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ファースト・ラウンド

 ちょっとゲームの説明多めで元ネタのゲームをやっていないとわかりにくいかも知れません。未プレイのかたは飛ばし読みで大丈夫です。

 大歓声の中、第1ゲーム、ファースト・ラウンドが始まった。


 声呼の中で、さっきまでの耳をつんざくような騒音が、ボリュームのツマミを回していくように小さくなっていく。

 ノイズ・キャンセリングの力ではない。集中力が高まるとそうなるのだ。


(最初が肝心!)

 声呼は自分自身に言い聞かせた。

 このラウンドを取ることでキャッシュ的に有利にもなれるし、勢いもつく。ファースト・ラウンドは互いにとって重要なラウンドだ。


 攻撃側であるP高校は、全員でアルファを攻めた。


 その速攻に今女は焦り、飛び込んできた『DarkGuru』により良瑠をダウンさせられてしまう。

 『DarkGuru』を友愛がダウンさせたものの、数の多さに一度退却を余儀なくされてしまった。

 そのままアルファを奪われ、ロケットを設置されてしまう。


 全員でリテイクに向かった今女は声呼のみを裏から回り込ませ、他の三人が固まってショートから入る作戦にでた。

 友愛が、相手の同じウンゲツィーファー使い、『Comet』をダウンさせたまでは良かった。


 実況が会場に鳴り響く。


【おおー! 『Riley』選手! 三人抜きました!】


 そこで実力を見せつけたのは麗羅だった。

 『Comet』のダウンから敵の侵入経路を予測。アポロンを待ち、構えた。


 麗羅の使うコントラクター、カウンセルはディフェンダーながら攻撃的なスキルを多く持つ。

 スキルの一つに、アポロンというヘヴィー・ピストルがあるのも特徴だ。

 弾一発を100クレジットで購入するという特殊な拳銃だ。

 さらにADSが可能でサイトの倍率は1.5倍となっている。


 予想通り、ダウンを奪った勢いのままにピークしてきた友愛を一撃のもとダウンさせると、カバーのため飛び出てきた樹那も続けて正確に撃ち抜く。

 それを見た灑は、あえてワンテンポ遅らせてエントリーしたが、麗羅の反射が上回った。

 あっという間に3ダウンを奪う。


 ここで一度、リロードを入れたのだが、ちょうどその時、声呼は麗羅の上にある通路にいた。

 リロードの音を聞き、チャンスと見て飛び降りた。

 降りた先は麗羅の眼の前、という不運もあった。あるいは飛び込んだタイミングがやや遅れたのが悪かったのかもしれない。

 ちょうどリロードを終えた麗羅の反応が、声呼のそれを上回った。


【Seiko:グッ!】


 思わず歯噛みした。

 完全に麗羅一人にやられてしまった格好である。

 負けたこともあるが、こうなると勢いに乗られてしまう可能性がある。


【Jyuna:落ち着け。まだファースト・ラウンドだ】


 良くない負け方をしたときは、意識を集中し直す必要がある。

 その役目はリーダーである樹那の仕事だ。


 続く2ラウンド目、今女はエコ・ラウンドを選択。

 連続で落とすことも覚悟で3ラウンド目から逆転を狙う構えだ。


 P高はまたしても、アルファを攻めた。

 しかし、今度はその動きを予想していた今女は全員でアルファを防衛していた。


 五対五でのエリア取り合いとなる。

 こうなると、防御側が有利かと思いきや、武器の差が出てしまった。


 今女は友愛が生き残り、P高は『DarkGuru』とアリスが残った。

 ここでP高はロケットを設置せず、二人がかりで友愛を倒しにいった。


【Toa:わっ! 来た! 二人かよ!】


 友愛は設置中を狙おうと待っていたのだが、予想外の来襲に驚き、エイムが乱れてしまった。

 残り時間わずかというところで、そんなに強気の攻めをしてくるとは思わなかったのだ。


 こうなると友愛に勝ち目はない。


 しかし、ここでの負けは予定通り。問題は次のラウンドである。

 キャッシュをセーブし、フル・バイで勝負をかける今女。P高も当然、それを予測している。


 今女は、3ラウンド目もアルファに重きを置いた布陣だったが、P高が裏をかいてベータに変えてくる可能性も考慮し、ベータに灑、どちらにもすぐ行けるようミッドには樹那を配置した。


 P高は連続してアルファを攻めた。麗羅と『Temp』がアルファの正面口から、あとの三人がミッドを通るルートで攻める。

 ここで樹那が、三人の中のでも強敵の『DarkGuru』を倒した。これは待っていた場所が良かったのもあるが、『DarkGuru』のクリアリングのミスもあった。勝てるという油断があったのかもしれない。


【Jyuna:一人、ダウン! まだいる!】


 この報告を聞き、すぐさま反応したのが友愛だ。

 樹那の背後にウォール・スフィアを展開し、敵二人との間に壁を作った。

 その二人は樹那を無視し、アルファへエントリーしたのだが、これが失敗だった。友愛はあえて、その道を残すように壁を作ったのだ。

 待ち構えていた友愛に連続してダウンさせられてしまったのだ。


【Toa:二人! やった!】

【Seiko:ナイスゥ!】


 これで五対二。残すは正面からの二人だ。

 ここでエントリーしてきた麗羅を、良瑠が仕留めた。

 箱からピークした一瞬を見逃さなかった。


 良瑠は最後に残った『Temp』に倒されてしまい、パーフェクトとはならなかったものの、その『Temp』を灑が追い詰め、倒す。

 この大事な場面を、今女が完璧に近い形で取りきったのだった。



※『ADS』とは、『Aim Down Sightエイム・ダウン・サイト』の略。『サイトを覗いて照準を合わせること』を指します。主にFPSのeスポーツで撃ち合いの際に出てくる用語です。

 感想などお待ちしております。ちょっとしたことでも大変励みになります。誤字脱字などありましたらお気軽にお知らせください。助かります。

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