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ヘキサゴントラベラーの変態  作者: 井田薫
シャルペス動乱編
336/391

合流、信頼

「ん、ありゃ……?」


 レプト達がカスミの家の中で作戦の進行を待っていた時だ。リビングでいつでも動けるように、且つ、外の様子を見ていたレフィの目に変化が映り込む。それは、こちらに迷わず向かってくる一台のトラックだ。それを目にしたレフィは咄嗟に椅子から立ち上がった。


「外から誰か来てるッ!」


 同室にいたレプトやリュウ、そして他の部屋で待機していた者達もレフィの大声を耳に留めると体に緊張の糸を張る。外部からの来訪者がカスミであれ、中央塔から放たれた敵であれ、作戦が動き始めた証だ。来訪を知るとすぐ、レプト達一行、そしてジアとフレイは家から飛び出してトラックを迎える。

 七人が全員玄関に立つと、外のトラックに乗っていた者達も降車していた。そこにいたのはカスミと、レプト達にとっては見覚えのないイル、ララ、そして簡抜の案内をしていた男。カスミはその三人を背にして進み出ると、手短に指示を伝える。


「戻ったわ。手筈通りにお願い。私と、レプト、リュウ、レフィ、フェイで中央塔に行く」


 カスミは自分達がシャルペスに訪れた時に乗っていた車を指し示し、それに乗ってすぐに行動を開始しようと示す。それと合わせて、メリーは策について一応の確認をとる。


「じゃ、私達も話の通りにでいいな。それと……カスミ、あの男は?」

「大丈夫、信用できるから」

「分かった。なら……こっちに来てくれ!」


 メリーは後ろで待機していたフレイとジアに目配せすると、目まぐるしく変わる話についていけていないイル達に対して指示を出していく。彼らは中央塔から逃れてきたトラックに戻り、メリー達も更にそこに乗り込んでいった。

 彼女達の動きを端眼に、カスミはレプト達に視線を戻す。その顔には、自分達の置かれていた事実を知った怒りと同時に、これから共に無茶をする仲間への信頼があった。


「悪いけど、私の無茶に付き合ってもらうわ。いい?」


 カスミの信頼に、レプト達は頷いて返す。当然だ、そう伝えたいのが一目で分かるほどの自信と、結束がそこにはあった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「このまま外周を走って様子を見る。中央塔に行ったカスミ達からの連絡があったら、その毛色次第で方針を変えるとしよう。逃げるか、制圧に加わるか」


 メリーはトラックを運転しながら、助手席に座るフレイに対して作戦の再共有を行っていた。家にいる段階で自分達の踏む段取りについてはある程度知っていたフレイだったが、メリーの言葉に少し眉を寄せる。


「しかし……」

「……なにか?」

「本当に、制圧なんて出来るのか。確かにカスミは強いし、他の者達も腕に覚えがあるように見える。だが……俺達が外の知識に疎いからかもしれないが、出来るものなのか」

「……まあ、普通だったら無理だと考えるところだ」

「なら娘は……!」


 娘であるカスミが死地に向かったかもしれないという状況に、フレイは声を荒げると同時に立ち上がりそうになった。だが、それを押さえつけるようにメリーが言葉をかぶせる。


「だが、ここは普通じゃない」

「……どういうことだ?」

「勝算は充分、九割を超すと言ってもいい。そもそも、分の悪い賭けに仲間の命を賭けるようなことはしない」

「詳しく説明してくれないか?」


 メリーの回りくどい話し方に若干の苛立ちを覚えているらしいフレイは、トントンと指で忙しなくドア枠を叩きながら問いかける。それに対してメリーは冷静に、街の環境、そしてこれまでに得てきた情報を総合しての考えを語った。


「私は昔、ここをつくった連中の一員だったことがある。エボルブという組織だ。方針の違いで抜け出すことになったが……私の権限で閲覧できる情報は粗方目を通してきた」

「……中央塔の制圧に関係あるのか?」

「重要なのはここからだ。……私が見てきた情報に、シャルペスという施設の情報はなかった。一目見た覚えすらなかったんだ」

「……?」


 シャルペス外の情報に疎いフレイは首を傾げたままだ。だが、メリーは自分自身に確認するように続ける。


「研究過程の情報を隠すくらいならよくあることだ。だが、施設ごと情報がまるっきり抜かれている、なんてことは普通じゃ有り得ない。だから最初、大掛かりな研究施設であることを知った時は、本当にエボルブの物かどうかを疑った。だが、確かにその証拠は見つかった。エボルブの施設でありながら、その情報が内部にも秘密裏にされている。つまり、この研究所は組織の認可を受けていない可能性が高い」

「どういうことだ?」

「ここの連中、とりわけ切り盛りをしていた張本人は、成果を独り占めするために隠れてコソコソせこい仕事をしてたってことだ」


 メリーは、ここからが自分達に関わる重要な所だ、と目を細める。


「思えば妙な話だ。エボルブほど軍の支援を潤沢に受けられる巨大組織なら、こんな回りくどい支配の仕方をする必要はない。住民に、そして職員の人間達にも情報統制して支配する形を取ったのは、組織から受けられる支援が限られているからだ。隠れてるんだから当然だな。そして……これは私達の作戦が上手く行くか、特に、敵の戦力に大きく関わる」

「……どう関わってくると?」

「敵も、外からの支援に頼れない状況だ。昨日、増援がどうのこうのと話したが……実際は来ない可能性すらある。敵からすれば外に助けを求めることは、これまで隠し通してきた研究を日の下に晒し、独占を不可能にすることになるんだからな。行動が制限されているのは、寧ろ敵方。それに、この中の戦力もたかが知れてる。……カスミ達はうまくやってくれるさ」


 メリーは話をまとめると、窓の外に見える中央塔の方を見る。たった今仲間達が向かった鉄火場を見つめ、それでもメリーの顔には不安そうなところはなかった。


(頼んだぞ)

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