風向き
中央塔に配属されていた兵士達を説得し、カスミ達の指示によって彼らが放送を開始すると、塔で勤務していた職員達も協力すると声を上げた。彼らもシャルペスの現状については知らず、その事実の一端について知ると、住民達を助けたいと言い出したのだ。彼らの信用を勝ち取る上で大きくカスミ達に有利に作用したのは、先に兵士達の大部分を懐柔し終えていたことだ。元より同じ場所で勤めていた彼らの説得には、職員達も時間を置かずに応じた。かくして、中央塔ではカスミ達をはじめ、元からシャルペスを統治する側にいた者達でさえ、住民達を外へ逃がそうと奔走していた。
そんな中、エントランスに六人の訪問者が現れた。メリー達だ。エントランスで彼らとの合流を待っていた一行は、カスミを先頭にして駆け寄る。彼女が真っ先に声をかけたのは、同郷の友人であるイルとララであった。
「「カスミッ!」」
「二人共……無事だったのね」
「カスミの方こそ、怪我はないの?」
別動隊の先頭を切って走ってきたイルとララは、カスミに駆け寄ってすぐに心配の声を彼女にかける。二人にとっては、中央塔の制圧という大事を友人に任せたきりの再会だ。彼らの顔には今にも泣き出さんばかりの喜びがあった。それを目いっぱいに収めながら、カスミは屈託のない笑顔で二人の肩を叩く。
「大丈夫に決まってんでしょ? この私よ。難なく片付けてやったわ」
「あ、はは……頼りになるよ」
「流石は腕力ゴリラってところだね」
「あん? 何よララ、さっきは随分ビビッてたくせに」
「う……」
出会い頭、仲良くすればいいものを、ララとカスミは余計な言葉を言い合って互いを睨み始める。このじゃれ合いも状況が良い方向に傾いてきたからこその兆候なのだろうが、心に一抹の不安を抱えるメリーは二者の間に割って入り、仲裁の言葉を投げかける。
「小競り合いは報告と指示が一通り終わってからにしてくれ。さて……」
カスミとララのいざこざをひとまず睨み合うだけのいがみ合いにまで抑えると、メリーはフェイと共に簡単に状況を整理する。
「ここにはもう抵抗する人間はいないのか?」
「ああ。ほとんどが協力的、一部が消極的ではあるが別に邪魔をするようなことはないって感じだ。今動いてるのは街全体への放送と、転送装置までの誘導準備、それと使わない出入り口の封鎖だ」
「……よし。全部うまく行ってるな」
「一応、ここの兵士達が外壁の監視をしてくれているが……そこにも俺達の内の何人かが出向くべきだな」
フェイが監視の人員に信頼のおける人間を置くべきだという旨の言葉を口にすると、それにはリュウとフレイが声を上げた。
「それなら、僕が行くよ」
「私も行こう」
「丁度いい。すぐにでも向かってくれ」
リュウとフレイの名乗りにフェイは思考を挟まずに答える。監視にはある程度の実力が伴った人間が配属されるべきだという彼の前提の考えに合った人間が声を上げてくれたのが大きいだろう。二人はフェイから指示が出ると、すぐに顔を合わせて走り出す。だが、すぐに二人そろって足を止めた。
「えっと……監視室ってどこか知ってます?」
「……俺も知らない」
間の抜けた理由で立ち止まった二人に、カスミ達とジアは呆れのため息を吐く。まごつく二人に、別動隊の方へとついていたカスミ達の簡抜を案内していた男が声をかける。
「場所は私が知ってます、案内しましょう」
「すまないな」
「助かります」
明確な指針を手にしたフレイとリュウは、男の後ろにつき従ってエントランスを走って去っていく。そんな三人の背を見送ったフェイは、改めてメリーと自分達の次の動きについて話す。
「それで、次は……転送装置の座標を入力しなくちゃならないな」
「ああ。それと、カーダって転送先の街にも誘導が必要だ。アルマがどれくらいの準備をしているか分からないからな」
話をまとめるとメリーは一行に向き直り、次の簡単な指示を出す。
「とりあえず、転送装置の所まで行くぞ」




