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決勝『MIH』戦

 作戦が良くとも、それを忠実に実行できる腕が無ければ意味はない。


 しかし、真希波は作戦を上方修正すべく脳をフル回転させる羽目になった。

 思いのほか、彼女たちの成長が著しかったからだ。


「一人ダウン」


 声呼から報告が上がる。

 自分の予想より早い


「声呼、危ない。あ、やったもう一人ダウンです」


 作戦を修正するより先に友愛からの報告も入る。


「こっちもダウン取りました。ベータに他の敵影なし」


 さらに良瑠からも。

(もうここまで倒したら、あとはどうやっても勝てるか)

 ついには真希波は考えるのをやめた。


「よし、ベータに設置する。声呼、友愛は移動して」

「了解」


 準決勝まで来ると、相手もイン・ヒューマンが三人に、ダイヤが二人と高ランクになってくる。


 こちらはイン・ヒューマン二人なので平均ランクでは負けているはずだ。

 が、ここまでは今女が圧倒していた。


 真希波の作戦には誰かが倒された場合、人数不利になった場合、ラインを上げるのを阻止された場合、ラウンドを取られた場合などなど、あらゆる事態を想定していたが、そういった不利な状況にはほとんどならなかった。


 落としたのはエコ・ラウンドのみ。計算された負けである。


「先輩、決勝の相手ってやっぱ松原高専ですかね?」

「いや、声呼。まだ試合中だぞ、集中しろ」

「すみません。なんかもう勝てそうなんで」

「ま、そう思う気持ちは分かるけど、確定するまで慢心するなよ」


 すっかり勝った気でいる声呼だったが、その気持は当然だった。

 もはや、誰も負けるということを想定していない。

 それは新入りの灑も同じだった。


「松原高専って強いんですか?」

「あー、灑は知らないか。Phase ZEROでは予選決勝でそこに負けたんだよ。今回は関東ブロックから二校が決勝にいけるんで、次で負けても大丈夫なんだけどな」

「いや、でもわたし、勝ちたいですよ! 勝って決勝に行きたいです!」


 やはり声呼の気持ちはすでに決勝に移っているらしい。

 それは灑以外、同じだった。

 良瑠も友愛もうなずいている。


「声呼ちゃん。今度こそ、勝とうね」

「ダイジョブ! 友愛たちなら勝てるって!」


 真希波は呆れてため息を一つついたが、気持ちは分かってしまう。

 しかし、立場上、ここは気を引き締めねばならない。

 厳しい顔を作り、言った。


「ほら! それは良いから、ゲームに集中!」

「あ。こっちダウン取りました」と声呼。

「こっちもです」良瑠も続く。

「友愛も!」

「あちしもです~」

「じゃあもうあと一人じゃねぇか! もう倒しちまえ!」


※※※


 松原情報高専は四年生の学校だ。したがって、他のチームと違い三年の引退が無い。

 ただし、大会の規定により四年生は出場できない。

 そこが松原の強さの一つでもあるのだが、前回とチーム・メンバーが異なっていた。

 前回参加していた二年が抜け、新たに補欠から昇格した一年が一人加わっている。


「その一年もイン・ヒューマン。他校だったら即レギュラーの実力者だ。三年と入れ替わったくらいのヤツだからな。前より強くなったと考えた方が良い」


 真希波は自身のスマホを片手にそう言った。

 その中に、作成した資料が入っているらしい。


 決勝が始まるまでの空き時間。各自がトイレなど済ませたところで、真希波から松原の情報が共有されている。

 この予選は配信がない。よって、ここまでの相手の戦いは知る由もなかった。


「松原は今回、1チームしか登録していないけど、実力者が多いらしい。部内だけでスクリムができるみたいだ。配信しているヤツもいない。よって非常に情報が少ない。だが昨日の予選の試合結果から少しだが情報が得られた」


 そう言うと、真希波はスマホを机の上に置いた。手振りで皆に見るよう促す。

 一同が集まると、スマホ画面には何やらグラフのようなものが表示されていた。


「先輩、これどういう意味ですか?」


 友愛は苦手な数学を思い出したのか、表情に不快感が見える。


「『MIH』の攻撃ラウンドと防御ラウンドの戦績だ。赤いほうが攻撃、青いほうが防御な。見てもらえば、どちらも勝ち越しているが、僅かに攻撃側が高いのが分かると思う」

「それってどういうことです?」友愛はまだ理解が追いつかない。

「つまり、『MIH』は防御が苦手な攻撃型チーム、ということだ」

「と言っても、ほんの僅かの差でしかないですよ?」良瑠は食い入るように画面を見て言った。

「うん。ほとんどの試合、相手を圧倒してるからな。防御が苦手って言っても、攻撃に比べたらってだけの話だ」

「それじゃ参考になんないっすよー」声呼は口を尖らせる。

「それじゃもう一つ。これは大会じゃなくて選手のランク・マッチのデータだ」


 CEのプレイヤーは全員、戦績を記録されている。

 それは公開されており、いつでも誰でも参照できるものだ。

 それによって事前の相手のランクも分かるわけだ。


「注目はコイツだな」


 真希波は一人の選手の名前をタップする。

 すると更に細かいデータが表示された。

 そこに映し出されている数字はにわかには信じられないものだった。


 感想などお待ちしております。ちょっとしたことでも大変励みになります。誤字脱字などありましたらお気軽にお知らせください。助かります。

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