7.城内での日々
とある日、ミッシェル様との勉強会を終えて城内を歩いていると…先日中庭で話しかけてきた令嬢3人組がジークを囲んで話していた。
「ジーク様ぁ、うちの庭園の白薔薇が見ごろですの。ぜひ一緒に観賞したいのですけれどぉ」
「ジーク様ぁ、我が家のパティシエが新しくなりまして…とても腕が良いんですのよ。今度執務室にお持ちしたいですわぁ」
「ジーク様、お馬がお好きでいらしたでしょう。わたくし綺麗な白馬をお父様が用意してくださいましたの。ぜひ、ご一緒に遠乗りでもぉ」
三者三様さまざまなお誘いをしているが、3人とも語尾が抜けた甘ったるい話し方をしてジークとの距離を詰めている。ジークは「執務が忙しいので」と、完璧なる王子の微笑みで対応している。
「ミオっ!」
ふと視線を彷徨わせたジークと、通路を歩く私の視線が合うと
蕩ける様な笑顔で私の元に急ぎ足でかけてくる。
「どこに向かっているんだい?もうミッシェル様はお帰りに?」
「はい。今、ミッシェル様をお送りして…その帰りです」
視界の端の方で、凄い睨みの視線を感じるけど…
なるべくそちらに視線が行かない様にジークと話す。
「でわ、もう決まった予定はないかな?王宮の奥にある東屋が綺麗で、ミオも気に入ってくれると思うんだ。勉強も疲れただろう、お茶にしよう」
傍の侍従に指示を出し、差し出されたジークの手に自分の手を重ねる。
ジークは思い出した様に、振り向き令嬢に礼をするので私も会釈をして、その場を後にした。
***
「わぁ…素敵な場所ですね」
到着した王宮奥の小さな庭に、可愛らしい白い花に囲まれた東屋があった。
人の通りも少なく落ち着く感じの場所で、すっかり気にいって顔が綻ぶ。
「うん、きっと気にいってくれるんじゃないかなって思ったんだ」
へにゃりと顔が綻ぶ私を見つめ、ゆっくりと手を引くジーク。
東屋のソファでお茶を飲みながら、日々の私の話を聞いてくれる。
「何か不便な事とか気づいた事とかはないかい?」
「いえ…本当に皆さんに良くして頂いて…逆に申し訳ないと言うか…」
そう言いながら段々俯き考えてしまう。本当に私の周りの方々は良い方々ばかりで、侍女や使用人達まで…まだ異界の乙女としての力も分からない私を丁寧に身の回りの事をしてくれている。力が出現していない私を異界の乙女と公表する訳にもいかず、王家の客人との位置で対応してくれているのだ。しかし、私を異界の乙女と知っているのは王家と宰相様と教会上層部だけなので…貴族でもない私が王宮を客人としてウロウロしてるのを良しとしない貴族も少なからずいて…度々貴族の方や、その令嬢様達に絡まれているのだ。
「ミオ…焦らないで。言っただろう?今は知る時間なんだ。この世界や僕たちの事を知って、ミオの心が追い付く為の時間なんだよ」
膝で握り締めていた片方の手をそっと包んでくれた。焦らす事もなく、ゆっくり私の為に時間を使ってくれる事に私の中にあった怒りのしこりも、もうなくなっていて…その中で私の力が出て来ない事が申し訳なくて仕方なかった。
「ミオ、城下の街を見たくないかい?」
すっかり元気のなくなった私に、悪戯っ子の様な笑顔で問いかける。
「えっ!いいの?」
「私は視察があって一緒に行けないのは残念過ぎるのだけど、明日テオに連れて行ってもらうようにしてあるから。この国の姿も見てもらいたいし、買い物でもして気分転換しておいで」
この世界に来てから王宮内しか知らない私は、明日のお出かけが楽しみで気分が上がると共に…常に私の気持ちに寄り添ってくれるジークの気持ちに、心が温かくなるのだった。
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