグいっぱい食べれば平気、平気!】

【Seiko:いや、友愛。大食い大会じゃないんだけど】


 良瑠の正面に樹那が歩いてきて言った。


【Jyuna:自信が無くても結構! むしろ、これで自信を付けてもらえれば最高だな。まずは勝つより楽しめ!】

【Makina:どころで先輩、二年からは誰が出るッスか?】

【Jyuna:二年は真希波と麗羅に出てもらう】

【Alice:ミーは出られないんデスか? 先輩の目は節ホールなんデスか?】

【Jyuna:節ホールて……いや、アリスはもともと度胸があるから大丈夫だろう。真希波は実力不足だから練習のために参加して欲しい。麗羅はIGLとしてメンバーをまとめてくれ】

【Makina:たはー、おっしゃる通り! 勉強させていただきまッス!】

【Alice:そういうことなら仕方ないデス】

【Reira:IGL承りました】


 聞き慣れない言葉に声呼は首をかしげた。

 麗羅の顔を横から覗き込んで聞いた。


【Seiko:先輩、『あいじーえる』って何です?】

【Reira:IGLとは『In Game Leader』の頭文字を取ったものよ。ゲーム内における司令塔という意味ね】

【Seiko:なるほど! ありがとうございます】


 声呼はアリーナ系という、基本一人で競うゲームをしてきたため、まだチーム戦というものに慣れていなかった。

 これまではゲームのルール、マップの構造、武器の性能、キャラのスキルなどなど覚えることで手一杯だったが、ゲームの理解度が上がるほど、チーム・プレイが重要であることを直感的に理解していた。


 そして、このチームで司令塔としての能力が最も高いのが麗羅である、ということもなんとなく感じていた。


(樹那先輩、ちゃんとみんなのことを見てくれてるんだよなぁ)

 麗羅が司令塔とするなら樹那はチームの監督という感じだった。


 監督といえば、普通は顧問の教師がその役目をするはずである。

 だが声呼は、シューター部門の顧問である元谷の姿を、オリエンテーション以来見ていなかった。


【Jyuna:んじゃ、ロリータ先生にはウチから言っておくから。大会はGW。あと二週間切ってるからな。これから大会を想定して練習するぞ!】

【Makina:おーー!】

【Seiko:先輩、ロリータ先生って誰です?】

【Jyuna:シューター部門の顧問、元谷(ひびき)先生だよ。見たことあるだろ? ああいう見た目だから裏ではロリータ先生って言われてんだ。本人には言うなよ?】

【Seiko:そういうことですか。先生って全然、部活にこないですよね】

【Jyuna:ロリータ先生はゲーム知らないしな。来てもらっても指導はできないし。あとシューター部門はバトロワのチームのが活躍してっからな。そっちのが忙しいんだろ】

【Seiko:こっちだってPhase ZEROも全国高校eスポーツ大会も出るんですよ?】

【Alice:こっちは実績が無いんデス】

【Reira:メンバーも足りず、ほとんどやったことのない素人の寄せ集めみたいなチームで小さな大会に出たくらいですからね】

【Jyuna:事実だからってハッキリ言い過ぎだぞ、お前ら。ま、それも去年までよ。今年はやるぞ!】

【Makina:おーー! ほら、お前たちも続け!】

【Seiko:お、おーー!】

【Toa:うおーー!】

【Raru:お……おお……】


 あまり運動部的なノリが得意でない声呼だったが、大会が決まり、心の内部に小さな火が灯ったのは確かだった。


 感想などお待ちしております。ちょっとしたことでも大変励みになります。誤字脱字などありましたらお気軽にお知らせください。助かります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ