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友愛の力

 十二月。いよいよ全国高校eスポーツ大会オンライン予選が始まる。

 予選は全国を7ブロックに分けて行われ、それぞれの代表を決定する。

 ブロックは北海道、東北、関東、中部、関西、中国・四国、九州・沖縄とあり、このうち登録数の多い関東のみ、2チームが代表となる。

 オフラインの決勝大会には8チームが参加することになるわけだ。


 今女は関東の代表となるべく勝ち上がらなければならない。

 関東の参加チームは64。十二月の第三土曜、日曜の二日かけて行われる。


 の、前に、声呼たちには最初の敵が立ちはだかっていた。

 期末テストである。


「分かっているとは思うけど、ここで赤点とったら大会どこじゃないからな」


 という真希波のプレッシャーもあり、期末前の二週間は部活を休止。皆、勉学に励んだ。


 学力で言うと、真希波と良瑠は学年でトップ10に入るので心配はない。

 灑はそこまではいかないが、平均以上の成績を常に取っている。

 怪しいのは声呼と友愛の二人だ。


【Toa:声呼、勉強進んでる?】

【Seiko:まぁまぁ。そっちは?】

【Toa:こっちもそれなり】


 二人は夜遅くにメッセージのやり取りをする。

 お互いの探り合いというか、励まし合いというか、そんなやり取りが日常になっていた。


【Toa:良瑠に勉強教えてもらおっか?】

【Seiko:教えてもらいたくてもさ、どこが分からないのかが分からないんだよ】

【Toa:それな】


 声呼は高校受験を経て、かなり勉強法は上達した。

 だが高校に入ると明らかに勉強のレベルが上がり、ついていくのがやっとになりつつあった。


 声呼は勉強中はパソコンを落とし、スマホだけ机の上に置いていた。

 そこにGATEスマホアプリに通知がくる、というわけだ。


 このせいで集中できないという面は確かにあり、声呼も電源を落としていたことがある。

 しかし、そうすると友愛からメッセージが来ているのでは、と気になってしまい、かえって集中できないということが分かった。

 友愛とやり取りをするのは、適度な息抜きにもなる。


【Toa:友愛、あの先生苦手なんだよね。声が小さくて何言ってるか聞こえないんだもん】

【Seiko:そのくせこっちが当てられて答えてると「声が小さい」って言ってくんのな】

【Toa:ホントだよ。それ、みんな言ってるもん】


 教師の陰口を言うのも、高校生の気晴らしとしてはちょうどよかった。


【Toa:声呼って何が得意科目なの?】

【Seiko:わたし? 英語かな】

【Toa:えっ? それ意外だわ】

【Seiko:わたしにどういうイメージ持ってんのよ。いや、実はさ、海外の友達が結構いてさ】

【Toa:えー!? そうなの? いいなぁ。どうやって作ったの?】

【Seiko:昔からアリーナ系FPSが好きなんだけどさ、日本ではあんまプレイヤーがいなくて。それでPingは悪いんだけどよく海外のサーバーまで行ってたんだよね。そういうとこからできた繋がりがあるんだ】

【Toa:なるほーねぇ。ゲームも案外、役に立つんだね】

【Seiko:ネット環境が整って海外の人と遊べるようになったからね。ただ、会話は結構できるようになったんだけどさ、それと受験英語はやっぱ違うんだよね】

【Toa:会話できるだけでもすごいよー】

【Seiko:覚えた言葉が実はスラングだったりしてさ。そんなのテストに出ないし】

【Toa:スラングって何?】

【Seiko:俗語って言うのかな? 辞書に載ってなかったり、ある界隈でしか通じない言葉。日本語で言ったら『ガチ』とか】

【Toa:あー、そりゃテストに出ないヤツだ。つか『ガチ』って英語で何て言うの?】

【Seiko:んー『literally』かな】

【Toa:そういや良瑠も英語だけは勉強しときなって言ってたな。将来プロになるなら海外も視野に入れなきゃダメだって】

【Seiko:へー。つか、良瑠ってプロ目指してんの?】

【Toa:結構マジみたい。よくプロになるにはって話してる】


(友愛ってそんなに良瑠と仲良かったっけ?)

 と声呼は少し羨ましく思った。良瑠とはあれ以来、なんとなく疎遠になっていたからだ。

 それでなくとも、良瑠は人見知りなところがあるし、本人も一人でいることが多い。一人が好きだとも言っていた。


【Toa:そいえば、灑って時々変な言葉使うなぁって思ってたんだけど、聞いたら北海道出身なんだって】

【Seiko:そうなんだ? 引っ越してきたの?】

【Toa:お父さんの転勤がきっかけで、一家で引っ越したんだって】


(灑とも連絡しあってるのか。友愛のコミュ力、すごいな)

 声呼も初対面の人と距離を詰めるのはあまり得意ではない。

 友愛と仲良くなってのも、友愛から話しかけて来てくれたからだ。


【Toa:真希波先輩は実家が和菓子屋らしいよ。今度、買いに行こうよ】

【Seiko:イイね……って、真希波先輩ともそんな話してんの?!】

【Toa:そうだよ。真希波先輩、めっちゃ面白い人だよ】


(これがコミュ強か……)

 声呼は友愛の思わぬ力に戦慄し、同時に尊敬の念を覚えたのだった。


 感想などお待ちしております。ちょっとしたことでも大変励みになります。誤字脱字などありましたらお気軽にお知らせください。助かります。

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