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光のベールに包まれて  作者: 瀬廣 真
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29.重なる心

評価・ブクマありがとうございます!

緊急転移でヨハンネルの城の戻った3人。しがみついて離れない私を、さっと横抱きで抱きかかえ部屋へと向かう。部屋に向かう途中マーサさんが私に気づいて泣いていた。部屋に入り、ジークは私を降ろそうとせず…横抱き状態のまま膝の上に座らせた。そこでやっとジークと視線が合う。ずっと、しがみついていたのが恥かしくなって俯いてしまう。


「ミオ…酷い事はされなかった?」


俯く私の頬を片手で包んで持ち上げられ、私はゆっくり首を振る。


「嫌な事もなかった?」


視線を合わせて伺うジークに、中々言葉が出ない代わりに涙が溢れる。


「助けるのが遅くなって、ごめんね…」


零れる涙をそのままに首を振る。


「逢いたかった…」


その言葉と共に、苦しい程に抱き締められる。会えなかった時間を埋める様に…しばらく抱き合ったまま、少し落ち着いてくると途端に恥ずかしくなる。




「そういえば、可愛い小鳥をありがとう。あの子のお陰で助かったよ」


ミルカンドで私が令嬢に連れ出されたと、知った3人はすぐに町に来てくれたらしい。そこで倒れた護衛を見つけ、私が攫われた事を知った。すぐに町を捜索し、リングやネックレスを追跡したが出来なかったらしい。遠く離れ過ぎると追跡は難しいのだそうだ。


私が攫われた事件は偶然ではなく、初めから計画されていたらしい。ミルカンド王の姪である、公爵令嬢ゾフィー様は恋仲であった貴族風の紳士に…是非とも『異界の乙女』にお目通りしたいから城から連れ出すように言われていたと、詳細は知らなかったのだと泣いて詫びたそうだ。


私を誘い出した後、騒ぎを起こし混乱した中…子供を使い人気のない場所に誘導した。子供はお金を渡されて、『あそこにいる黒髪の乙女様を裏に連れてくるように』そう言われたのだそうだ。それを聞いて、あの時の違和感が分かった。


「あぁ、違和感はそれだったのね」


「違和感?」


「私が乙女だって通達したって、小国ミルカンドの町の人々まで知ってる訳ないのに…あの時あの子供は迷わず『乙女様』って私に向かってきたの」


「なるほどね」


「でも、冷静に考えれば…変だと分かるのに…結局また迷惑をかけてしまって…」


しゅんと落ち込んだ私を抱き締めていた腕を緩めて、ジークが見つめる。


「迷惑なんて誰も思っていないし、あの時の護衛達は守れなかったと自己謹慎してる。私も生きた心地はしなかったし心配だったけど、こうして無事に戻ってきてくれただけでいいんだ」


徐々にジークが近づいて、額にジークの唇が落とされた。


「色々あったんだ、疲れただろう…あっ!足も治療しなきゃ!ごめん…先に治療しないとなのに嬉しすぎて失念してしまったよ。治癒師とマーサを寄越すから、ゆっくりしてて」


そういって、頬をひと撫でしてジークは部屋を後にした。



     ***



次の日、ジークに誘われ出掛けることになった。馬に相乗りで乗せられ、相変わらず密着したまま頬ずりや唇を落としてくるので落ち着かない。


到着したのは、以前攫われて連れて来られた…城裏の雑木林奥にある、綺麗な湖だった。


「少し待ってて」と大きめな木の根元の木陰にブランケットを広げ、荷物を降ろし戻ってきた。馬から降ろされて、地面に足が着く事なく横抱きにされて歩き出す。


「じっ、ジーク、歩けるよ?」


「だって、昨日裸足で走って…足の裏怪我してるでしょ?」


「ちょっとだけだし、歩けるよ」


「だーめ。すぐそこだから大人しくして、ね。」


ブランケットに降ろされて、ジークも横に座る。


「この辺は、余りいい記憶がないから…今度からこうして楽しい記憶で塗り替えて行きたいなって思って、今日はここにしたんだ」


ジークの細かな気持ちが嬉しくて「ありがとう」と微笑んだ。


「ミオが、この世界に召喚されてから色々あったよね。この世界を、国を、人を好きになって欲しかったのに…結局辛くて大変な事ばかりで、本当に申し訳ないと思う。ミオに害意を持つ令嬢も少なくないし、ネロールの様にミオを奪おうとする奴らもいる。過酷な浄化を押し付けるだけで何もしてあげられない自分に苛立ちもした。けど…それでも…私はミオに傍にいて欲しいんだ」


一旦話を区切り立ち上がったジークが、私の目の前に跪く。


「君の事を愛してるんだ。どうか、この先ずっと私と一生を共にして欲しい」


想像を超えた言葉に呆然としてしまう。まさか…そんな…ありえない。


「え…ゆ、夢?」


「夢にはさせないよ」と蕩けた微笑みで、私の左手を取り口づける。


「私…平民だし…「今では王族と同等の『異界の乙女』だよ」


「マナーも教養も…「これからゆっくり学べばいい」


「後ろ盾も何も…「今後は臣下に下るって、すでに王家の後ろ盾があるよ」


「私…消えない傷痕が…「その傷痕も愛しいと思うよ」


「本当に?…私で…いいの?…「ミオがいい。ミオしか欲しくないんだ」


私の否定的な言葉を、全て丁寧に答えていくジーク。溢れる涙が止められなくて、視界が歪んでいる。ジークは跪いたまま、手を伸ばし流れる涙を拭ってくれる。


ずっと頬を撫でて私の返事を待ってくれている。本当は伝えてはいけないと思っていたのに、それでも許されるなら…私は…私は…


「ジークが好き、大好きなの…」とつぶやく様に言葉にして視線を上げた。


すぐ近くに蕩ける笑顔を見せるジークがいた。

恥かしくて俯くと、そっとジークの手で顔を上げられ顔が近づく。

ゆっくり近づく距離、瞼を閉じれば…柔らかい愛しいぬくもりの唇がそっと触れた。


お読み下さり、ありがとうございます!

感想・評価頂けたら励みになるので

どうぞ、よろしくお願いします。

場所は、最新部分の本文・後書きの下にあります。


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