私を俯瞰して
生まれた場所で生きるしかなかった。
子どもは無知だから。
それを当たり前に受け入れていた。
母親がイカれていても。父親の頭が悪すぎても。
私を貶し暴言を吐く。
その太った手で私を叩くのは、家の中でだけ。
そんなことにさえ気づかずに。
誰かに話すことさえ思いつかずに。
台風の雨が止んだ朝。
連れて行かれた海。
いまだ荒れ狂う波。海の家の足元まで波が押し寄せていた。
そこに入るように母親に言われた3才の私。
海で事故に見せかけて殺されかけてたことにも気づかない。
そんなあなたは、外では普通のお母さん。人当たりよくご挨拶。
私は怖い。大人全てが。他所の大人なんて更に信用ならない。
私は外から見れば、ただの恥ずかしがりな子ども。
ニュースで流れて来るのは、消えてゆく小さな命。
勇気を出して声をあげたとしても。
誰かが気づいていたとしても救われなかった命。
そして、それは氷山の一角であることは誰もが分かりきっているというのに。
この国は。
高貴な家柄を生きている方々には許せない。
夫婦別姓も。親子関係を完全に断ち切る法律も。
受け継いだ姓を変えることも。
家。家族。家庭。自己責任。
そして行き着く先は苦悩の介護殺人。
『こども家庭庁』だって。
私の魂は救われることはない。
この国では。
生まれながらに持ってる人は崩したくはないこの世界。
この無力な私を犠牲にして。
ただひとつ、やっと訪れた私の救済。
お母さん。死んでくれてありがとう。