表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/78

新パターン

 やはり初戦を勝ち上がり二回戦目の相手となったのは、バロック大阪高等学校『Burning(バーニング)』であった。

 ランクで言えば今女の方が上だが油断してはならない。事前にそう話し合っていた相手だ。

 試合は今女がやや優勢ながらも、かなりの接戦となっていた。


【Seiko:やっぱカンタンにはいかないね】

【Makina:予定通り、新パターンを試してみるか。決勝までとっておきたかったけど、しゃーない】


 おそらく、このままでも勝てるだろうというのが真希波の予想だ。だが万が一ということもある。

 思いのほか苦戦している理由は明らかだった。それは、相手がこちらの対策をきちんとしてきているからだ。

 ここまでの勝ち上がってくるということは、公のもと行われた試合数もそれなりになる。

 お互いに、手の内は隠しようがないのだ。当然、こちらがそうするように相手も対策も練ってくる。


(新パターン、アレか……)

 声呼は不安だった。確かに練習は何度もしてきたが、果たしてこの本番で通用するのかどうか。

 前半の防御側が終了し、ここまで7対5で2ラウンド勝ち越している。

 この場面で、そのリスクを負うのは正しいのだろうか。


【Raru:よろしくね、声呼ちゃん】

【Seiko:うん。背中は任せるよ】


 新パターンとは攻撃時、戦力を二つに分ける作戦だ。

 一つは突破力に優れる声呼と良瑠を組ませる。

 もう一つは、それぞれに弱点を補い合える残りの三人で組む。

 真希波の計算では、これで戦力は同程度になるとのことだった。


【Makina:声呼たちはアルファへ。アーティファクトは良瑠が。樹那パイセンたちはベータね】

【Jyuna:了解】

【Seiko:分かりました】


 アーティファクトを持っている方をメインとしているが、どちらかが制圧に成功した場合は、そちらに集まることになっている。


【Seiko:ショートから行く】

【Raru:オーケー】


 声呼は始めると同時に迷いなく最短ルートを素早くクリアリングしつつ進んだ。

 良瑠はその後に続き、声呼の手が回らないであろうところを注意しつつ、カバーしている。

 アルファの外にいた敵一人を一瞬で倒した声呼は、そのままアルファへ入る入り口から中を覗きつつ通過し、向こう側まで渡った。

 良瑠はそのまま手前側で待機する。


【Seiko:同時に行こう】

【Raru:いいよ。せーのっ!】


 良瑠の掛け声と共に二人は同時にエントリーした。ダブル・ピークである。

 声呼はハッソウを使い、大胆に行ったのに対し、良瑠は通常のピークだ。

 その入り口を見張っていた敵は一人、声呼に気を取られ、そちらを向いた瞬間に良瑠からダウンを奪われた。

 さらに奥にもう一人いたが、そちらは声呼が持ち前の撃ち合いの強さで難なく倒す。

 二人は内部をクリアリングしたが、他の敵は見当たらない。


【Seiko:アルファ、クリア】

【Raru:設置します】

【Makina:了解。みんなアルファへ】

【Jyuna:よし】


 このラウンドは新パターンが気持ちよく決まり、勝利をおさめた。

(うん、敵も焦ってるな)

 声呼もホッと胸を撫で下ろす。

 これまで無かった攻め方、しかも虚を突くためハイ・スピードだったため、敵の対応が遅れたのだろうと考えた。

 だが勝因はそれだけでは無かったらしい。


【Seiko:また一緒に行くよっ】

【Raru:うん。さん、にー、いち、ごー!】


 二人の組み合わせの相性が、本人たちの想像以上によくなっていた。

 練習でも手応えは感じていたが、なぜかその時よりも遥かにスムーズになっている。

 最小限の伝達をするだけで、相手が何を望んでいるのかお互いに理解できた。

(何でだろ。今日は上手く決まるなぁ)

 それがなぜなのか、声呼にはまったく分からなかった。


【Jyuna:ナイス! 次もいくよ!】

【Toa:みんな、ナイスー!】


 作戦が上手くハマると、チームのテンションも高まっていく。

 気づけば今女は2ラウンド、3ラウンドと連取していた。


【Jyuna:そろそろパターン変えるか?】

【Makina:いえ、上手くいっているうちは変えないでいきましょう】


 同じことを続けていけば相手も対応してくる。

 当然、バロック大阪高等学校『Burning』も臨機応変に対処できるだけの力はある。

 だが彼らでも、声呼と良瑠のコンビを止めることはできなかった。


【Seiko:良瑠っ】

【Raru:いいよ!】


 もはや、彼女たちの連携は以心伝心と言っていいほどのものになっていた。

 それゆえ、プレイングのスピードも早まっていく。

 もはや、見てから動く、考えてから動くという対応では間に合わない。

 『Burning』も二人の動きを予想し、待ち構えてはいる。

 しかし、二人はその予想を軽々と超えてみせた。


 終わってみれば、後半は6ラウンドを一気に取り、第1ゲームを勝利した。

 この作戦の強さを確認した真希波は、第2ゲームからそれをあえて封印した。

 そのせいで苦戦することにはなったが、13-11でなんとか勝ちきり、今女は準決勝を2ゲーム連取でストレート勝利したのだった。


 感想などお待ちしております。ちょっとしたことでも大変励みになります。誤字脱字などありましたらお気軽にお知らせください。助かります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ