ケジメ
騒動が終わった後、レプト達は屋敷に戻ってそのまま休んでいた。食事を摂り、そのまま静かに過ごしているといつの間にか陽が落ちていたのにレフィは気付く。襖の奥に見える外の様子が暗くなってきたのを見て、彼女は同じ部屋にいるレプト達三人に憚ることなく深いため息を吐く。
「はぁ……」
「ん、どうした。そんなでっけえため息吐いてよ」
レフィのすぐ近くに座っていたレプトが首を傾げて問う。それに対して、レフィは元から小さい体を更に小さくし、か細い声で返す。
「リュウさ。あれ、大丈夫なのかな」
レフィの憂いの元はリュウだった。最後に見たリュウの姿である自分からどんどん離れていく彼の背を思い出しながら彼女はその名前を口にする。
「あいつか、ん~……」
レプトはレフィの口からリュウの名前が出てくると、納得するような様子を見せながらも、どう言葉を返していいか悩んでいるようだった。
「まあ、レフィにとってあいつの存在がでかいのは分かるし、だからこそ心配なのも分かるんだが……」
レプトはレフィが彼のことを心配していること自体は想像していたようだったが、それに対してどう言葉を返していいか分からずにいるようだった。それも致し方ないだろう。
カスミはレフィが悩んでいる姿を見ると、助言するように落ち着いた口調で話す。
「私達にどうこうできることじゃないからね。里のあーだこーだとか、口出ししたところでいい方向にはいかないでしょうし。こっちも気にしすぎない方が良いんじゃない?」
「そう、だけどよ……」
カスミの妥協的な言葉を聞きながらも、レフィはリュウについて考えるのをやめられないようだった。問題の解決まではいけないまでも、自分を助けてくれた相手が困っているのに対して何かを返したいのだろう。
ただ、問題がある。その問題をジンが口にした。
「どうあれ、俺達は長くこの場所にいるわけにはいかない。リュウの困難な悩みの助けになることは難しいだろう」
ジンの言葉通り、一行はこの里にもう長くいることはできない。追手がおり、レフィがこの周辺にいることは既に知れてしまっている。危険な状態であるため、翌朝にはもう出ていくとジンが少し前に話した通り、残された時間は少ない。
「そう、だよな。でも……」
ジンの言葉を聞き、納得した様子を見せながらもレフィはまだ濁った声を上げる。そんな彼女の姿をじれったく思ったのか、ジンは咳払いをして言う。
「明日は早朝に里を出て近くの街に着くまで歩き続ける。お前達は早く休め」
「っ……」
無慈悲だが、時間は有限なものだ。そして休息も充分に取らなくてはならない。レフィはこの現状に焦ったような表情を浮かべる。
だが、ジンは補足するように続けた。
「用があるなら早い内に済ませておけ。直接助けることはできないだろうが、気持ちに整理をつける時間くらいはあるだろう」
分かりやすく言外に、彼は告げた。その言葉の意図を察したレフィは、重かった頭を勢いよく持ち上げ、バッと立ち上がる。そして部屋の襖まで駆け寄ったかと思うと、三人を振り返った。
「オレ、リュウと話してくる」




