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拷問姫シリーズ

どうしようもない関係を続けるしかない主従の話

作者: リィズ・ブランディシュカ



 その世界では、機械帝国と精霊大国。

 二つの大きな国が争っていた。


 数々の国を吸収し、まきこんでいったその戦は、膨大な血を流し、火の海をつくりだしていった。


 それに伴ってまた、多くの悲劇も生み出されていった。


 とある国の姫と、その騎士も、凄惨な戦いの犠牲者だった。






 騎士カインズ・シグマは、全身傷だらけだった。


 薄暗い地下室に監禁された彼は、騎士剣を振るっていた頃とはかけはなれた姿をしていた。


 英雄騎士とまで呼ばれた彼を、それほどまでに追い詰める存在はそう多くない。


 戦場で彼と渡りあった賢者や、殺戮王女。破壊侯爵など。


 けれど、その誰もが違う。


 カインズを監禁したのは、その騎士の主。


 一国の姫だった。


 戦によって大勢の身内と、友人。国までもなくした悲劇の姫。


 アーデルフェルト・ルゥ・アデナスだ。


 心を壊してしまった彼女は、正気を失い、狂気にのまれていた。。


 そして、誰かを傷つける事しかできない存在になってしまっていた。


 近づく者すべてを傷つける彼女は拷問姫と呼ばれる存在になっていた。


 騎士が姫になんとよびかけても、その心は正気にはけられない。


「アーデルフェルト様」

「カインズ、カインズ。貴方はとても丈夫だから、楽しいわ。ずっと私の傍にいてね」

「はい、アーデルフェルト様のお傍に」


 肉体は共に在る。

 けれど心は遙か彼方。


 言葉は交わせる。

 けれど、その意味は伝わらない。


 騎士が、傷ましそうにその名前を呼び、

 姫は、愛おしそうにその名前を呼ぶ。


 けれど、互いの目線はあわず、想いは絡み合わず。


 主と尽くす者は一心同体だ。

 主が死ねば尽くす者も、運命を共にする。


 それが当然だった。


 けれど、心だけ壊れてしまった主だとしたら?


「アーデルフェルト様がどんな風になられても、ずっとおそばにいますよ」

「ありがとう。ありがとう。カインズ。こんなに丈夫で嬉しいわ」


 騎士は死ぬことも、できない。


 彼ら二人は、そのままずっと共にどうしようもない沼地に放り込まれるだけだった。


 不幸と幸せに溺れながら。

 狂気と正気を抱きながら。


 欲望と忠誠心はまじることなく、破滅の道の上を歩いていく。



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