32.最後の浄化
評価・ブクマありがとうございます!
全体の真ん中に居た私は、前方に現れるスライムを囲む為…先頭付近まで前に出た。外側を騎士達が、近くをジーク・テオ・アルンが守ってくれている。私の後方に火属性の魔術師達がいる。
私はしゃがみ込み、地面に手を触れ魔力を練って行く。目視出来るスライムの周りを囲むように土の壁を一気に盛り上げる。それを確認した魔術師達が、高火力の魔術を打ち込む。建てた壁からスライムの気配が消えた所から壁を崩していく。どうやら成功のようだった。
スライムの殲滅方法が確立出来た事で、騎士や魔術師達も歓声を上げていく。焦らずしっかり目視出来るスライムを囲っていく。
いつもより大きめの渦が出現し、スライムを警戒しながら浄化していく。この渦が浄化出来た頃には、日は暮れ薄暗くなっていた。この場で野営する事とし準備に取り掛かる。
もう森の最奥付近まで近づいているので、後1日か2日で浄化は完了するだろうと予想していた。そして今日は、土の魔術乱用と浄化で疲れ切っていた私は…一人テントで休ませてもらっていた。
「ミオ食事を持ってきたよ」
二つのトレイを持ち、身体を使って入口の布をかわして入ってきたジーク。美味しそうな匂いが漂ってきた。身体を起こし二人で食事をとる。肉の串焼きと簡易スープとパンを食べ終え、ジークがトレイをさげ…コップを持って戻ってきた。
ひょいっと抱えられ、膝の上に横抱き状態で座らされる。
「本当に、私の愛しい人は無理をする。とても助かったけど、心配で目が離せないよ」
「ごめんね?あれしか思い浮かばなくて…」
「謝らないで、あれより良い代案が出せない自分が不甲斐ないと思っただけだから」
言いながら、頭・こめかみ・頬などに口づけていく。恥ずかしくて身を捩れば、ぎゅうっと抱き締められた。
「きっと後1日、2日で浄化も終わると思う。でも私も油断せずにミオを守るから、ミオも十分に気を付けて欲しい」
黙って視線を合わせ頷く。
「あー、早く帰って結婚式上げたい」
そう言って、お互い笑いながらぎゅうぎゅう抱き締め合った。
***
次の日スライム討伐を再開し、次々にスライムを囲い殲滅していく。想像以上に大量のスライムに、通常の魔獣も合わさり…皆の疲労の色が見え始めた時、今まで見た事もない程大きな渦が現れた。
「こんな大きな渦、初めてみた…」誰かが呟く。
「巨大な渦だからこそ、この辺の魔獣の数が…他とは桁違いなのでしょうね」
アルン様が分析し呟く横をすり抜けて、ジークが傍までやってきた。
「ミオ、大丈夫?休憩をいれようか?」
「うぅん、みんな疲労してるもの。早くこの渦を浄化しないと」
心配そうに私を見つめるジークに、視線をしっかり合わせて微笑んで答える。
周りを警戒しながら、ギリギリまで渦に近づき…大きな深呼吸してから光の粒子を大きく広げ渦を包んでいく。そこから、光のベールを段々小さく圧縮していくが…想像以上に、渦の抵抗が強くて中々圧縮出来ない。それでも渦に負けない様に、少しづつでも小さく出来る様に力を込める。
少し圧縮し小さくなったと思えば、渦も抵抗し元の大きさに戻ろうとする。今までしてきた浄化と違い、手こずり時間のかかる様子を…辺りを警戒している騎士達や魔術師達も不安そうに見つめる。身体にも力が入り、額からは汗が滲んでいる。
それでも、自分の力の限り力を…気持ちを込めてゆく。5分…10分…と時間がかかり、時々横から現れた魔獣との戦闘になったりしている。なるべく周りを気にしないように渦だけに集中する。
徐々にだが、最初よりも小さくなってきている渦を…さらに圧縮するように力を入れるが、力を常時放出しているせいで身体がふらつく。
すっと視界にジークの姿が見えると、その腕でしっかり私の腰を支えてくれた。ジークが傍にいる、たったこれだけで私の心は回復していく。
最後の力を振り絞り、渦を圧縮していく。後少し…握り拳位まで小さくなった時、急に渦が暴れ出す。禍々しい渦が、ぐにゃぐにゃと形を変えて暴れている。消滅されるのを全力で抵抗するように。初めての事に動揺した瞬間、渦を包んでいた光に隙間が出来た。
その瞬間を渦は見逃さず鋭い矢の様に、形を変えて凄まじい勢いで飛び出す。渦を見つめていた私は、その渦の飛び出した方向がハッキリと分かった。
「――っ!!」
咄嗟に動いた身体は、ジークを庇う様に抱き締めていた。
渦の矢は、私の胸を貫くように刺さり消えた。ぐったり力の抜けていく身体、大きな声で呼ばれている様なのに…ジークやテオ・アルン様の呼ぶ声が遠い…視界もどんどん霞んでいく…。そして私が最後に見たのは、泣きそうな顔をした愛しいジークの顔だった。
お読み下さり、ありがとうございます!
感想・評価頂けたら励みになるので
どうぞ、よろしくお願いします。
場所は、最新部分の本文・後書きの下にあります。




