一件落着
「……大丈夫、気絶してる。多分しばらくは起きない」
リュウは一行にとりあえずは危険じゃないと伝えた。すると、レプトとカスミは深い息を吐いて体に込めていた力を抜く。張っていた緊張が緩み、精神的な疲れが襲ってきたのだろう。命が危険に晒される状況から脱した安心感が、二人をその場にへたり込ませる。
だが、そんな二人の様子とは対照的にリュウとジンはまだ気を緩め切れずにいた。ジンは少女を腕に抱えるリュウの元に歩み寄り、彼に少女の状態を聞く。
「様子はどうだ」
「あまり良いとは言えない。高い熱がある……憶測だけど、あの能力を使うことが、この子に負荷をかけていたんだと思う。だから、これからきっとよくなると思うけど……」
少女は頬をオレンジ色に上気させ、未だ荒い息を続けていた。
少女の熱に関するリュウの考えを聞き、ジンはそれを大方間違いないだろうと言って肯定し、とりあえず気を張るのをやめて息をつく。そして、先ほどの作戦を思い返し、リュウを睨んで小言を言う。
「危うく命を失う所だったぞ。カスミがいなければお前は今頃炭になってるところだ」
「……そうだね。でもまあ、結局安全に済んだしさ」
「それと、だ。どうして最後、あんなに無茶に距離を詰めた。力を使ってくるとは思わかなかったのか?」
「攻撃しようなんて思える状況じゃなかった風に見えたから。それに、捕まえちゃえば、しばらくは安全だと思ったからね」
「何故だ?」
「この子の力は、多分だけど、この子自身にも影響があるんだよ。だから常に自分から少し離れた所から火を放っていたんだ。近付いて抑えれば、自分にも危険が及ぶかもしれないから攻撃はできない。そう考えた」
「なるほど……」
「冷静に僕の服に火を付けるくらいの火力で能力を使ったりすることもできたかもしれないけど、そういう事ができる状態でもなかっただろうしね」
リュウは自分が作戦中に取った行動について説明していった。衝動的に動いていたとはいえ、最低限は安全のことを考えて動いていたらしい。並べられた彼の理屈に、ジンはため息をついて納得の意を示す。
「考えていたのならいい。ただ、もう少し慎重に動くべきだ。この子が危ない状況にあったとはいえな」
「まあ確かにね。でも、自分のしたことに後悔はしてない。忠告は半分くらいの気持ちで受け取っておくよ」
ジンの言葉に、リュウは素直に思っていることをそのまま口にした。無茶は反省しているが、必要なことであったと言う。その返答にジンは、「まあとりあえずはそれでいい」と妥協した答えを返すのだった。
「んまあ、結局全員無事だったんだしよ。そんな目くじら立てることもねえだろ」
「そーよ。それにその子、すぐに休ませてあげた方がいいんじゃない?」
真剣な表情で話すジンとリュウの間に、レプトとカスミが気の抜けた言葉を挟む。その言葉を受けると、ジンはそれもそうだと肩に入っていた力を抜く。リュウはというと、カスミの最後の言葉を受けて少女の状態に目を向けた。リュウの腕の中の少女は、先ほどよりかは幾分か楽なように見えた。
「カスミの言う通りだね。案内するよ、僕らの里に」
リュウは少女を背負うと、三人に振り返って言った。




