表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/78

大詰め

【Seiko:ダウン!】

【Reira:仕方ありません、エントリーしますわ!】


 無謀ではあったが、声呼がチャンスを切り開いたのは確かだ。


 麗羅たちは声呼に続いてベータへ入り込む。

 ロケット解除までまだ十分(じゅうぶん)時間がある。


 今度は慎重に、奥へ進んでいった声呼がロケットを見つけた。


【Seiko:ロケットありました! 敵、いません!】

【Reira:わたくしが解除いたします。みなさんは周りを警戒してください】


 麗羅、真希波、友愛が声呼のもとへ向かう。


 だがその時、三人が近すぎたことが悲劇を呼んでしまった。

 三人の頭に次々に弾丸がヒット。一気に3ダウン奪われてしまう。


【Toa:ちょ! 嘘でしょ? (うま)すぎぃ!】

【Makina:例の:イン・ヒューマンっぽい奴だ】


 真希波はログを確認した。

 ダウンを奪った敵のプレイヤー・ネームは『DarkGuru(ダークグル)』。

 そしてもう一人、『Comet(コメット)』もかなりの使い手だった。


【Reira:申し訳ございません。声呼、良瑠。あとはお願いします】


 人数は二対二。

 まだ並んだだけのように思うが、こちらは初心者二人。


 敵は下げランの被疑者である。

 楽観できる状況ではない。


 良瑠は弾丸が飛んできた方向へ向かい、ウォール・スフィアを展開する。


 彼女の使うコントラクター、フィローゾファのスキルで、最大800ダメージまで耐える壁を生成する。

 三十秒ほどで消えてしまうが、時間稼ぎはできる。


 良瑠はロケット解除に取り掛かった。

 その間、無防備となる彼女を、声呼は守護する。


 しかし、声呼が見ていた方向とまったく逆から銃弾が飛んできた。


 背後に回り込むまでの時間はなかったはず。

 ということは、初めからそこに潜んでいたということだ。


 声呼もそちらから来るとは思ってもいなかった。


 声呼は振り向きざま、敵を撃ち抜いた。

 だが、それは一歩、間に合わなかった。


 良瑠と『Comet』のダウンを交換する格好となる。

 これで声呼と『DarkGuru』だけが残った。


【Reira:声呼、解除は無理ですわ】

【Seiko:分かってます! 先にダウン取ります!】

【Reira:いいえ、相手はイン・ヒューマン級の実力者です。無理に戦わずとも構いません】

【Seiko:一対一です! いけます!】

【Reira:いけません。相手にダウンを献上することになります。ロケットの爆風でダウンなさってください】

【Seiko:そんな……負けろって言うんですか?】

【Reira:ここは負けで良いのです】


 ダウン1つにつき、200キャッシュが入る。

 ラウンド勝利にしろ、敗北にしろ、なるべくダウンを取られないにこしたことはない。


 ならば最後まで逃げれば良いか、というとそうではない。


 そのことを防ぐため、最後まで生き残った者は1,000キャッシュしか入らないようになっているのだ。

 爆風でダウンすれば相手にキャッシュを献上することもなく、敗北時の1,900キャッシュが満額入るというわけだ。


【Seiko:やります、やらせてください!】

【Reira:声呼!】


 ウォール・スフィアが消えた。

 『DarkGuru』はゆっくりとベータ・ポイントへと歩を進める。

 声呼の姿は見えない。

 『DarkGuru』はロケットが見える位置で待機した。

 解除に来るなら倒す。そうでないなら、このまま待っているだけで勝利となる。


(と、思うだろ? さっきみたいに大きく飛び出せば、コイツも外すはずだ)

 成功体験からの選択。

 再びオーバー・ピークを狙った。


 しかし、相手はそれが通用するランクではなかった。


 敵の姿を視認、DarkGuruは動く声呼に、声呼は動きを止めながら、照準を相手の頭へ正確に合わせる。


 引き金はほぼ同時に引かれた。

 時間にすればコンマ数秒。


 僅かに勝ったのは『DarkGuru』だった。



【Seiko:すみませんでした!】

【Reira:いえ、ナイス・トライでした声呼。切り替えましょう】


 麗羅はそう言ってくれたが、声呼には水中にいるかのような息苦しさを感じていた。

 良瑠は何も言わない。

 あのお調子者の真希波や友愛ですら、だ。


 そこから声呼は麗羅の指示を聞くように努めた。

 だがその動きはぎこちなく、良い時の彼女の姿は見る影もない。


 今女は少しも良いところ無く、そのままストレートで敗北を喫してしまうこととなった。


※※※


 大会後、再び樹那のルームに集まる一同。

 IGLイン・ゲーム・リーダーとしてチームを引っ張った麗羅から労いの言葉が贈られる。


【Reira:お疲れ様でした、皆様】


 各々がお疲れ様と声を掛け合う。

 そんな皆の前に、声呼が歩み出て言った。


【Seiko:あの、最後にわたしからもう一度、今日はすみませんでした!】

【Raru:声呼ちゃん。謝れば良いって思ってない?】

【Seiko:それは……その……】

【Jyuna:よせ、良瑠。各々言いたいことはあるだろうが、反省会は後日だ。今日はもう休め。良いな?】

【Reira:そうですわね。ではお先に失礼いたします。皆様】


 麗羅がログ・アウトすると真希波、良瑠、友愛も続いた。

 誰も声呼に一瞥もくれない。


【Jyuna:声呼。お前も負けを引きずるなよ】


 樹那は肩を叩くような仕草をし、そのまま消えた。

 ルームの主が落ちたため、声呼は強制的に自分のルームへと飛ばされた。


 声呼は暫くの間、そこでただ佇んでいた。


 感想などお待ちしております。ちょっとしたことでも大変励みになります。誤字脱字などありましたらお気軽にお知らせください。助かります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ